職場にいる喫煙者の臭いが気になる! 人事はどう対応する?

職場でタバコの臭いを気にする男性

「スメルハラスメント」という言葉が生まれるほど、職場の人たちのにおいは意外と気になるもの。同僚から「従業員のタバコの臭いが気になる」と苦情が出た場合、人事として対応できることはあるのでしょうか。うたしろFP社労士事務所の社会保険労務士、歌代将也さんに伺いました。

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従業員の個人的なにおいに人事が対応してもいいの?

企業は従業員が安全に働きやすいよう適切な職場環境を保つ「安全配慮義務」を担っています。しかし、個人のにおいを原因とした職場環境については、個人の主観によるところが大きいため、この義務に該当するかは微妙なところであると考えられています。
 
「スメルハラスメント」といわれるにおいの原因は、体臭や口臭、香水、喫煙者のタバコの臭いなど、様々です。
 
とはいえ、職場で従業員から、ほかの従業員の「におい」に対する訴えがあった場合、企業側としては働きやすい環境づくりを図るために、従業員の声に耳を傾け、問題に取り組む必要があるといえます。

◆喫煙者のタバコの臭いは対策がしやすい側面も

においの問題に関しては、体質に関係するケースもあることから、単純に不快であると指摘するのは人権侵害につながる恐れもあり、対応に悩む企業は多いでしょう。
 
そのため、においトラブルの対策や、該当する従業員への告知には細心の注意が必要です。
 
しかし喫煙者のタバコの臭いに関しては、当然ながら本人も「自分はタバコを吸っている」という認識があるため、体臭や口臭などよりも指摘しやすい側面があります。
 
2020年4月には、健康増進法の一部を改正する法律が全面施行されました。オフィスを含めた様々な施設において、喫煙のためには喫煙室の設置が必要となるなどのルール化がなされ、健康増進法における受動喫煙防止対策は義務となっています。
 
また、労働安全衛生法68条の2においては「事業者は、労働者の受動喫煙を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする」と努力義務を課しており、政府も受動喫煙防止対策を推進するため各種支援を行っています。
 
このような背景があるため、受動喫煙やタバコを消した後の残留物から有害物質を吸入する「三次喫煙」防止の観点からも、職場内で「喫煙者のタバコの臭いが気になる」という訴えが出た場合は、企業側も対応に乗り出す必要があるといえます。

 
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人事ができる対応策には何がある?

◆まずは社内全体に対策を周知する

従業員から「喫煙者のタバコの臭いが気になる」という訴えがあった場合、いきなり喫煙者である本人に告げるのではなく、まずは社内全体に「そういった声が上がっているので、喫煙者は周囲に配慮してください」という旨を知らせましょう。
 
次に、人事担当部署ができる具体的な対策として下記が挙げられます。

  • 換気を徹底する
  • 喫煙所やオフィス内に空気清浄機を設置する
  • 衣服にかけるタイプの消臭スプレーを部署やフロア単位で設置する
  • 喫煙所を設けている場合、廃止し全面禁煙にする
  • 廃止が難しい場合、喫煙時は喫煙所までエレベーターではなく階段を使うように呼びかけるなど、非喫煙者との動線を分けてタバコの臭いを感じにくい環境をつくる
  • 部署内での席を離すなど、物理的なスペースをとる


喫煙所を廃止した場合、オフィスの外まで喫煙に行く従業員が出てくる可能性があり、場合によっては、喫煙に対する細かなルールなどを会社の規則で定める必要もあるでしょう。

◆本人には人事担当者から告げる

社内全体で告知した後にも問題が解決しなかった場合は、人事担当者から喫煙者本人に、自身のタバコの臭いが問題になっていることを告げます。
 
その上で、喫煙後の消臭スプレーの使用や、マウスウォッシュの使用を促すなど、効果的な対策を提案しましょう。

 
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におい問題での対人トラブルを避けるために

◆相談窓口を設け周知しておく

職場でのにおいトラブルは、個人により感じ方が違うこともあり、非常に難しい問題です。
 
トラブルを訴えた従業員が喫煙者の従業員に感情的に直談判して、対人関係が悪化したり、職場の雰囲気が険悪になってしまったりと対人トラブルにつながるリスクがあるので、取り扱いには注意したいものです。
問題が起こってからの対策も必要ですが、日頃から社内に職場環境についての相談窓口を設けておくことをおすすめします。
 
大企業は2020年6月以降、ハラスメント相談窓口の設置が法律上の義務となり、中小企業についても、2022年4月以降は設置が義務化されます。ただ、形式的に相談窓口を設けても、どのような相談を受けられるのかが不明で利用しづらい従業員もいるため、しっかり周知と説明を行いましょう。
 
相談窓口があれば、被害者側が「悩んでいても誰にも相談できない」という事態は避けやすくなります。第三者が介入して苦情の出どころをわからないよう配慮することで、対人トラブルを防ぐ効果もあります。

◆社外に相談窓口を設置する企業も

ハラスメント相談窓口については、社内の人事部などのほか、法律事務所などに外部委託を行う企業も増えています。
 
社内の人には相談しづらいことでも、電話やメールで従業員が外部へ相談できるのがメリットです。
 
いずれにせよ、相談があった場合に適切な対応ができるよう、準備しておくことが重要です。
 
参考
職場の「受動喫煙防止対策」は事業者の努力義務です(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000207336.pdf
受動喫煙対策(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html


※記事内で取り上げた法令は2020年11月時点のものです。
 
<取材先>
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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