リモート下でチームビルディングはどう行う?

オフィスで男女4人が円陣を組み、手を重ねているイメージ

リモートワークを導入する企業が増えている今、オンラインでできるチームビルディングへの需要が高まっています。「チームビルディング」とはそもそもどういったものなのか、またリモート下では、具体的にどのようなステップを踏むといいのでしょうか。一般社団法人日本チームビルディング協会代表理事・株式会社アクションラーニングソリューションズ代表取締役の齋藤秀樹さんにお聞きしました。

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チームビルディングとは?

近年、ビジネスシーンにおいて「チームビルディング」という言葉をよく耳にするようになりました。「チームビルディング」の定義は、企業や人によって様々ですが、次のように捉えることができます。

  1. 成長と成果を生み出す器(チーム)を作ること
  2. チームを成長させる土台となる関係性と場を作ること
  3. チーム成果の源泉となるエネルギー(本気度)とシナジー(相乗効果)を創ること

 

◆部下を疲弊させる「成果主義」

1で重要なのは「成長」と「成果」の両方を挙げていることです。どちらか一方が欠けるとチームビルディングは成り立ちません。
 
日本の企業では「成果」だけを追う上司が権力を振るい、部下を強引に動かすマネジメントが見られることも珍しくありません。しかし、このタイプのマネジメントは、結果を出すことはできても、同時に部下の疲弊やモチベーションの低下、メンタルの不調、離職などを生み出します。
 
「成果」以上に大切なのは「成長」であり、「チーム成果は、チームの成長の結果である」という考え方が重要です。チームを成長させないまま過大な目標を課し、目標を達成できない日々が続くと、メンバーは「失望感」「不安感」「無力感」などを抱き、チームは崩壊していきます。
 
永続的な「高いパフォーマンスが出せる」「高い競争力がある」といった企業側が望むものは、チーム成長の結果であることを理解しましょう。
 
良いチーム作りのためには、成果を上げるための戦略や方法論などの「Do(やり方)」よりも「モチベーション」「信頼」などの「Be(あり方)」を構築していくことが先決です。

◆「信頼関係」と「安全な場」が土台に

チームの成長を促すのに必要な土台が、2で挙げたメンバーの関係性と「安全な場」です。
 
関係性とは「信頼関係」のことを指します。相手に嫌われていない平穏な状況に身を置いているのを「信頼関係が築けている」と勘違いする人が多いですが、信頼関係は「何となくある」ものではありません。「相手に興味を持ち大切に思うこと」「相手が心から望むことを受け入れ支援すること」によって築かれていきます。
 
「安全な場」というのは「非難や否定をされずに本音を言い合える場」のことです。「安全の場が構築されていない」と感じるチームは、まずは「仲良しクラブ」を目指すといいでしょう。「お互いの弱みを見せ合える関係」は心理的距離を近づけ、本音で話しやすくなります。次第にチームとして前向きな踏み出すための「Be(あり方)」や「Do(やり方)」がメンバー全員から出てくるようになります。
 
この「信頼関係」と「安全な場」は、心理的安全性とも言いかえることができます。

◆全員が「自分ごと」で臨む

「2.チームを成長させる土台となる関係性と場を作ること」と「3.チーム成果の源泉となるエネルギー(本気度)とシナジー(相乗効果)を創ること」が整うと、各メンバーから問題解決のためのアイデアやイメージが生まれやすくなります。ディスカッションが有意義なものとなり、イノベーションや付加価値の高いアウトプットが生まれやすくなります。
 
チームビルディングは、全員参加が鉄則です。リーダーだけが頑張ったり、他のメンバーがリーダーに依存したりするのではなく、メンバー一人ひとりがチームの一員だと自覚を持って取り組むことが重要です。

オンラインでもできるチームビルディング導入のポイント

リモートワークが普及し、物理的に離れ(物理的距離が遠くなり)、チームビルディングが難しいと考える人は多いかもしれません。
 
もともと他人に興味のない集団(心理的距離が遠い集団)であっても、職場という物理的距離が近い場所で顔を合わせていたため、表面的にチームの体をなしていただけにすぎないチームも数多くあるでしょう。こうしたチームは、ひと度リモート下に置かれることで心理的距離の遠さが露呈したにすぎません。
 
リモートワークが普及する前から、上記で挙げた良いチームの土台作りができているチームは、物理的距離が離れても一体感を失わず、オンライン上でもチームワークを発揮することができます。
 
