懲戒処分には段階がある? 人事が抑えておくべき懲戒処分の種類と内容


時折ニュースで「懲戒処分」という言葉を耳にします。そもそも懲戒処分とはどんな処分のことなのでしょうか。懲戒処分の種類やそれぞれの定義、不祥事を起こした従業員に懲戒処分をくだす際の注意点などについて、湊総合法律事務所所長の湊信明さんに伺いました。

 
 

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懲戒処分とは?


「懲戒処分」とは、果たすべき義務を怠るなど、従業員が規律に違反した際に企業が制裁として行う不利益措置(懲罰)のことです。
 
懲戒処分の内容は法で定められていないため、企業ごとに基準を決定して問題ありません。ただし、懲戒処分をくだすには、労働契約法第7条、第15条、労働基準法第89条第9項により、処分事由と懲罰内容を就業規則に定め、従業員に周知させる必要があります。

 
 

懲戒処分の種類


懲戒処分には軽い懲罰から重い懲罰まで、7つの種類があります。懲罰内容と一般的な処分事由は以下の通りです。

 
 

◆戒告(かいこく)……文書や口頭によって厳重注意し、将来を戒める処分


指導の意味合いが強く、給与や昇給にはほぼ影響しません。実質的な不利益は課さない、もっとも軽い処分です。就業規則に定めていない企業もあります。
 
処分事由の例

  • 度重なる遅刻や無断欠勤
  • 業務上のミスにおける初めての懲戒処分

 
 

◆譴責(けんせき)……始末書を提出させて、将来を戒める処分


同様の違反行為を繰り返さないように、反省や謝罪を含んだ言葉で誓約させる処罰です。始末書を提出しなかった従業員に対しては、昇給や賞与において不利に査定する企業もあります。
 
処分事由の例

  • 合理的な理由のない業務命令違背
  • クライアントに暴言を吐きクレームに発展した場合

 
 

◆減給……支払うべき賃金の一部を差し引く処分


減給を行う場合、差引額に注意しましょう。労働基準法第91条において「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められています。
 
ちなみに、欠勤や遅刻をした場合に働いていない分の賃金を差し引く行為は、減給ではなく「欠勤控除」に該当します。減給はあくまで制裁として行う処分のことです。
 
処分事由の例

  • 戒告や譴責をくだしたにもかかわらず、無断欠勤や同様のミスを繰り返した場合

 
 

◆出勤停止……一定期間の出勤を禁止する処分


出勤を禁じると同時に、出勤停止期間の賃金は支払わないとする制裁です。法律上、停止期間の定めはありませんが、就業規則などで上限を決めているのが一般的です。
 
処分事由の例

  • 職場で暴力行為を行なった場合
  • 重要な業務命令を拒否した場合
  • 職務の放棄により会社に損害を与えた場合

 
 

◆降格……役職や職位、職能資格を引き下げる処分


降格すれば、役職給などの職務手当が下がる、もしくはなくなるなど、給与は下がります。元の役職に戻れるまで給与の減額は続くため、期間の定めのある出勤停止よりも経済的な打撃が大きい処分といえるでしょう。
 
処分事由の例

  • 管理職が社内の重要なルールに違反した場合
  • 部下に対するセクハラやパワハラ

 
 

◆諭旨(ゆし)解雇……一定期間内に退職願の提出を勧告し、提出があれば退職扱い、なければ懲戒解雇とする処分


一般的に諭旨解雇と懲戒解雇の処分事由に大差はありませんが、従業員にとって不利益となる懲戒解雇を回避するために、退職願を提出する機会を与えるか否かに違いがあります。反省が認められるなど情状酌量の余地がある場合、諭旨解雇を行います。
 
処分事由の例

  • 就業規則に定めた日数を超える無断欠勤(一般的には14日以上)
  • 強制わいせつに該当するような重大なセクハラ

 
 

◆懲戒解雇……一方的に労働者との労働契約を解約する処分


通常は解雇予告をせずに即時に実行します。就業規則に則り、退職金を支払わないことも多く、従業員にとっては再就職の障害となる極めて重い処罰です。
 
処分事由の例

  • 企業の採用判断に影響を与える経歴詐欺の発覚(大卒の有無や特定資格の保有有無など)
  • 業務上横領や背任行為をした場合

 
 

懲戒処分をくだすメリット・デメリット


懲戒処分をくだすメリットであり目的は、当事者に「問題行動のけじめをつけさせること」、それによって「社内の秩序を維持すること」にあります。
 
ただし、就業規則に則った処分であることが大前提です。とくにもっとも重い懲戒解雇には十分な検討が必要です。安易に懲戒解雇をくだせば、「不当解雇」として当該従業員から解雇無効や損害賠償請求の訴訟を起こされる可能性があります。在職者にも不信感を与え、結果的に秩序を乱し、混乱を招くことも考えられます。

 
 

懲戒処分をくだすまでの給与の扱い


給与に関わる懲戒処分をくだす場合、最終決定がなされるまでは、原則としてそれまで同様の給与を支払う必要があります。
 
労働基準法第20条に「労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と定められているからです。
 
ただし、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、その限りではない」とも定められており、これに該当する場合は解雇予告や解雇予告手当の支払いをする必要はありません。とはいえ、労働者側の帰責事由について、所轄労働基準監督署署長の認定を受ける必要があるので注意してください。

 
 

懲戒処分をくだす際の注意点


前述したように、懲戒処分をくだすには、就業規則に即しているかどうかが重要になります。就業規則に懲戒の種類と事由を定めていなければ、懲戒処分をくだすことはできません。明記していない場合は、どのようなときにどういった処分を行うのか、十分に検討し、わかりやすく整備しましょう。
 
すでに就業規則に明記しており、それに則って懲戒処分をくだしたとしても、相当性(罰則と事由のバランス)に問題があり、罰則が重すぎれば「不当」として訴えられるリスクがあります。
 
とはいえ、軽すぎる処分では「社内の秩序を維持する」という目的が果たせない可能性があります。懲戒処分を行うに当たっては、従業員の問題行為に対し、処分の内容が妥当であるかを慎重に判断する必要があります。
 
コンプライアンスが叫ばれている昨今、懲戒処分に関する内容が適切であるかどうか、改めて就業規則を見直してみることをおすすめします。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年5月時点のものです。
 
<取材先>
湊総合法律事務所 所長 湊信明さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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