縁故採用に適しているのはどんな企業?
社内の人材を介して採用する縁故採用も、上手に取り入れれば組織の補強や経営強化につながる有力な手段になり得ます。では、縁故採用はどういった企業に向いているのでしょうか。
一例としてはまず、普段あまり人材採用を行わず、採用活動に不慣れな企業が挙げられるでしょう。採用に関する一連の業務には、求人メディアの活用やプロモーションなど、ある程度専門的なノウハウが必要です。まして採用の枠自体が少ないのであれば、社内の人間のコネクションから入社の可能性のある人材を探す手法が効率的なケースもあるでしょう。
また、一般的な採用フローを用いているにもかかわらず、採用計画があまりうまくいっていない企業においても、縁故採用は試してみる価値のある手法と言えます。従来とまったく違ったアプローチで人材を探してみることで、それまでとは異なる層にリーチできるかもしれません。
たとえば新規店舗のオープンを控えている企業など、定められた期日までに最低限集めなければならない人数が決まっているようなケースにおいても、コネクションに頼るのは効率的な手段です。
縁故採用を行う際の注意点
ただし、「採用の機会は公平であるべき」と考える人はやはり多いはずです。もし、入社試験が免除されて採用が決定するのであれば、既存の社員からネガティブな印象を持たれてしまうリスクも少なからずあるでしょう。せっかく新たな戦力を確保したにもかかわらず、社内のムードが悪化して生産性が低下するのであれば、本末転倒というものです。
そこで、新たにやって来る人材がどういう経緯と縁で採用されたのか、事前にオープンにしておくのもひとつの手です。縁故採用への異論を怖れて事情を伏せたとしても、確実に隠し通せる保証はありません。ならば、あらかじめ事情を明らかにしておくほうが、既存の社員の心証も良くなるのではないでしょうか。
なぜその人材が必要だったのか。どのような縁で会社とマッチングされたのか。縁故採用そのものは違法な行為ではないのですから、会社の意思をしっかり既存メンバーに伝えておくことも大切でしょう。
縁故採用者への適切なフォローとは
一方、縁故採用でやってきた新入社員に対しても、できるかぎりのケアとフォローが必要です。一般入社の社員に実施している説明会や研修を、縁故採用者にも等しく行い、エンゲージメントの向上に務めることは大切です。採用の経緯がどうであれ、組織の一員として、そして戦力としての成長を期待するのであればなおさらでしょう。
また、コネクションによって入社試験こそ免除しても、入社後の待遇がほかの一般社員と同様なのであれば、その点をあらかじめ伝達しておくことも大切です。就業規則に則り、既存の社員と同じ条件が適用されること、評価もほかの社員と同様の基準で行われることなど、必要に応じて明確に伝えておけば、その後、ほかの社員との切磋琢磨が期待できるのではないでしょうか。
重要なステークホルダーの血縁者を迎え入れた場合など、周囲が特別扱いをすることが、本人の慢心につながることもあり得ます。前述したような事前の周知による環境整備と、当人への意識付けは、縁故採用をうまく機能させるために必要不可欠なのです。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト