下請法とは? その概要と事業者が注意すべきポイント

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業務を委託する親事業者と業務を請け負う下請事業者の関係において、優位な立場にある親事業者の都合で下請事業者が不利な扱いを受けているケースが少なくありません。下請法が適用される事業者の規模、取引内容をはじめ、義務や禁止事項についてクオーレ労務経営代表で、社会保険労務士・行政書士の戸川一秋さんが解説します。

 
 

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下請事業者に不利益が生じないようにする法律


下請法は、正式には「下請代金支払遅延等防止法」と言います。業務を委託する親事業者が、下請事業者に対して優越的な地位にあることを利用して値引きを行ったり、代金の支払いが遅れたりする行為等を取り締まるために定められました。独占禁止法を補完するために作られた法律でもあります。
 
下請法により企業の資本金の額や取引対象などを定め、それらに該当すれば問題が生じた際に独占禁止法の適応よりも迅速に対応できる狙いがあります。

 
 

下請法に関わる取引内容


下請法の適用対象となる取引の範囲は、取引をする当事者の資本金と取引の内容の両面から定められています。まず、取引内容の範囲から説明しましょう。取引内容の範囲は、以下の4つに分けることができます。

 
 

◆1.製造委託


物品の販売、または製造を請け負っている事業者が、企画、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託すること。
(例)自動車メーカーが、自動車の部品の製造を部品メーカーに委託する場合
電機メーカーが、電機製品の部品製造に必要な金型を金型メーカーに委託する場合

 
 

◆2.修理委託


物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託すること。自社で使用する物品を自社で修理する場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなど。
(例)自動車ディーラーが、請け負った自動車の修理作業を修理会社に委託する場合

 
 

◆3.情報成果物制作委託


ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託すること。
(例)ソフトウェアメーカーが、ゲームソフトや汎用アプリケーションソフトの開発をほかのソフトウェアメーカーに委託する場合

 
 

◆4.役務提供委託


運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託すること。ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、役務には含まれない。
(例)貨物運送業者が、請け負った貨物運送業務のうち一部経路の業務を委託する場合

 
 

下請法の適用は双方の資本金で決まる


下請法適用の有無は、親事業者・下請業者双方の資本金によって決まります。下請法が適用される資本金の範囲については、それぞれの取引内容ごとに、以下のように分類されます。
基本的に親事業者の場合、資本金が1000万1円以上であれば該当する可能性があるので業務内容や下請事業者の資本金などと照らし合わせて確認しましょう。
 
1.製造委託、2.修理委託 と3.情報成果物制作委託のうちプログラムの作成、4.役務提供委託のうち運送・物品の倉庫保管・情報処理に係るもの

 

親事業者→下請事業者 資本金3億円超→資本金3億円以下(個人を含む) 資本金1000万円超、 3億円以下→資本金1000万円以下(個人を含む)公正取引委員会「下請法の概要」をもとに編集部が作成


3.情報成果物制作委託のうち、放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面の作成など、プログラム以外の情報成果物の作成
4.役務提供委託のうち、ビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務などの顧客サービス代行など、運送、物品の倉庫保管及び情報処理以外の役務の提供

 

親事業者→下請事業者 資本金5000万円超→資本金5000万円以下(個人を含む) 資本金1000万円超、 5000万円以下→資本金1000万円以下(個人を含む)公正取引委員会「下請法の概要」をもとに編集部が作成

 
 

発注元である親事業者の義務と禁止行為


親事業者に課せられる義務は次の通りです。

 
 

◆義務

 

  • 書面の交付義務
  • 書類の作成・保存義務
  • 下請代金の支払期日を定める義務
  • 遅延利息の支払義務


親事業者は、下請事業者との取引に関する書面を作成、交付し、さらにその書類を2年間保存する義務があります。また、支払期日は納入された物品等の受領後60日以内で、かつできるだけ短い期間になるよう定めなければなりません。支払いが60日より遅れた場合には、未払い金額に遅延利息14.6%を乗じた金額を支払う義務があります。

 
 

◆禁止事項

 

  • 受領拒否の禁止
  • 下請代金の支払遅延の禁止
  • 下請代金の減額の禁止
  • 返品の禁止
  • 買いたたきの禁止
  • 購入・利用強制の禁止
  • 報復措置の禁止
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
  • 割引困難な手形の交付の禁止
  • 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
  • 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止


さまざまな禁止事項があるので、いくつか大事な項目を説明します。
 
「下請代金の支払遅延の禁止」は、物品等を受け取った日から60日以内で定められている支払期日までに下請代金を支払わないことを禁止するものです。この日数は、検品等を行ってからではなく、納品日から数えて60日以内なので勘違いしないようにしましょう。
 
「返品の禁止」は、下請け事業者に責任がないのに発注した物品等を受け取った後に返品することを指します。また、受領後6カ月を超えての返品も問題になるので注意が必要です。
 
「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」は、親事業者が自社のために下請事業者に現金やサービス、そのほかの経済上の利益を提供させることを禁止しています。
 
そして「報復措置の禁止」は、こうした禁止行為に該当する行為を親事業者が行った場合、下請事業者がその事実を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に取引を辞めたり、取引数量を減らしたりすることを禁止するものです。
 
義務や禁止事項は多岐にわたりますが、親事業者はこれらを知らなかったでは済まされません。取引上どちらの立場にあっても、円滑に進めるために下請法の内容をきちんと理解しましょう。

 
 
 
(参考)
公正取引委員会・中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック ポイント解説 下請法」
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf
 
公正取引委員会「下請法の概要」
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html


※記事内で取り上げた法令は2022年1月時点のものです。
 
<取材先>
クオーレ労務経営 代表 戸川一秋さん
社会保険労務士、行政書士、採用定着士。クオーレ労務経営の代表コンサルタントとして、企業法務、労務管理、採用相談、就業規則の作成やリスク対策など、幅広く企業の人事労務、企業法務関係のサポートに取り組む。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan +笹田理恵+ ノオト

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