休職した社員に勧めたい「リワークプログラム」 復帰後に企業側ができること


メンタルヘルスの不調を抱えた社員が、休職と復職を繰り返してしまう。そんなサイクルを断ち切る有効な方法の一つが、復職前に医療機関で行う「リワークプログラム」です。リワークプログラムの内容や、休職を経た社員の職場復帰後に企業がするべき具体的なフォローについて、一般社団法人東京リワーク研究所所長で精神科医の五十嵐良雄先生に聞きました。

 
 

求人を掲載

お仕事をお探しの方は こちらから検索

ストレスに耐えられる状態を段階的に作る


――「リワークプログラム」はなぜ必要なのですか。
 
うつをはじめとする精神的な不調は、休職してもまた再発しやすいからです。メンタルヘルスに関わる病気では半数以上が再発を繰り返しているという調査結果もあります。
 
例えば足の骨を折って入院した場合、「骨折が治って今まで通り歩ける」という回復の目安があります。ところが、精神疾患の場合はこうした見極めが大変難しいのです。本人は休職可能な期間内での復帰を希望しますから、日常生活が問題なく送れるようになれば「もう大丈夫」と思ってしまいがちです。主治医は本人の職場や仕事内容の詳細を把握することが難しいため、実際にどれほどのストレスがかかるか厳密な予測はできません。
 
こうした背景から、再発を防ぐには復職前に職場と同じような環境で活動し、心身の回復度合いを知ることがとても有効です。企業担当者もリワークプログラムの知識を持ち、復職前にプログラムを受けることを休職者に勧めましょう。
 
――具体的には、どのようなプログラムなのでしょうか?
 
開始するタイミングは、休養や服薬治療を経て、ある程度症状が回復してからです。臨床心理士や精神保健福祉士などがスタッフとして関わります。プログラムの内容は施設により異なりますが、多くは3つの段階を踏んで復職を目指します。
 
【STEP 1】決まった時間でプログラムに通う
体調に合わせ週に2~3日から始めます。徐々に日数を増やして最終的には職場と同じ週5日で終日通えるようにし、集団生活にも慣れていきます。
 
簡単なことに感じられるかもしれませんが、生活リズムを整えることが実は最も重要です。自宅での療養中は気分や体調次第で活動したり休んだりしがちになるため、どのように過ごせば体調を崩しにくくなるかを把握し、自分の状態を客観視して、管理する必要があります。
 
【STEP 2】自分の認知を修正する
自分が抱えている病気はどんなものなのかを知り、症状や原因、服薬や睡眠・休養など体調管理の方法を学びます。同時に、自分の考え方や人とのコミュニケーションのパターンについて振り返る時間も設けます。自分がどんなことで無理をして苦しくなるのか、そうならないためにはどうすればいいのかを考えることで、職場復帰後に同じ事を繰り返さないすべを見つけます。
 
休職理由についてのレポートを出してもらう中で、自分が休職した原因として「仕事が多く、スケジュールもタイトで上司の理解もなく……」と他者のせいばかりにしてしまう内容を書く人もいます。もちろん休職には職場の環境など様々な要因があるはずですが、ここではその状況に対して自分がどんな向き合い方ができるか、自分も他人も気持ちよく仕事ができる方法はないかと、自らの行動によって変えられる課題に気付くことを目指します。
 
【STEP 3】集団での課題に取り組む
疑似職場のような環境を用意して決められた時間内に結論を出したり、意見が対立した時にどう振る舞うかを考えるような、ストレスのかかるグループディスカッションに参加したり、疑似職場のような環境を用意して、グループで課題に取り組んだりします。復職時に近い状況で、自己分析で考えた対処方法が使えるのか実践の場で試すことになります。
 
自己分析のプロセスを同じ病気を抱えた仲間と共に分かち合うことは、大きな力になります。「苦しいのは自分だけではない」と励まされることもありますし、自分の考えの偏りを客観的に指摘してもらう機会にもなるでしょう。

 
ミーティングをする男性3人と女性1人


――体調管理やストレスへの対処法を身につけた上で復職できるならば、再休職の不安はなくなりそうですね。
 
とはいえ、休職中のリワークプログラムで体験するのはあくまでも擬似的な職場です。実際に職場に戻ってみると想定していなかったことも起こります。
 
そのため、私たちは復職後のフォローアッププログラムも行っています。土曜や休日などを利用して月に1回程度は来所してもらい、悩みを聞き、必要なプログラムを受けてもらいます。ゴールは復職ではなく、再発せずに仕事が続けられるようになることですから。

 
 

復職後も主治医やリワーク施設と連携を


――復職後も相談できるのは、リワークプログラムのメリットの一つですね。企業側が復職した社員を社内でサポートしていく時に、大切なことは何でしょうか。
 
「復職前と同じ部署に戻していいのか」と聞かれることがありますが、休職の要因にその部署がどの程度関係しているかによります。基本的には、他部署に異動すれば必ず良くなるという保証はないため同じ部署でも構わないと考えますが、人事担当者は本人や上司と話し合って判断することが大切です。
 
リワークプログラムを受けた人であれば、自身の思いを前向きに伝えようとするはずです。会社としては思いを受け止めつつ、本人に求めることを率直に伝えて構わないと思います。メンタルヘルスの問題だからと過度に遠慮していては、互いに無理が生じてしまいます。
 
復職後は定期的に面談をして、休職前のような症状が出ていないか確認することをおすすめします。本人と直接話せない場合は、直属の上司から定期的に状況を報告してもらってはいかがでしょうか。もしもまた体調を崩してしまいそうな様子が見受けられたら、人事担当者が本人と一緒に主治医やリワークプログラムのスタッフに会って相談してみるのも有効です。
 
――社員と一緒に主治医に相談することもできるのですね。ほかにも社内で取り組むべきことはありますか。
 
正式な職場復帰決定の前に、試し出勤や短時間勤務の実施も有効です。導入にあたっては通勤途中の事故など労働災害発生時の対応など就業規則の改定が必要になる場合もあるので、すぐには難しいかもしれませんが、十分に検討する価値のある仕組みです。
 
また、厚生労働省が「メンタルヘルス対策における職場復帰支援 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をインターネットで公開しているのでぜひ参考にしてください
 
休職した本人だけ、あるいは会社だけで何とかしようと抱え込むよりも、リワーク施設や主治医、産業医と連携しながら社員を支え、働きやすい職場や制度を作っていくことが大切ですね。

 
 
 

<取材先>
一般社団法人東京リワーク研究所 所長 五十嵐良雄さん
精神科医・医学博士 。医療法人社団雄仁会理事長。北海道大学医学部卒業後、埼玉医科大助手、秩父中央病院長などを経て2003 年、メディカルケア虎ノ門開設。2008 年にうつ病リワーク研究会を組織し、精神疾患からの職場復帰に関連する研修会や調査研究、出版等を手がける。2019年には「一般社団法人東京リワーク研究所」として法人化し所長に就任している。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

 

準備はできましたか? 求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。