新卒3年以内の離職率の推移は30%前後で横ばい
大学新卒者の離職率は、30%前後で横ばいではありますが、最終学歴や会社の事業所規模、職種によって離職率は変わります。全体の傾向としては、学歴が高く、事業所規模が大きいほど3年以内の離職率は低い傾向です。職種としては電気やガスなどのインフラ系が低く、飲食やサービス業は離職率が高い傾向にあります。ただ、インフラ系は転職しにくく、飲食やサービス業は転職しやすいという点も離職率の結果につながっていると言えるでしょう。
興味深いのは、コロナ禍でリモートワークが進んだ令和2年も数値としてはそれ以前とさほど変わらないということです。リモートワークで社員同士の繋がりが薄れ、組織としてのコミュニケーションがとれないのではという懸念もありましたが、意外と離職にはつながっていない印象です。3年分のデータが出るのはこれからなのでまだ断定はできませんが、引き続き注視したい動きです。
高い離職率がもたらす企業へのデメリットとは
短期的に見ると、採用した人が辞めてしまうことで、その人を採用するためにかけたコストや工数が無駄になってしまう点が大きなデメリットです。新卒一人あたりの採用に72万円ほどかかると言われているので、例えば新卒を100名採用して半分辞めてしまったら、3600万円もの損失になります。
採用後も、時間とコストをかけて新卒社員の研修や育成を行うので、新卒社員が自社に利益をもたらす前に辞めてしまうと、それらの先行投資がすべて無駄になります。
また中長期的には、辞めた人がSNSやブログ等で悪評を広めてしまい、企業のイメージダウンにつながることもデメリットです。これによって人が集まりにくくなり採用しづらくなる、退職しやすい雰囲気によって社員が辞めやすくなってしまうなど、負のスパイラルに陥ります。
新卒の離職率を下げるためのポイント
離職の理由はいろいろありますが、多いのが「入社前と後でイメージが違った」というものです。入社前に会社をアピールする場できちんと現場の仕事内容などを伝え、入社後にギャップを感じさせないようにすることが重要でしょう。
また、困ったときに気軽に相談できるメンターの存在や同期同士の繋がりも、コロナ禍においては特に大事です。何かが起きたときにきちんと相談できる関係性を、社内に作っておくことがセーフティネットとなり得ます。
離職率が低い会社はこのあたりの仕組みがしっかりしていて、新卒にはメンターないし担当の上司がつき、「今後3カ月どのような目標を持って何をやるか」といった行動レベルの目標のすり合わせを定期的に行っています。評価においても、「なぜこの評価なのか?」を言語化して、きちんとコミュニケーションをとっています。
定着と育成はセットなので、丁寧な教育制度が、離職を防ぐポイントになります。現場に任せるとブレてしまうので、ある程度人事などが音頭をとって全社で標準化しながら進めるとうまくいきやすいでしょう。
参考:
厚生労働省「学歴別就職3年以内離職率の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000845627.pdf
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
<取材先>
core words株式会社 佐藤タカトシさん
TEXT:小林麻美
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト