法定福利費とは? 福利厚生費との違いや計算方法を解説

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法定福利費は、企業が福利厚生のために支払う費用のうち、法律で義務づけられているものを指します。具体的にどのような項目が含まれているのか、また福利厚生費との違いや計算方法について、うたしろFP社労士事務所の歌代将也さんにお聞きしました。

 
 

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法定福利費とは


法定福利費とは、法律で義務付けられている「企業が福利厚生のために支払う費用」のことで、具体的には社会保険・労働保険の保険料です。企業の負担率はそれぞれ計算方法が定められており、どの企業も必ず負担しなければなりません。企業が負担した法定福利費は、経費として計上することができます。法定福利費として、主に下記のものが該当します。

 
 

健康保険料


労働者やその扶養家族に業務外の疾病、負傷などが発生したときに適用される保険。原則、労使折半で支払う。

 
 

厚生年金保険料


企業に勤務する70歳未満の会社員や公務員が加入する公的年金制度。被保険者は将来、基礎年金と厚生年金を受け取れる。労使折半で支払う。

 
 

◆介護保険料


加齢により発生する心身の変化により支援者・要介護者となった人に対して介護費用を一部給付する制度。40歳以上になると被保険者となり介護保険料が発生する。原則、労使折半で支払う。

 
 

雇用保険料


労働者が失業したり雇用継続が困難になったりした際、求職者給付(失業保険)や再就職手当を支給する保険。企業と従業員の両方が支払うが、折半ではなく、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業と、業種により負担割合が変化する。

 
 

労災保険料


業務上の災害や通勤が原因で負傷などをした場合、補償のために給付する保険。企業が100%負担する。

 
 

◆子ども・子育て拠出金


国や地方自治体が実施する子育て支援サービスのために、事業者から徴収するもの。直接従業員に支給されるものではない。企業が100%負担する。

 
 

福利厚生費との違い


法定福利費は福利厚生費の一部ですが、福利厚生費は「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けられます。「法定外福利費」は「福利厚生費」と呼ばれており、勘定科目でも「福利厚生費」として仕訳されます。
 
福利厚生費は事業者の福利厚生制度に関係する費用のことで、下記が挙げられます。法定福利費とは異なり、福利厚生費に該当する福利厚生の内容や、金額をどの程度負担するかは企業が自由に決められます。

 
 

◆慶弔見舞金


従業員への結婚祝金、出産祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、傷病見舞金など

 
 

住宅手当(社宅の賃料など)


従業員が住む社宅や賃貸の家賃補助

 
 

◆保養所


レジャー施設や保養所、レストランなどの利用費の補助

 
 

◆慰安旅行


4泊5日以内かつ全社員の半数以上が参加する旅行の支出は、税務上損金として認められる

 
 

◆新年会、忘年会、親睦会など


企業が主催する新年会、忘年会、親睦会、歓送迎会などにかかる支出

 
 

法定福利費の計算方法


それぞれの法定福利費に該当する計算式は下記のとおりです(いずれも2022年4月時点)。

 
 

◆健康保険料


標準報酬月額(標準賞与額)×保険料率(※)
※例:東京都の協会けんぽに加入している場合は4.905%

 
 

◆厚生年金保険料


標準報酬月額(標準賞与額)×9.15%

 
 

◆介護保険料


標準報酬月額(標準賞与額)×0.82%(協会けんぽ加入の場合)
※健康保険組合加入の場合は組合ごとに異なる

 
 

◆雇用保険料


標準報酬月額(標準賞与額)×0.65%(※)
※2022年10月からは「×0.85%」に変更

 
 

◆労災保険料


賃金総額×労災保険料率
※労災保険料率は、業種や企業により異なる

 
 

◆子ども・子育て拠出金


標準報酬月額(標準賞与額)×0.36%

 
 

法定福利費の仕訳について


法定福利費を仕訳する方法は主に2つあります。法定福利費の種類によって仕訳の計算方法や回数などが違うため、ここでは健康保険料を例に解説します。

 
 

◆原則的な仕訳


(1)本人負担分は、毎月の給与を支給する際に天引きします。
(2)天引きした健康保険料などの法定福利費は「預り金」として仕訳をします。従業員から預り金として仕訳している健康保険料は、翌月以降の支払いとなるため、月末に会社負担分を「未払金」として仕訳計上しておきます。
(3)翌月の支払い時には、従業員からの預り金と、月末に計上した未払金を使って計上します。

 
 

◆簡便的な仕訳


(1)給与支給時、健康保険料の本人負担分を「預り金」ではなく、「法定福利費」として仕訳します。そのため、法定福利費を一時的にマイナスとして計上することになります。
(2)月末仕訳は発生せず、実際に健康保険料を支払った時点で法定福利費を計上します。
 
簡便的な仕訳方法を用いた場合、法定福利費が発生した段階での計上がされていないため、決算の際に調整が必要となるケースがあります。また、月末が休日などで保険料支払いが翌月に持ち越されると、法定福利費の計上が遅れるので注意が必要です。

 
 

法定福利費で注意したいこと

 
 

◆手続きは正確に


従業員が入退社したり、労働時間に変更が生じたりした場合は、加入要件に合わせて年金事務所やハローワークに加入または資格喪失の手続きを行いましょう。

 
 

◆法定福利費を込みで予算を考える


法定福利費の支払いにより、従業員一人につき、賃金に加えて14~15%程度の金額負担が増えます。従業員の増員を考える場合などは、法定福利費も加味して検討しましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年4月時点のものです。
 
<取材先>
うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也さん
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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