適切なシフト作成とは? 売上アップにつながる課題の見直しと成功のカギ

シフト作成をしている様子

「シフト作成」は、アルバイトやパートスタッフが多く在籍する交代勤務制の店舗などにおいて、欠かせない業務の一つです。適切なシフト作成ができないと業務において様々な混乱をもたらします。適切なシフト作成のポイントや成功のカギなどについて、働きかた研究所・代表取締役の平田未緒さんに伺いました。

求人を掲載

シフトを作成する目的

シフト作成とは、「誰に」「どの日に」「どの時間帯で」業務に従事してもらうか、人員配置を決めることです。これにより、業務がスムーズかつ効率的に行えるようにすることが目的です。
 
営業時間が長く定休日がない、あるいは定休日が少ない職場では、曜日や時間帯による繁閑の差が大きいことが多いため、シフト作成なくしては事業そのものが成り立ちません。コンビニ、スーパー、百貨店、ドラッグストア、アパレル、飲食店などは、その代表といえるでしょう。

 

シフト作成による「人件費の適正化」と「売上の向上」

シフト作成を適切に行うことは、「人件費の適正化」につながります。暇な時間帯に従業員を必要以上に配置することがなくなり、無駄な人件費を抑えられるからです。
 
一方、繁忙時に適切に配置できれば、接客やレジでお客さまを待たせたり、品出しが不十分になったりすることを減らせます。これが、販売の機会損失を防ぎ、「売上の向上」にもつながるのです。
 
たとえば、定食屋さんならランチのピークである12時台、百貨店の化粧品売り場なら休日や平日の夕方以降にお客さまが増えるので、これに合わせたシフトを組む必要があります。
 
スーパーの惣菜売り場の場合、販売のピークはランチタイムと、夕方から夜にかけてです。しかし、調理やパック詰めの作業は、その前の時間帯である午前中と夕方前に行うため、バックヤードではそれに合わせて人員配置をします。

 

シフト作成者を悩ませる2つの課題

上手なシフト作成によって得られるメリットは大きいものの、実際にはシフト作成に頭を悩ませる担当者は少なくありません。とくに大変なのが、以下の2点です。

 

1.その日・その時間帯に「必要な人材と人数」をそろえる

その日・その時間帯に実施する「業務ができる人」を、「必要な人数」そろえるのはなかなか難しいことです。たとえば飲食店の場合、フロアを担当できる人がどれだけいても、キッチンで調理ができる人がいなければ営業はできません。これがシフト配置のパズル化を生み出し、シフト作成者の頭を悩ませることになります。人が定着せず入れ替わりが激しい職場では、常に「仕事が十分にできない」新人を抱えることになり、任せられる仕事の内容や量が、先輩やベテランとは異ってきます。

 

2.「雇用側のニーズ」と「労働側のニーズ」のミスマッチを合致させる

「雇用側のニーズ」と「労働側のニーズ」がそもそも合致しないことによるミスマッチも、シフト作成における課題といえるでしょう。夕方以降が忙しくなる職場なのに「17時以降の勤務はできない」、繁忙期だけど「その期間は柔軟に働けない」など、労働者側のニーズが雇用側と合わないと、シフト作成は難航します。
 
シフト作成は、こうしたなかで行いますが、これら2つの課題を解消するには、シフト作成とは異なる工夫も必要です。今回のテーマから外れるため詳述はしませんが、たとえば新人の育成方法や、欲しい人材像の明確化、およびそのための募集広告の工夫なども必要になってきます。

 

適切なシフト作りの流れとポイント

シフトの作成は、以下の流れで行います。

 

1.作業計画

業務内容の洗い出しと、日別・時間帯別の実施計画を立てます。そのうえで、いつ、何名の人員が必要かを検討します。土日など日頃から来店客が多い日はもちろん、特別なセールがある場合などもスタッフを多く配置します。その際、客数が増える時間帯だけでなく、その前後の品出しや下ごしらえ、後片付けなどの作業についても作業計画に盛り込み、人員を確保しなければなりません。

