自社にマッチする人材を具体化するには
面接時の質問を考える前に、自社にマッチするのはどのような人材なのかを具体化し、採用に関わるメンバーで共有する必要があります。
そのためには、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を作成するという方法があります。今回募集する職務の名称、業務内容、責任範囲、求めるスキル、必要な資格などを詳しく記載するものです。
ジョブ・ディスクリプションを作成する際のポイントは、以下の3点です。
◆現場の担当者が記入する
現場で業務を担当している人、もしくはそのポジションや部署を創設した人など、実情に詳しい人に記入を依頼することをおすすめします。その際、人事担当者はジョブ・ディスクリプションのフォーマット作成、記入のサポート、記入された内容のチェックなどを行います。
◆業務をイメージできるようにする
例えば営業の場合、業務内容は「自社の製品を販売する」のように大まかに書かれることも多いでしょう。しかしそれよりも、「お客様の抱えている課題を自社の製品で解決する」「他部署とも連携しお客様を成功に導くための支援をする」のように本質的かつ具体的に記載したほうが、最終的に採用する側にとっても、採否の判断の明確な指標となるはずです。また、明文化することで求職者が業務内容をイメージしやすいため、応募にもつながりやすいでしょう。
◆「must」と「want」を区別する
求めるスキルや資格については「must(最低限クリアすべき条件)」と「want(あると歓迎な条件)」を明確に区別して掲載しておきましょう。多くの求職者に会ううちに判断基準がぶれるのはよくあることですが、それを防げます。また、複数の面接官の目線合わせにも活用できます。
各段階における採用面接の質問例
次に、採用面接の各段階における質問のポイントおよび具体例を解説します。
◆一次面接
ジョブ・ディスクリプションに記載している「must」の条件をクリアしているかチェックするほか、質問と回答のやり取りを通して基本的なコミュニケーションスキルが備わっているかを確認しましょう。「これまでの上司からあなたはどのように評価されていましたか?」「一緒に仕事をするうえで苦手だと感じるのはどのようなタイプの人ですか?」といった質問を投げかけることで、どのような自己認識を持っているのか、整合性のあるコミュニケーションが取れる人なのかを探れます。
◆二次面接以降
ここでは仕事に対する姿勢や価値観を探る質問をします。コツは、本人の意見や主観ではなく「過去の経験」「事実」を聞き出すことです。たとえば「あなたには積極性がありますか?」ではなく「これまでに積極性を発揮して物事に取り組んだ経験をあげてもらえますか?」と尋ねてみてください。そうすることで、求職者の上辺ではない本来の仕事に対する姿勢や価値観を見て取れるでしょう。
◆最終面接
既に能力や経験については十分確認できているはずなので、ここでは会社の風土や実際に業務に関わる人との相性を見ていきます。「当社の行動指針は〇〇〇ですが、それに類する行動をしたことはありますか?」のように、会社が大切にしていることと本人の過去の行動の接点を探る質問をするほか「入社していただいたとして、最初の3カ月で何をやりたいですか?」といった入社後のイメージを問うとよいでしょう。
自社に合う人材を見抜く質問応用編
より的確に自社および募集職種にマッチする人材を見抜きたいならば、前職までの経験を詳しく尋ねることをおすすめします。仕事内容、職場環境、責任の範囲だけでなく、どのような場面でどのような行動を取り、どういった成果が出たのかといったエピソードまで話してもらうのです。そうすることで求職者の思考や行動の傾向の解像度が高まり、自社の業務内容やカルチャーと合うかどうかの判断がしやすくなります。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト