「バイリンガル人材」と言っても個人差が大きい
「バイリンガル人材」と言っても、個人によってバックグラウンドは異なります。幼少期から海外生活を送ってきた帰国子女もいる一方、日本で生まれ育ち、大学で交換留学に行った方もバイリンガル人材に該当します。バックグラウンドや経歴によって発揮できる能力も異なるため、どのような人材が欲しいかを企業側もあらかじめ明確にするべきです。現地で活躍する社員を求めるなら、海外経験の長い人材の方がマッチしやすいですし、国内のコミュニケーションも重要視するならば留学経験のある方が最適かもしれません。選考を行う前に、求める人材像をクリアにしておきましょう。
採用する際は、希望する仕事の進め方をヒアリングすること
グローバル人材が日本企業に転職した際、「会議の進め方が全く違って驚いた」と感じる場合があります。国によるコミュニケーションは、「孔子型」と「ソクラテス型」に分けられるのをご存知でしょうか。孔子型の場合、たとえば上司の説明に対して、部下はメモをとりながら指示に従って仕事を進めます。一方、ソクラテス型は、立場に関係なくフラットに意見を交わしながらアイデアをブラッシュアップしていきます。
日本企業はまさに孔子型のコミュニケーションスタイルを取るケースが多いです。そのため、議論することが当たり前だったソクラテス型の人材が日本企業に入社すると、自分の強みを発揮できないと感じ、とても退屈してしまいます。企業にとっても、マネジメントしにくいと感じるでしょう。もしも欧米圏をはじめとしたソクラテス型のコミュニケーションをとる人材を採用したいなら、社内のコミュニケーションスタイルや会議の進め方などを見直さなければなりません。たとえばミャンマー、ベトナム、マレーシアなど、孔子型の国をバックボーンに持つ人材ならば、従来のやり方でもスムーズにいきやすいでしょう。
選考の際は、仕事でどのような進め方を求めているのかをヒアリングしておくと安心です。
人事や面接官の教育体制も必須に
そもそもバイリンガル人材は「企業から選ばれる」のではなく、「自ら働き先を選んでいく」意識があります。選考では候補者側も企業をチェックしているため、面接官をはじめとした担当者の対応も非常に重要です。人事はもちろん、選考にかかわる社員もきちんとした対応ができるような教育体制を作りましょう。グローバル人材の採用にまつわるセミナーなどに参加して勉強するのも有効です。
バイリンガル人材の採用では、語学力にばかり注視してしまいがちです。もちろん、TOEICのスコアなども重要ですが、自社にマッチした人材を採ることが肝心です。特にコミュニケーションの違いからくる業務の取り組み方は、入社後に双方が不満を感じてしまうポイントになりかねません。選考の段階で不安要素はできる限り解消するようにしましょう。
<取材先>
株式会社カルチャリア 代表取締役社長/国際人事コンサルタント 奥山 由実子さん
最大手企業研修専門会社にて企画、営業、マネージメントを担当。1993年、同社駐在員としてニューヨークに赴任。同年、米国に人事コンサルティング会社(本社・ニューヨーク)を設立。以来、2500以上にのぼる在米日本企業、日本国内の企業に社員研修や人材育成のためのプロジェクトを提言。日本企業としての独自性を尊重しながら、世界標準の人事システムの導入を推進、経営の高度化と人的資源の解決と防止などに大きく貢献してきた。成功実例から培ったノウハウ、クライアント企業からの熱い信頼と支援のもと、日本でも人事改革を行う。
TEXT:成瀬瑛理子
EDITING:Indeed Japan + ノオト