 

2.スタッフの希望の確認

スタッフの希望を反映したシフトにする場合、事前に大まかな勤務希望を聞いておきましょう。そうすることで、効率的にシフトを作成できます。

 

3.シフト表の作成と調整

1に基づき、2と照らし合わせながら、「誰に」「どの日に」「どの時間帯で」勤務してもらうかを具体的に割り当てていきます。その際、まだ仕事を覚えていない新人は、仕事を教えられる先輩やベテランと組ませるなど、能力面での調整も必要になります。必要な時間帯に必要な人員を配置できない場合、つまり「シフトが埋まらない」場合には、もともと希望していない人に勤務を依頼しなくてはなりません。この作業においては、以下の点に留意しましょう。

 

(1)不公平感が生じないように配慮する

完成したシフト表は、スタッフ全員が見ます。「あの人はいつも希望のシフトで働いている」「いつも私の希望は通らない」などの不満につながらない配慮が必要です。シフトの希望が分散するよう、「土日の休みは1人あたり月に〇日まで」などの制約を与えるのも一つの方法です。

 

(2)シフトが埋まる工夫をする

雇用する側の業務ニーズと労働側の勤務希望が合わない場合、パートスタッフが「働きたくなる」インセンティブを付けるのも有効です。たとえば「土日は時給50円アップ」といった具合です。

 

4.割当計画

同じ日時に働くことになったスタッフに業務を割り振ります。「誰に」「何を」「いつ」「どれだけ」行ってもらうかの計画です。人によってできる仕事が違う場合、3のシフト作成と同時に考えることをおすすめします。シフト作成者と割当計画担当者が別のケースもありますが、同じ人が担当することでよりスムーズになります。

 

5.MH(マン・アワー)の管理

シフトは、作って実行したら終わりではなく、予定どおりに実行できたどうかをチェックすることも大切です。その際に重要になってくるのが「MH(マン・アワー/仕事を一人で行った場合の作業時間)」です。MHをしっかり管理し、検証します。これを参考にシフト作成を行うことで、「ムリ・ムダ・ムラ」をなくしていきます。

 

コミュニケーションがシフト作成を成功させるカギ

どんなにうまくシフトを組んでも、欠勤者や退職者など突発的な欠員が出ることはあります。そんなときにカギとなるのが、日頃のコミュニケーションです。スムーズに代替要員を確保するためには、店長やマネージャークラスの人が、一人ひとりのスタッフとしっかりコミュニケーションをとり、信頼関係やエンゲージメントを向上させておくことが大事です。
 
難しく考えることはありません。職場で会ったら率先して「おはよう」「お疲れさま」と挨拶をするだけでも、相手が受ける印象は変わります。定期的に一人ひとりと面談を実施するのも有効です。
 
スタッフ同士の人間関係も含め、職場での良好な関係性やお互い様の意識が醸成されることで、代理出勤を申し出てくれる人が増えたり、退職者の減少につながったりします。
 
シフト作成が思い通りに進まないことは少なくありませんが、そうしたときに力になってくれるのはほかでもない、一緒に働くスタッフたちです。日頃から感謝の気持ちを忘れずに、心と心のコミュニケーションをとっていくことが大事です。

 
※記事内で取り上げた法令は2022年10月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社働きかた研究所 代表取締役 平田未緒さん
早稲田大学卒業。1996年より求人媒体を発行する企業の研究所にて勤務。人事マネジメント情報誌の記者・編集長を務めた後、2009年より同所所長。2013年に退職し株式会社働きかた研究所を設立。「相思相愛経営」を掲げ、「対話型」研修や、コーチング・チームコーチングを精力的に行っている。『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP研究所)』等著書も多い。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう!ダウンロードはこちら 

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。