株式譲渡契約書の作成方法と注意点とは?

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企業のM&A(合併・買収)の手法の一つに「株式譲渡」があります。株式譲渡を成立させるために必須となるのが「株式譲渡契約書」です。その作成にあたっては、どのような点に留意するべきでしょうか。企業法務を専門的に取り扱う中島成総合法律事務所代表・中島成さんに伺いました。

 
 

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株式譲渡とは


企業のM&A(会社の合併・買収)には株式譲渡、事業譲渡、会社分割などの方法があります。なかでも株式譲渡は、株式売買の合意があれば成立する最もシンプルな手法のため、中小企業でも行いやすいメリットがあります。株式譲渡では利益を生み出す仕組み(得意先関係、事業内容)はそのままです。そのため、事業の箱(会社)の支配を完全に買い手が取得することで、事業が以後に生み出す利益は買い手の判断で使えるようにできます。
 
株式譲渡は原則として、株主総会や債権者保護手続などの複雑な手続を必要としません。税務上も、売手側に株式売買利益の20%が課されるだけです。

 
 

◆株式譲渡のリスク


株式譲渡は会社をいわば「箱」ごと買うため、その箱の中に簿外債務や粉飾決算があれば、それも含めて引き継ぐことになります。そのため、買い手には、デュー・デリジェンス(企業の経営・財務状況などを調査すること)による対象会社の適切な評価が求められます。

 
 

株式譲渡契約書を作成する前の確認ポイント


株式譲渡の契約においては、様々なトラブルが発生することもあります。そのため、事業を承継する際には「株式譲渡契約書」を作成し契約を交わします。。
 
ただし株式譲渡契約書を交わす前に、作成に進んでよいかを判断することも欠かせません。買い手側は対象会社が実態に基づいて適切に経営できているかを判断するために、次のポイントを慎重に確認・精査する必要があります。
 
・経営状況を判断するための要素

  • 主要株主
  • 簿外債務、粉飾決算等の貸借対照表の適正
  • 売上、経費などの損益計算書の適正
  • 得意先維持などの将来見込み
  • 繰越損失を含む税務内容、訴訟、労働紛争、許認可、公租公課滞納、商標・特許などの状況


たとえば会社の工場に土壌汚染などの環境問題の懸念はないかといったリスクを調査し、評価する必要があります。これらの調査・評価に失敗し、事後に損害賠償で何とかしようとしても容易ではありません。
 
そのようなトラブルが生じないように、買い手側は適切なアドバイザーの助言を得ながら、必要に応じて公認会計士、弁護士、税理士などを選任し、事後に悔いが生じないようデュー・デリジェンスを実施する必要があります。

 
 

株式譲渡契約書を作成する際の注意点


株式譲渡契約書で記載される事項は、大きく分類すると次の9項目になります。

 

  1. 譲渡の合意
  2. 譲渡価格
  3. 取引の実行
  4. 取引実行(クロージング)の前提条件
  5. 表明保証
  6. 誓約事項
  7. 保証
  8. 解除・終了
  9. 一般条項

 
 

◆譲渡価格の決まり方


株式譲渡契約において、売り手と買い手の最大の関心事は2の譲渡価格です。
 
中小企業の株式譲渡における価格は、ほとんどの場合、対象会社の「純資産+営業利益の●年分」で決まります。「純資産」とは会社の資産から負債を控除した金額で、この買収には最低限その価値があることを意味します。
 
そこに「営業利益の●年分」をプラスする理由は、その純資産はお金や土地だけではなく、得意先を持ち利益を生み出す資産でもあるため、その分の価値があるともいえるからです。
 
今現在、どんなに元気のよい会社やビジネスでも、10年後にどうなっているかは誰にもわかりません。ですから、「営業利益の●年分」の●に10のような大きな数字が入る場合は通常ほとんどないでしょう。
 
目安として、勢いのある会社であれば、5~7の数字が、倒産の危機に瀕しているが自分が買えば立て直せるという見込みがあれば1~2の数字が入ります。

 
 

◆表明保証の留意点


表明保証は、契約の前提となる事実に虚偽がないことを、当事者が他方当事者(相手方)に表明するものです。ただし、表明保証と事実が異なっていた場合でも、デュー・デリジェンスとの関係、違反内容の重要性、買主売主の不注意の程度などが勘案され、必ず違反に賠償(補償)責任を生じさせる条項ではない点に留意しましょう。補償されるべき金額もケース・バイ・ケースであるため明確ではありません。

 
 

◆誓約事項に盛り込む内容


誓約事項は、売り主が買い主に対して一定の行為を誓約するものです。「株式譲渡の実行前に会社の株主構成を変えない」「資産や負債の内容に重大な変更を生じさせない」「売買後も競業しない」などが入ります。

 
 

株式譲渡契約書に印紙は必要?


株式譲渡契約書は原則として課税文書に当たらないため、印紙貼付は不要です。しかし、株式譲渡契約書において、「本日、代金を受領した」などの文言を記載すると、課税文書である「受取書」として扱われるため、200円の印紙を貼付する必要が生じます。
 
経営者が株式を買い手側に譲渡する「株式譲渡」は、その他のM&A手法に比べて中小企業に適している手法といえます。ただし、契約に際しては入念な準備・検討・確認作業が必要になってくるため、適宜、専門家のサポートを受けて進めていくことを推奨します。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
 
<取材先>
中島成総合法律事務所 代表
中島成さん
東京大学法学部卒業。裁判官を経て1988年に弁護士に転身。企業再生・会社の民事再生、及び企業法務を専門的に取り扱う。著書に『令和元年改正法対応 知りたいことがすぐわかる 図解 会社法のしくみ』(日本実業出版社)など。
 
TEXT:阿部花恵
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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