小学校休業等対応助成金とは? 概要や申請方法

「小学校休業等対応助成金」の支給が再開されました。この助成金は、新型コロナウイルス感染症で臨時休業となった小学校等に通う子どもを養育する保護者が従業員にいる場合、従業員に対して有給休暇を取得させた事業主に支給されます。制度の再開や概要について特定社会保険労務士でキャリアコンサルタントの岡佳伸さんに解説していただきました。

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小学校休業等対応助成金とは

「小学校休業等対応助成金」とは、対象社員に有給休暇を取得させた事業主に助成金を支給する制度です。
 
対象社員とは、新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業となった小学校等に通う子どもを養育する保護者を指します。
 
2020年に実施・終了した制度でしたが、2021年9月30日から再開されました。

小学校休業等対応助成金が再開した背景

2020年の「小学校休業等対応助成金」の終了後は、「両立支援助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」が設けられました。
 
しかし、助成額は労働者一人につき5万円、一事業主につき10人まで(上限50万円)と金額が少なく、助成を受けるためには就業規則で休業についての規定をしなくてはならないなどの制約があることから、制度として十分に活用されませんでした。
 
このような背景から、小学校休業等助成金の再開が決まりました。再開に伴い、「両立支援助成金(育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例))」は終了します。なお、2021年7月31日までに労働者に付与した特別休暇は、今後も両立支援助成金として申請します。

小学校休業等対応助成金の支給要件

小学校休業等対応助成金は、次の1〜4の要件すべてに該当する事業主が対象です。
 
1.雇用する労働者の申し出により、2021年8月1日から同年12月31日までの間に以下のいずれかに該当する有給休暇を取得させた事業主

ア.新型コロナウイルス感染症への対応として、ガイドラインに基づき、臨時休業等をした小学校等(小学校、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所など)に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇


備考

  • 保護者の自主的な判断で休ませた場合は対象外。ただし、学校長が新型コロナウイルス感染症に関連して出席しなくてもいいと認めた場合は対象
  • 小学校等全体の休業のほかに、学年・学級単位の休業やオンライン授業、分散登校の場合も対象

イ.次のいずれかに該当し、小学校等を休む必要がある子ども(※1)の世話を保護者として行うための有給休暇


備考

  • 新型コロナウイルスに感染した子ども
  • 発熱などの風邪症状がある、濃厚接触者に該当するなど新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
  • 日常的に医療的ケアが必要な子ども、または新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクが高い基礎疾患などを有する子ども


※1 学校の場合は、学校長が出席を停止、または出席しなくてもいいと認めた場合
 
・対象となる保護者
親権者、未成年後見人、その他の者(里親、祖父母など)であり、現在子どもを監護する者が対象です。各事業主が有給休暇の対象とする場合は、子どもの世話を一時的に補助する親族も含まれます。
 
・対象となる有給の休暇の範囲
支給要件のアについては、夏休みなど小学校等が元々休みの日に取得した有給休暇は含まれません。
 
イの場合、小学校等が元々休みかどうかにかかわらず、上記の期間に取得した休暇がすべて含まれます。
 
2.この場合の有給休暇は、労働基準法第39条で定められた年次有給休暇とは別のものであること
年次有給休暇と区別するために、「小学校休業等対応休暇」など別の名前を付けて管理するのが一般的です。
 
3.年次有給休暇の場合と同額の賃金が支払われること
助成金の日額上限1万3,500円(申請対象期間において、緊急事態宣言の対象区域または、まん延防止等重点措置を実施すべき区域に事業所が一つでもある場合は1万5,000円)を超える場合であっても全額を支払わなくてはなりません。
 
4.1の有給休暇を取得した労働者が申請日時点において、1日以上は勤務していること

 

◆支給額

以下の方法で算出した合計額が支給されます。
 
対象労働者の日額換算賃金額(※2)×有給休暇の日数(※3)
 
※2 労働者の通常の賃金を日額換算したもの(日額上限1万3,500円、助成金の申請の対象期間中に緊急事態宣言の対象区域またはまん延防止等重点措置を実施すべき区域になった地域に事業所のある企業については1万5,000円)。「助成金の申請の対象期間」とは、申請のあった休暇日の最初の日から最後の日までの間を指す。
 
※3 対象労働者の合計有給休暇日数で、時間単位の休暇も含まれる。

 

◆申請期限

1.2021年8月1日〜2021年10月31日の休暇
2021年12月27日必着
 
2.2021年11月1日〜2021年12月31日の休暇
2022年2月28日必着
 
いずれの場合も消印が申請期限内であっても、都道府県労働局への到着日が申請期限を過ぎている場合は認められません。

事業主のメリット・デメリット

事業主のメリット・デメリットは以下の通りです。

 

◆事業主のメリット

  • 休んだ従業員に支払う賃金は国から事業主に支給される。そのため、企業側の金銭的負担を軽減できる(1日あたりの支給金額には上限があるが、従業員の休暇日数に関係なく支給される)
  • 保護者が休みを取りやすくなるため、従業員が離職するリスクを減らせる

 

◆事業主のデメリット

  • 手続きが煩雑
    労働者ごとに特別有給休暇を付与した日数や金額を把握する必要があります。

労働者へのメリット・デメリット

◆労働者のメリット

  • 何日休んでも賃金が支払われる
  • 年次有給休暇を使わずに休暇を取得できる

労働者の場合、デメリットはほとんどありません。

申請に必要なこと

助成金の申請に必要な書類や方法を確認します。

 

◆提出書類

申請には、以下のすべての書類が必要です。

  1. 支給申請書:様式第1号①
  2. 支給申請書:様式第1号②
  3. 有給休暇取得確認書:様式第2号
  4. 対象労働者ごとの休暇取得がわかる出勤簿、タイムカード、休暇簿のコピーなど
  5. 対象労働者ごとの雇用契約書、労働条件通知書、勤務シフト表、就業規則等(就業時間、休日部分)のコピー


1〜3の支給申請様式は、休暇の時期によって異なります。まとめて一枚で申請することはできないため、それぞれ作成して申請しましょう。
 
なお、上記に加え、さらに以下の書類が必要なケースがあります。

  • 雇用保険適用事業主以外
    労災保険に加入している証明として、労働保険関係成立届の事業主控、概算保険料申告書など
  • 小学校休業で休暇を付与する場合
    対象労働者の子にかかる小学校等からの臨時休業等のお知らせ(ない場合は様式第2号有給休暇取得確認書に臨時休業等期間を記入する)

 

◆申請書の提出方法

申請は事業所単位でなく法人ごとに行います。厚生労働省のサイトから申請書をダウンロードし、提出書類をすべてそろえたら本社所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(課)まで郵送しましょう。
 
このとき、配達記録が残る「特定記録郵便」や「レターパック」などで送ります。
 
小学校休業等対応助成金は、年次有給の有無にかかわらず利用できるなど、労働者が働きやすい環境を整えられる制度です。「雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、小学校休業等対応助成金・支援金コールセンター」も設けられているため、不明な点は確認しながら導入するといいでしょう。


※記事内で取り上げた法令は2021年10月時点のものです。
 
<取材先>
特定社会保険労務士 キャリアコンサルタント 岡佳伸さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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