リスクマネジメントに企業で取り組む必要性やプロセスは?

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企業には、様々なリスクが潜んでいます。リスクに迅速に対応できる組織文化を形成するには、日ごろの準備や対策が重要です。そもそもリスクマネジメントとはどのようなもので、社員一人ひとりに浸透させるためには、何が必要なのでしょうか。中小企業診断士の朝比奈信弘さんに伺いました。

 
 

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リスクマネジメントとは


リスクマネジメントとは、経営を行う上で不利益になり得るリスクを事前、あるいは事後に適切に管理することで、問題が起きた際の損失を回避もしくは最小限に抑える経営管理手法を指します。

 
 

リスクマネジメントの必要性


リスクマネジメントの必要性が求められている背景には、業務が複雑になり、アウトソーシング化が進んでいることがあります。
 
リスクを完璧に管理することは不可能ですが、平常時からリスクマネジメントを行っている企業とそうでない企業では、非常事態が起きた際の回復スピードが異なるといわれています。

 
 

企業に起こり得るリスクの具体例

 
 

◆自然災害


地震や台風などの自然災害によって、従業員の命が脅かされたり、企業の経営が機能しなくなったりするリスクです。社屋や工場施設の耐震診断や補強、避難場所や非常時の連絡方法など、日頃からの対策が必要です。

 
 

◆製品の欠品


たとえば顧客が自動車メーカーなど、複数の企業で製造された部品を組み合わせて一つの製品をつくる企業だとします。何らかの事情で自社の設備が稼働できなくなってしまうと、製造が途中で止まり、顧客からの信頼を失ってしまうリスクがあります。
 
この場合のリスクマネジメントとしては、複数の工場や他社と連携して代替製品を用意できるようにしておくことなどが考えられます。

 
 

◆クレーム対応


顧客からのクレームが届いた際、従業員の一人が自分だけで対応しようとして周囲への報告が遅れ、その間に事態が深刻化してしまうケースが数多くみられます。
 
平常時から従業員間の信頼関係が築けていないと、ミスが発覚した際に評価が下がることを恐れ、隠そうとする傾向が強くなります。スムーズな連携のためには、平常時からの円滑なコミュニケーションが必要です。
 
このほかにも情報漏えいや安全配慮義務怠慢による事故など、企業に起こり得るリスクは数多く挙げられます。

 
 

リスクマネジメントのプロセス


1.リスクの洗い出し
社内で起こりうるリスクを思いつく限り挙げていきます。リスクマネジメントを行う部門のみではなく、できるだけ多くの従業員が参加することが、企業のリスクを「自分ごと」にするポイントです。
 
2.リスクの評価
挙げられたリスクを分析し、影響が大きいもの、発生の確率が高いであろうものなどを分類します。その際、企業にとって重大なリスクをカテゴリ分けして、順位付けしていきます。
 
3.リスク対策を考える
リスクごとに対策を考えます。リスクの種類によって、具体的にどのような対策ができるかを細かく話し合い、対応の順序なども決めておきます。
 
<リスクへの対策例>

  • 自社で決まりをつくって対策する
  • 外部機関に依頼する
  • 行政の補助金など、支援を活用する
  • 研修を行って対策する


4.リスク対策の実施
リスクが起こったときのために事前にできる対策を講じます。ミスをなくすために社内や工場の整理整頓を行う、安否確認用にSNSでグループをつくるなど、日頃からできる対策はたくさんあります。
 
<対策の実施例>

  • 社内での共有
    起こりうるリスクやその対策をまとめ、全社で共有する。
  • 事業継続計画(BCP)を活用する
    国が策定する、災害やシステム障害など危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意しておくための計画。研修を行ったり、認証を受けたりすることで、リスクマネジメントにつながる。
  • 事業継続力強化計画の認定を取得する
    中小企業が策定した防災や減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度。認定を受けた企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられる。
  • ISO規格の認証を取得する
    自社に合ったISO(国際標準化機構)規格の認証を取得し、リスクマネジメントに活用する。
  • 研修の実施
    リスクマネジメントについて学ぶ研修を定期的に行う。社内で行ったり、第三者機関に依頼したりして実施する。


5.定期的な見直し
リスクマネジメントを行った上で定期的に内容やサイクルを見直します。改善を重ねることで、迅速な対応ができるようになります。

 
 

リスクマネジメントで学んだことの活かし方

 
 

◆コミュニケーションの向上


リスクの洗い出しや研修を行うと、普段は接点がない従業員同士が会話を交わす機会になります。社内のコミュニケーションの質が向上し、風通しの良い職場環境になります。
 
また、通常業務外のフラットな会話から共通項が見つかり、上司と部下の間に信頼関係が生まれるケースもあります。こうした社風の醸成が、いざというときの報・連・相をスムーズにし、リスクマネジメントや、社内環境の改善に活かされます。

 
 

◆リスクマネジメントを武器にする


自社が日々どのようにリスクマネジメントへ取り組んでいるかを顧客にアピールしたり、自社の公式サイトや名刺に事業継続力強化計画やISO規格認証のロゴマークを入れたりすることで、企業の信頼価値を高めることができます。
 
リスクマネジメントにおいて一番大切なのは、社内での共通認識です。非常時に落ち着いて協力し合えるよう、日頃から、従業員同士の信頼関係の構築を意識しましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年1月時点のものです。
 
<取材先>
中小企業診断士 朝比奈信弘さん
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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