時差出勤とフレックスタイム制の違いは?

柔軟な働き方として「時差出勤」や「フレックスタイム制」を取り入れる企業があります。どちらも働く時間を選べることが特徴ですが、違いがわかりづらいという人も多いようです。それぞれ、導入した際のメリット、デメリットなどをうたしろFP社労士事務所の社会保険労務士、歌代将也さんに伺いました。

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時差出勤とフレックスタイム制の違い

両者の大きな違いとして、時差出勤制の場合は出勤・退勤時刻を変更できますが、1日に働く時間は変更することができません。
 
一方でフレックスタイム制は、1カ月など決められた期間の所定労働時間さえ守れば、1日に働く時間を6時間に減らすなど、変更が可能です。

◆時差出勤とは

時差出勤とは、企業が1日の実働時間を決め、社員はその労働時間を守る範囲で出退勤時刻を選ぶことができる働き方です。
 
たとえば、1日の所定労働時間が8時間(休憩1時間)と決められている場合、9時から18時まで、8時から17時までの勤務、10時から19時までなど、数パターンの出勤・退勤時刻から社員が自分に合ったものを選ぶことができます。
 
こうして出勤時間に時差をつけることで、満員電車によるストレスや、渋滞の発生などの解決手段として活用されています。

◆フレックスタイム制とは

フレックスタイム制は、出退勤時間を労働者が自由に設定できる制度です。自分で出勤と退勤の時間を決めることができるので、ラッシュを避けて通勤したり、業務状況によっては、早く仕事を終えたりすることもできます。
 
一般的な勤務形態では、1週40時間・1日8時間が法定労働時間となりますが、フレックスタイム制の場合、法定労働時間は次のように決まります。
 
1週の法定労働時間 × 清算期間における暦日数 ÷ 7
 
清算期間が1カ月のフレックスタイム制の場合、「1カ月が31日の月は177.1時間」「1カ月が28日の月は160.0時間」が法定労働時間です。
 
1カ月でこの時間より長く労働した場合は、残業時間とみなされ、残業代を支給する義務が生じます。法定労働時間の範囲内で、会社ごとに所定労働時間が決められているため、もし所定労働時間に達しなかった場合は、その分が給料から差し引かれます。
 
フレックスタイム制を導入している会社は、社員が自分で働く、働かないを判断できる時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず働かなければならない「コアタイム」を設けていることが多いです。近年では、コアタイムが存在しない「スーパーフレックス制」を導入している会社もあります。

 
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時差出勤のメリット、デメリット

◆時差出勤のメリット

時差出勤のメリットとして下記の点が挙げられます。

  • 社員はプライベートと仕事とを両立しやすくなる。社員の満足度が上がり、仕事に対するモチベーションや生産性の向上にもつながる可能性がある
  • 通勤ラッシュの緩和を目的として作られた制度のため、多くの業種で取り入れやすい
  • 時差のある海外との取引がある会社などでは、残業なしに早朝や夜間の打合せもできるため仕事がしやすい

 

◆時差出勤のデメリット

一方、デメリットとしては次の点が挙げられます。

  • 職場に全員がそろっていない時間が増えるため、コミュニケーション不足に陥りやすく、チームワークが発揮しづらくなる場合がある
  • 朝礼や会議など全員がそろう必要があるときに不便
  • 代わりのきかない担当者が不在の場合、通常業務が滞ってしまう場合がある
  • 朝や夕方など、誰がいて誰がいないのかがわかりにくくなる 

フレックス制のメリット・デメリット

◆フレックスタイム制のメリット

フレックス制は、時差出勤のメリットがそのまま当てはまります。加えて、次のようなメリットが挙げられます。 

  • 時差出勤よりも社員にとって自由度が高い。短い勤務時間で、プライベートを優先する日を作ることも可能
  • 導入企業は多くないため、求人のアピールポイントとなる
  • 月初の繁忙期は長めに働き、閑散期の月末は退勤時間を早くするなど、会社側が残業代を節約することができる

 

◆フレックスタイム制のデメリット

  • 取引会社や他部門との連携において、時間の設定が難しくなることもあり、導入できる職種が限られてしまう
  • 時差出勤制よりもさらに勤怠管理が煩雑になる
  • 自由に働ける制度のはずなのに、自由に決められない風土が生まれる場合がある
    (例:閑散期に上司から早く退勤するようプレッシャーをかけられる、周囲が朝から出勤しているので理由なく遅い時間に出勤しづらい、など)
  • 就業規則の整備および社員との労使協定の締結が必要なため、時差出勤よりも多くの手続きが必要となる

 
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導入を成功させるために、押さえておくべきポイント

◆時差出勤導入のポイント

時差出勤を導入するためには、就業規則の整備が必要です。
 
始業・終業時刻は、就業規則において絶対に記載が必要な事項であるため、時差出勤の導入によって勤務パターンが複数になる場合は、すべての始業時刻・終業時刻を就業規則に記載するか、「○時間の範囲で始業および就業の時刻を繰上げまたは繰下げることができる」などと記載しましょう。
 
労働基準法第34条第2項では「一斉休憩の原則」が定められており、休憩は全労働者に一斉に与えるというルールがあります。出勤時刻の時間差が大きい場合、休憩時間は社員ごとバラバラになるため、あらかじめ社員との労使協定の締結が必要です。
 
また、社員の業務に支障が出ないよう、時差出勤の勤務パターンの周知を徹底し、不公平感が出ないように部署ごとの勤務状況を把握します。普段から社員とコミュニケーションが取れる状況にしておくことが重要です。
 
また、コミュニケーションがおざなりにならないよう、月に1度は全員が同じ時間に出勤して情報共有する場を設けるのも一つの方法です。時勢を見ながら、コロナ感染防止対策を徹底した上で顔を合わせる機会を作ることができればベターです。

◆フレックスタイム制導入のポイント

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定め、対象となる労働者の範囲や清算期間(フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間)など、制度の基本的枠組みを労使協定で定める必要があります(労働基準法32条3項)。
 
また、コアタイムを設けない場合など、一斉に休憩させることが困難な場合には、時差出勤と同じく「一斉休憩の原則」の除外が必要です。
 
フレックス制は働き方の自由度が高い制度のため、今後さらに導入企業が増えていくことが予測されます。適切な賃金支払いのため、会社は社員の労働時間を正確に把握し、加えて社員も自身の総労働時間を意識しながら働くことが求められます。
 
いずれにしても、制度の仕組みやルールを社内で周知することが、導入成功のためのポイントとなるでしょう。

 

 

※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
 
<取材先>
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也さん
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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