就業中に発生してしまう運転のトラブルを防ぐ方法

白バイのイメージ


飲酒運転やスピード違反など、従業員が業務中に運転をするなかで発生する恐れのあるトラブルには様々な事例があります。こうした違反や事故を防ぐには、会社でどのような取り組みを行うべきでしょうか。クオーレ労務経営代表で、行政書士の戸川一秋さんに、運転にまつわるトラブルを防ぐために企業ができる取り組みを伺いました。

 
 

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スピード違反や居眠り運転など、トラブルの内容は様々


――業務で車を使う場合に、発生してしまう恐れのあるトラブルにはどのようなものがありますか?
 
あらゆる業種で、従業員が車を運転する場面があると思いますが、スピード違反や飲酒運転、居眠り運転、駐車違反など起こりうるトラブルは様々です。
なかでも、駐車違反やスピード違反、スマートフォンを見ながら運転する「ながら運転」など、「少しくらいなら大丈夫」という運転者の意識の緩みから生じるトラブルが多いのも気になるところです。
 
今はSNSの発達により、いつでもどこでも多くの人の目にさらされているという状況です。もし交通違反や事故にまで至らなくても、業務中に危険なあおり運転やマナーの悪い運転をしてしまった場合、SNSを介して、その情報が拡散されてしまうケースも珍しくありません。社名の入った車を運転している場合には、相手に与える印象によって会社全体のイメージが悪くなることもあります。業務中はなおさら「常に誰かが見ている」という緊張感を持って、マナーを守った安全運転を心掛けることも求められます。
 
――近年、危険な運転行為に対する罰則が強化されていますが、その背景についてどう感じていますか?
 
2019年には、運転中にスマートフォンや携帯電話を使用したり、画面を注視したりした場合の罰則が、2020年にはあおり運転に関する罰則が強化されるなど、近年、危険運転に関してたびたび道路交通法が改正されています。
 
さらに2022年4月からは一定台数以上の車を使用する事業者は、運転者の酒気帯び確認をすることが義務化されました。その背景には酒気帯び運転による交通死亡事故など痛ましい事故がなくならない現実があります。これからもますます厳罰化が進み、企業が果たすべき責任も重くなっていくと私は考えています。

 
 

安全への取り組みが従業員との信頼関係をつくる


――社会における交通安全への意識が高まるなかで、企業側が運転に対する考え方や管理体制など変えるべきポイントはありますか?
 
社会的にコンプライアンスへの意識が高まっています。安全上の法令について、経営者は「知らなかった」では済まされません。たびたび法改正が行われているなか、忙しい経営者がこまめに情報を確認できないケースもあるかもしれませんが、法改正の状況を確実にキャッチして、常に最新の情報を知る努力を怠らないでください。
 
そして、それらの情報を従業員に向けてアウトプットして社内に浸透させましょう。このような働き掛けによって、安全に関する正しい知識が身に付くだけでなく、経営者が安全面に対してしっかり配慮していることが従業員に伝わるので、従業員との信頼関係を醸成することにもつながります。従業員を守ることは、会社を守ることです。それを経営者の皆さんが再認識することが肝要です。
 
社内の体制については、複数人でチーム体制をつくって安全強化の取り組みを進めるのが効果的だと考えます。車を一定台数使用する事業所には安全運転管理者がいて、安全運転に関する業務を担っています。近年は業務内容が増え、安全運転管理者一人だけではすべての仕事をカバーできないこともあるため、補助的な役割を担う人たちを決めてサポートするとよいでしょう。安全運転管理者の負担を軽減でき、きめ細やかなサポートができるので安全性が高まる効果も期待できるでしょう。
 
――企業内での安全運転に対する教育体制はどのように整えたらよいでしょうか?
 
まず大切なのは、定期的に安全運転に関する講習を行うことです。運送業界では、パソコンに接続して運転を練習できるドライブシステムなどを活用して安全運転のトレーニングを行う企業も多いです。最近は、安全運転に関するeラーニングの教材も豊富なので、これらを活用するのもよいでしょう。また、安全運転に関する講習を実施している保険会社もあるので、契約している会社に問い合わせてみましょう。
 
――従業員の交通安全に対する意識の向上も欠かせないですね。
 
車の運転には、その人の性格が表れやすい側面があります。なかには、「見つからなければ少しくらい交通違反しても大丈夫」と考える人もいますが、もし事故が起こった場合に、会社や同僚にどれだけの迷惑がかかるかを説明するなどして、意識を変革していくことも大切です。
 
また、これまでに事故を起こしたことがある従業員に対しては、直接、経営者が注意を促す機会も必要でしょう。こうした取り組みを積み重ねるなかで、運転に向かう従業員に対して「今日も安全運転でお願いします」などと、毎日出かける際に一声掛けるだけでも意識が変化するのでぜひ試してみてください。

 
 

安全に対するコストは「戦略的投資」と捉えて


――運転トラブルをなくすためには、予算の面でも人員の面でも負担が増えることになりますが、経営者はその点をどう受け止めればよいでしょうか?
 
安全運転に対する厳罰化が進むと、企業にとっては人件費や設備投資など様々な面で負担が増えるでしょう。しかし、もし事故が起こってしまった場合には、多額の損害賠償が必要になるだけでなく、会社の信用にも多大な損害を与えることになります。そうなれば、先々の利益や経営にも大きな影響があります。計り知れない損害が発生することを考えれば、安全性を高めるための費用は決して高いものではありません。「もったいない」と考えるのではなく「戦略的投資」と捉えて、運転トラブルを防ぐ体制を整えていきましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
 
<取材先>
クオーレ労務経営 代表 戸川一秋さん
社会保険労務士、行政書士、採用定着士。ひかり物流株式会社 代表取締役も兼任。クオーレ労務経営の代表コンサルタントとして、企業法務、労務管理、採用相談、就業規則の作成やリスク対策など、幅広く企業の人事労務、企業法務関係のサポートに取り組む。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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