リモートであっても、良いチーム作りは可能です。オンラインを「言い訳」にせず、できることから始めてみましょう。

◆モニターに写った自分の顔を見てみよう

コミュニケーションが足りていなかったチームは、まずコミュニケーションの量を増やすことから始めることが大切です。
 
リモート下でも、できれば毎朝、難しければ決められた曜日の朝に、5分で良いので全員が顔を合わせる時間を作りましょう。仕事の話をしなくても、朝のあいさつ程度でかまいません。
 
オンラインミーティングにおいて、カメラをオフにして顔を出さずに参加する人も少なくありません。事情にもよりますが、チームメンバーとオンラインで顔を合わせるときは、カメラをオンにすることを推奨します。
 
そして、自分がどんな表情をしているかを観察しましょう。まるでお通夜のような暗い表情をしていませんか。普段の会議では自分の顔を見る機会はなかなかありませんが、リモート会議では自分が周囲からどんな表情に見えているかを客観視することができます。
 
表情に覇気がないと感じたら、口角を上げて笑顔を増やすことで他者にポジティブな存在として映るようになります。コミュニケーションは100%他者評価であり、明るい笑顔を心がけるだけで、相手からの印象も驚くほど変わっていきます。

◆発言の回数は均一になるように

会議では、リーダーが一方的に話していたり、毎回発言者が同じだったりとルーティーン化しているチームが多いのが現状です。
 
オンラインミーティングは、基本的に一人しか発言ができないため、一人ずつ順番で話してもらう状況を作り出しやすい環境にあります。
 
オンラインミーティングと合わせて、LINEなどのSNSを活用してチームで共有できるグループと、リーダーと各メンバーが2名でやりとりできるものを準備して、連絡を取り合うのも有効です。テキストのみでのやりとりをするだけでも、コミュニケーションの量を増やすことができます。

◆「ハートビーイング」でチームの雰囲気を明るく

良好なチームの人間関係を作るために有効な取組みが、チーム全員で行う「ハートビーイング」です。
 
まず、メンバー全員がそれぞれ「言われてうれしいこと」(例:あなたの笑顔いいね!、ありがとう)「使いたい前向きな言葉」(例:よし!やってみよう、私にできることがあれば何でも言って!)などポジティブな言葉を共有します。
 
次に、「言われたくない言葉」(例:どうしてできないの?)や「してほしくないこと」(例:舌打ち、無視)など、ネガティブな表現を書き出します。
 
それぞれが書き出した言葉をリーダーなどが一枚の紙やパワーポイントにまとめます。このとき、紙やデジタル上で中央にハートを描き、ハートの中にポジティブな言葉を、ハートの外にはネガティブな言葉を書き込み、その画像を全メンバーで共有します。
 
これでメンバーが考えるポジティブとネガティブな表現が「見える化」でき、メンバー各々が何を大事にしているかを知るきっかけとなります。
 
作成した画像は出力して部屋に貼ったり、オンラインミーティング時に背景として設定したりしましょう。そして、その一日はハートの内側にある言葉や態度を心がけるなど、ゲーム感覚で活用していくと、チームの雰囲気がどんどん明るくなっていきます。
 
「ハートビーイング」は、ハートの中の内容を他メンバーへの要望に書くワークとしても活用できます。「Aさんへ 困ったことがあったら相談してほしいです」などと書き、共有することで、メンバーが互いの望みを知り、心理的距離を縮めるのに役立ちます。
 
同僚が隣にいることが当たり前ではないからこそ、仲間に感謝し気遣うことが本当の信頼を育みます。このような工夫によって、リモート下でも積極的にコミュニケーションを取り、チームビルディングの土台作りを進めていきましょう。


※記事内で取り上げた法令は2021年3月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社アクションラーニングソリューションズ代表取締役/一般社団法人日本チームビルディング協会代表理事 齋藤秀樹さん
 
富士通勤務を経て、人材組織開発コンサルタントとして独立。ジョージワシントン大学大学院人材開発学部マイケルJ.マーコード教授より直接、アクションラーニングコーチ養成プログラムを受け、株式会社アクションラーニングソリューションズ設立、代表取締役に就任。中小から大手・外資系企業のコンサルティングで実証された組織開発の有効性を広めるために一般社団法人日本チームビルディング協会(JTBA)設立、代表理事に就任。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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