試し出勤制度(リハビリ勤務制度)とは 労働としての扱いはどうなる?

話を聞きながら字を書く女性の写真

病気などで休職していた従業員が不安なく復職するために、「試し出勤制度」(リハビリ勤務制度)の検討・導入を行う企業があります。いったいどのような制度なのでしょうか。弁護士法人ALG&Associatesの執行役員兼企業法務事業部長である弁護士の家永勲さんに、導入にあたっての注意点などをお聞きしました。

 

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試し出勤制度(リハビリ勤務制度)とは?

試し出勤制度(リハビリ勤務制度)とは、休職者の復職をスムーズに進めることなどを目的に、労働者を試行的に勤務させる制度をいいます。
 
明確に定義されている言葉ではないため、「試し出勤制度」「リハビリ勤務制度」「リハビリ出勤制度」など、呼び名は複数あります。一般的に、復職前は「試し出勤」、復職後には「リハビリ勤務」という呼び方を使う会社が多いです。ここでは混同を避けるためその使い分けを行いますが、いずれも法定の制度ではなく、導入するか否か、どのような運用にするかは、会社が任意に決定できます。
 
これらの制度は「正式な復職“前”」か「正式な復職“後”」かで、内容や賃金、労災ついても大きく変わります。まずはこの違いを知ることが大切です。また、社内で制度を運用する際は、予めそれぞれの呼び名と定義を決めておきましょう。

 
 

「正式な復職“前”」の試し出勤制度

厚生労働省は、メンタルヘルス不調により休業した労働者に対する職場復帰を促進するため、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~」で復職を前提とした労働者への対応マニュアルを載せています。
 
この中で、復職を望む休職者に対する職場復帰支援の一環として、下記のような「試し出勤制度」を挙げています。

 

・模擬出勤

勤務時間と同様の時間帯に、メンタルクリニックや施設などで行われているリワークデイケアなどで、復職を支援するための模擬的な軽作業やグループワークなどのリワークプログラムに取り組む。そのほか、会社に直接行かず自宅から離れて過ごす練習として、図書館などで時間を過ごす選択肢もある。

 

・通勤訓練

自宅から職場近くまで移動し、職場付近で一定時間過ごしたあとに帰宅する。

 

・試し出勤

本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤し、座席などで過ごす。ただし業務は行わない。
 
メンタルやメンタルヘルスの異常を訴える多くの従業員は、通勤中に不調を感じることが増え、出勤できなくなるケースが多いといわれています。そのため復職に際して、通勤経路をたどることにより、また症状が再発してしまうことがあります。正式に復職する前に、復職しても問題ないかを判断する材料として、このような試し出勤を行います。
 
これらのすべてを行う必要はなく、該当する従業員の回復度によっては、いずれかの方法のみ行ったり、復職前の試し出勤は行わず、正式復職に進むという方法を取ったりしても問題はありません。
 
復職前の試し出勤は、たとえ会社にいたとしても業務を行わせない限りは、賃金は発生しません。

 
 

「正式な復職“後”」のリハビリ勤務制度

復職後のリハビリ勤務には、主に休職前の勤務時間より短い時間で働く時短勤務や、本人の体調を踏まえた部署異動を伴う勤務などがあります。
 
たとえば休職前の1日の労働時間が8時間だった場合、半分の4時間勤務から試し出勤を開始し、一定期間を経て順調であれば6時間、次は8時間というように段階的に勤務時間を戻していきます。
 
また、たとえば休職前は営業職だった従業員が、内勤の比較的作業の負担が軽い部署に異動し、一定期間を経て復調が認められたら、上司や先輩が同行し取引先を訪問するなどして、徐々に営業職に復帰していくという方法があります。
 
いずれにせよ、産業医や主治医と連携し、本人の希望や病状などを見ながら、勤務時間や業務内容を段階的に切り替えていくことが大切です。切り替え前には上司が本人と面接し、状態に合わせて復職のステップを踏んでいきます。

 
 

試し出勤制度(リハビリ勤務制度)の注意点

 

◆復職前か後かを曖昧にしない


復職前であれば賃金は発生せず、復職後であれば賃金が発生します。もしも復職前の試し勤務で会社に来ていた際に賃金を払ってしまうと、正式な復職とみなされ、従業員への傷病手当が減額されてしまうこともあるので注意しましょう。復職前の試し出勤を提案する際は、賃金が発生しない旨を従業員に伝え、後々トラブルにならないようにしましょう。

 
 

◆労災について説明する

復職前の試し勤務では賃金が発生しないことに加え、原則として、労災保険の補償対象になりません。試し出勤の途中で交通事故に遭ってしまった場合でも、通勤災害として認定されないため、あらかじめ従業員に説明をして、自身で保険に加入してもらうなどの対策をしましょう。なお、復職後の場合は、通常の従業員と同じく労災保険の対象になります。

 
 

◆再発の可能性について知識を持つ

うつ病などの精神疾患は、再発の可能性が考えられる疾病です。再発について会社側も従業員も知識を持ち、復職後に急激に負荷をかけすぎないよう、長い目で見て復帰できるように対応しましょう。

 
 

◆社内に周知して復職しやすい環境をつくる

試し出勤をしていると、事情を知らないほかの従業員からの理解が得られず本人がいづらくなってしまうことがあります。社内に試し出勤制度があることや、その内容などを全社に周知して、復職者がスムーズに復帰できるように配慮しましょう。

 
 

復職・退職について

 

◆復職前の試し出勤をしている場合

復職前の試し出勤は、そもそも正式に復職できる段階か判断するために行うものです。そのため、職場に来て帰るという行為がままならない状況では、正式な復職の段階に達していないと判断できるでしょう。その上で、さらに休職をするのか、あるいは退職するのかは本人の意思も重要でしょう。また、休職期間の満了までに復職できる状態でなかった場合は、会社としては従業員に退職してもらうことも選択肢に入ってきます。

 

◆復職後のリハビリ勤務をしている場合

正式な復職後に、また症状が出て出勤が難しくなった場合は、現況よりさらに勤務時間を短くしたり、業務内容を変えたりするなど、本人と相談しながら対策を考えます。病状によっては、再び休職になることもあり得ます。休職制度を設けている会社で、休職期間が満了していない場合は、会社側から退職させることはできません。本人との面談などを重ねて状況を聞きながら、復帰への道筋を示していくことが大切です。

 

 

※記事内で取り上げた法令は2021年7月時点のものです。
 
<取材先>
弁護士 家永 勲さん
東京弁護士会所属、弁護士法人ALG&Associates 執行役員 企業法務事業部長。
多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事し、企業経営に付随して生じる様々な法的な課題の解決にも尽力している。近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」(労働調査会)がある他、労政時報、労務事情等へ多数の論稿がある。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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