内容証明郵便とは
「内容証明郵便」とは、郵便局が「宛先・差出人・差出日時・書面(通知・請求等)の内容」を証明してくれる郵便物のことです。
郵便局は差出人が作成した「謄本(内容文書を謄写した書面)」によって書面の内容を証明するため、内容証明郵便の原本(送付用)だけでなく、謄本2通(郵便局への提出用、差出人の控え用)が必要になります。
内容証明郵便の目的と効力、送付のタイミング
内容証明郵便を送付する目的はさまざまですが、企業においては主に3つあります。目的ごとに期待される効力と、送付のタイミングは次の通りです。
◆内容証明郵便の主な目的
1.紛争等の相手方に対して、主張内容を「正式な書面」という体裁で伝えるため
【例:退社した元従業員がSNSなどで自社を誹謗中傷しているので、ただちに誹謗中傷を止めさせたい】
効力……紛争等の相手方に対して、主張内容を明確に、かつ強いメッセージとして伝える効果がある
送付のタイミング……問題が生じた時点で適宜発送する
2.法律上または契約上必要な通知を、証拠が残る形で行うため
【例:無断欠勤が続く従業員を解雇する】
効力……後に裁判等に発展した際、通知を行った事実についての証拠として用いることができる
送付のタイミング……郵便到達時が基準時となるため(民法97条1項)、通知期限よりも前に到達するように発送する
3.消滅時効(※1)の完成を猶予するため(民法150条1項)
【例:支払いが滞っている取引先(債務者)に催告する】
効力……消滅時効の完成が6カ月間猶予され、その間に訴訟などの準備を整えることができる
送付のタイミング……郵便到達時が基準時となるため(民法97条1項)、消滅時効の完成時期よりも前に到達するように発送する
※1 一定期間の経過により権利が消滅する制度。貸金債権や損害賠償請求権などの各種債権に適用される。支払い請求が一定期間なされず、かつ支払いがない場合には、消滅時効が完成する。時効完成後は、債権者が時効の援用をすることで、債務が消滅する。
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便には、次の記載が必須です。また、所定の書式に従って作成しなければなりません。
◆内容証明郵便に必須な記載
- 表題
- 宛先(住所と氏名)
- 差出人(住所と企業名・代表者名)
- 差出日
- 通知・請求等の内容
◆内容証明郵便(謄本)の書式
縦書きの場合……1行20字以内、1枚26行以内
横書きの場合……1行20字以内、1枚26行以内/1行13字以内、1枚40行以内/1行26字以内、1枚20行以内
記号は1個を1字とする、文字に下線や傍点を施したものは全体で1字とするなど、文字数の計算方法は複雑です。また、訂正の仕方や書面が2枚以上にわたる場合などの記載方法も決まっているので、郵便局の公式サイトを参照してください。
内容証明郵便の出し方
準備ができたら、郵便局で発送の手続きをします。内容証明郵便は一般の郵便物とは異なり、ポストに投函することはできません。必ず郵便局の窓口で手続きを行ってください。内容証明郵便を受けつけている郵便局は限られているため、事前に確認しましょう。
◆郵便局に持って行くもの
- 内容証明郵便を3通(原本1通、謄本2通)
- 宛先と差出人の住所、氏名を明記した封筒を1枚
- 内容証明郵便の発送にかかる費用
内容証明郵便の発送にかかる費用
内容証明郵便の発送にかかる費用は以下の通りです。
基本料金(定形郵便25gまで:84円)
+ 一般書留の加算料金(傷害損害要償額が10万円まで:435円)
+ 内容証明の加算料金(440円:2枚目以降は260円ずつ増)
【例:定形郵便(25g)で、内容証明郵便が2枚の場合】
84円+435円+700円=1,219円
内容証明郵便だけでは、相手に届いたかどうかがわからないため、配達が完了した旨の連絡が届く「配達証明」サービスを利用するといいでしょう。配達証明を追加した場合、上記に320円が加算されます。
また、内容証明郵便の作成を弁護士に依頼する場合には、別途費用が発生します。依頼費は弁護士によって異なります。ちなみに、日弁連の旧報酬基準(2004年に廃止され、現在弁護士報酬は自由化)では、弁護士名を表示しない場合は1万円~3万円(いずれも税抜)、弁護士名を表示する場合は3万円~5万円が標準とされていました。
内容証明郵便の作成等を専門家に依頼するメリット
内容証明郵便は、企業の担当者など誰が作成しても問題はありません。ただし、次のケースでは専門家である弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
1.紛争等の相手方に対して内容証明郵便を発送する場合
揚げ足を取られることがないように、法的な観点から書面の内容を精査する必要があります。弁護士名で送付することで、相手方にプレッシャーを与える効果も期待できます。
2.消滅時効の完成猶予を目的として内容証明郵便を発送する場合
民法の規定に従い、確実に消滅時効の完成猶予の効果を生じさせるためにも、弁護士のリーガルチェックを受けるのが賢明です。また、消滅時効の猶予の効果は6カ月間限定であり、再度の猶予は認められません。すみやかに訴訟などを通じた請求の準備を進める必要があるため、内容証明郵便の作成段階から弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に内容証明郵便の作成を依頼すると費用はかかりますが、多大な費用と労力が必須となる裁判への発展防止や、確実な効果につながる面もあります。コストと安心のどちらを取るかを十分に検討のうえ、必要に応じて弁護士に相談しましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年4月時点のものです。
<取材先>
ゆら総合法律事務所 阿部由羅さん
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト
