復職者に対する賃金減額などの処遇の変更と注意点

俯いているスタッフに声をかける男女のスタッフ


うつ病や傷病などの休職を経て復職する労働者に対して、以前とは別のポジションに配置したり、賃金を減額したりするなど、処遇の変更は可能なのでしょうか。また、労働者の復職に対して注意すべき点などについて、三浦法律事務所パートナー弁護士の大村剛史さんに伺いました。

 
 

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復職とは


「復職」とは、一般的に休職していた労働者が傷病などから回復して就労可能になり、職場に復帰することをいいます。ただし、法的な定義があるわけではありません。
 
ちなみに休職とは、労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた労働者に対して、企業が労働契約関係そのものを維持しつつ、労務への従事を免除すること、または禁止することです。

 
 

復職する労働者の配置換えの可否


職種・業務を特定していない労働者に対しては、通常の配置転換と同様の扱いで(権利濫用とならない限度で)、配置換えをしても特段問題ありません。
 
一方、職種・業務を特定した上で雇用している労働者の復職に対しては、そもそも配置換えが想定されていないため、休業前の業務への復帰が原則になります。

 
 

復職する労働者の賃金減額は原則禁止


傷病などを理由に休職していた労働者の復職の可否については、過去の判例により「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した」かどうかで判断されます(浦和地判昭和40年12月16日)。
 
健康状態が回復し、従前の職務に戻る以上、処遇面でのレベルダウンの理由はないため、原則として賃金の減額は認められません。労働者が従前の業務に復職したにもかかわらず企業が賃金の減額をした場合、労働条件の不利益変更(労働契約法第9条)に該当するので注意してください。
 
ちなみに、治癒が完全ではない状況で、従前の業務とは異なる軽易作業に従事する「リハビリ出社」「リハビリ勤務」から、完全復職を目指す制度を設けている企業もあります。その場合、制度の中で、それに応じた賃金設定をしていれば、結果として一時的な減額になるケースがあります。完全復職ではない段階なので、本人の同意のもとに行われる限りは有効です。ただし、完全に復職した際には、もとの労働条件での雇用が前提となります。

 
 

労働者を復職させる際の注意点


復職における最大の注意点は、労働者が「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した」かどうかをしっかりと見極めることです。就業可能な状況まで傷病が治癒していない段階で復職させることは、再度休職につながる可能性があり、企業にとってはマイナスでしかありません。
 
休職期間が満了すれば、解雇あるいは自然退職になるのが一般的です。そのため、休職期間満了が近づくと、解雇されたくない労働者は完治していなくても主治医から復職可の診断書をもらってくることも考えられます。
 
復職させる際には、産業医や企業の指定する専門医の判断を併せて義務づけておくことが重要です。その結果も踏まえながら、復職の可否を検討しましょう。
 
ただし、過去の判例により、労働者の復職の可否について、企業に配慮が必要なケースがあります(片山組事件 最判平成10年4月9日)。
 
仮に復職する労働者が従前業務を行えるまでの治癒に至っていなくても、能力・経験・地位・企業における労働者の配置や異動の実情などに照らし合わせた上で就業可能な業務がある場合、復職を認める必要があるということです。この点については、留意しておきましょう。
 
企業の方針として、今後、積極的に復職を推進していくのであれば、再度休職などのトラブルを回避するためにも、前述したリハビリ勤務、リハビリ出社といった制度を構築することが望ましいといえます。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年7月時点のものです。
 
<取材先>
三浦法律事務所 パートナー弁護士 大村剛史さん
東京大学法学部を卒業後、いくつかの弁護士事務所を経て、三浦法律事務所に入所。得意分野は「人事労務」、「訴訟・紛争」など。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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