退職金制度の種類を解説 導入するために決めておくべきこととは?

就活や転職時の企業選びのポイントにもなる「退職金制度」ですが、企業が新たに退職金制度を設ける場合、就業規則には何を記載すべきなのかでしょうか。
 
そもそも退職金制度にはどのような種類があり、どういったメリット・デメリットがあるのか。退職金制度について、ブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんに伺いました。

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退職金とは

「退職金」とは、労働者が企業を退職する際に支給する手当のことです。定年退職に限らず、企業ごとに規定した条件を満たしていれば、退職理由を問わずに支払われます。
 
退職金に関する法的規定はないので、退職金制度の導入は義務ではありません。導入の有無や支給条件は企業が独自に決定することができます。ただし、就業規則に規定したならば、それに則って支払う義務が生じます。

退職金制度の種類と原資確保の方法

退職金制度は、「退職一時金制度」と「退職年金制度」に大別されます。

 

・退職一時金制度

労働者の退職時に一括で退職金を支給する制度。

 

・退職年金制度

退職金を60歳以降に分割して定期的に支給する制度。受け取り方には「終身」と「有期(10年など)」の2種類がある。
 
さらに原資確保の方法(社内積立型・社外積立型)や運用方法などによって、いくつかの種類に分類されます。

 

◆退職一時金制度

・社内準備退職金(社内積立型)

企業が内部留保として退職金の原資を積み立てます。退職金制度の拠出・運用・管理・給付のすべての業務を企業が担います。たいていは一時金で支払うため、このタイプを「退職一時金制度」と定義づけている企業は少なくありません。

 

・中小企業退職金共済制度(社外積立型)

中小企業のみが加入できる公的退職金制度で、運用・管理・給付は中小企業退職金共済事業本部が代行します。掛金は事業主の全額負担ですが、条件によって国の助成が受けられます。原則的に一時金として支払われますが、場合によっては年金として分割することも可能です。

 

◆退職年金制度

・確定給付企業年金(社外積立型)

企業が厚生労働大臣の認可を受けて法人(企業年金基金)を設立する「基金型」と、労使合意の年金規約を企業が作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する「規約型」があります。基金型は企業年金基金が、規約型は企業が委託した生命保険会社や信託会社が、年金資産を運用・管理して年金給付までを担います。

 

・企業型確定拠出年金(社外積立型)

掛金は企業が負担し、運用は労働者自らが行う制度です。管理は企業が委託した銀行や生命保険会社が行います。給付額は運用次第で変化し、労働者が運用に失敗した場合に企業が補填する必要はありません。導入するには、労使合意の年金規約を企業が作成し、厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。

退職金制度を設けるメリット・デメリット

退職金制度の導入には、次のメリット・デメリットがあります。ただし、どの制度を導入するかによって変化します。

 

◆メリット

  • 採用活動で有効に働き、優秀な人材確保につながる可能性がある
  • 従業員の定着率アップにつながる可能性がある
  • 退職金には社会保険がかからない
  • 退職所得控除や公的年金等控除等の税制面の優遇措置がある

 

◆デメリット

  • 原資を準備する必要がある
  • 導入したら簡単に廃止できないため、業績によっては負担になる可能性がある

退職金制度を設ける際に就業規則に定めておくべき条件

退職金制度を導入する場合、就業規則に退職金に関する規定を設ける必要があります。法的規定はないため、基本的な条件は企業が独自に決定して問題ありません。ただし、導入する退職金制度によっては、退職金の減額の有無や支払い条件が決まっているものもあるので注意しましょう。
 
一般的に規定しておいたほうがいい項目は、以下の通りです。

  • 支給条件(自己都合・会社都合、傷病、役員就任、本人死亡 などケースごとの条件)
  • 支給対象(勤続○︎年以上など)
  • 支給額(退職金の計算方法など)
  • 積立方法
  • 支給方法
  • 支給時期
  • 減額や不支給条件(3年未満の退職者は不支給、懲戒解雇の場合は不支給など)

退職金制度の導入と廃止の注意点

退職金制度の導入は、基本的に企業の自由です。ただし、確定給付企業年金制度や確定拠出年金制度を導入する際には、厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合、もしくは厚生年金被保険者の過半数を代表する労働者の同意が必要になります。退職金制度は労働者にとってメリットのある福利厚生の一つなので、導入はそれほど難しいことではありません。
 
大変なのは退職金制度の廃止を実施する場合です。廃止には労働者全員の合意が必要です。また、厚生労働大臣が退職金制度を廃止する必要性や労働者の被る不利益の程度など「合理的な理由」と認めた場合は、労働者の合意なく廃止することが可能です。まずは誠意を持って労働者に説明し、合意を得られる努力をしましょう。
 
退職金制度を導入し、就業規則に定めてしまうと変更するのはかなり困難です。新たに退職金制度の導入を考えている企業は、慎重に比較検討し、継続できる制度を選ぶことが重要です。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年9月時点のものです。
 
<取材先>
ブレイン社会保険労務士法人 代表 北村庄吾さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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