派遣先責任者とは
「派遣先責任者」とは、一元的に派遣労働者の就業管理を行う人です。派遣労働者が派遣先企業において業務を円滑に遂行できるよう、適正な就業を確保する役割を担っています。
労働者派遣法第41条では、「厚生労働省の定めるところにより、派遣先責任者を選任しなければならない」と定義しています。つまり、派遣労働者を受け入れる派遣先企業は、必ず派遣先責任者を選任する必要があります。
派遣先責任者の役割
派遣労働者の適正な就業を確保するために、労働者派遣法では派遣先責任者の具体的な役割を以下の通り定めています。
◆派遣先責任者の役割
- 指揮命令者や関係者等に派遣法や契約内容を周知すること
- 派遣受入可能期間の延長通知に関すること
- 派遣先企業における均衡待遇の確保に関すること
- 派遣先管理台帳の作成、記録、保存および記載事項の派遣元への通知に関すること
- 派遣社員からの苦情の対応にあたること
- 安全衛生などに関して、派遣元企業と必要な連絡調整を行うこと
- 派遣元企業との連絡調整に関する様々なこと
- 派遣先企業における教育訓練の実施状況を把握すること
- 利用できる福利厚生施設を把握すること
- 派遣元企業に提供した派遣先企業の労働者に関する情報、派遣労働者の業務遂行状況などを把握すること
派遣先責任者の選任条件
派遣先責任者の選任条件や資格などは特に規定されていません。ただし、厚生労働省が示す「派遣先企業が講ずべき措置に関する指針」(第2-13)において、努力義務として以下を有する者を選任するのがよいとされています。
- 労働関係法令に関する知識を有する者
- 人事・労務管理等について専門的な知識、または相当期間の経験を有する者
- 派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者
派遣先責任者を選任する際のポイント
派遣先責任者を選任する際には、次のポイントに留意しましょう。
1.事業場ごとに専属の派遣先責任者を選任する
専属とは、他の事業場の派遣先責任者を兼任してはいけないということです。派遣先責任者の業務のみを行うという意味ではありません。
2.派遣先責任者の選任人数
派遣先責任者の人数は、派遣労働者の人数によって異なります。
- 派遣労働者の人数が1人~100人以下の場合、派遣先責任者は1人以上
- 派遣労働者の人数が101人~200人以下の場合、派遣先責任者は2人以上
- 派遣労働者の人数が201人~300人以下の場合、派遣先責任者は3人以上
3. 監査役は派遣先責任者に選任できない
監査役は業務の性格上、派遣先責任者になることができません。ちなみに、取締役は派遣先責任者になることが可能です。
派遣先責任者は正社員が望ましい
繰り返すように、派遣先責任者の選任条件は法律で規定されていません。そのため、正社員ではなく、契約社員やパート、アルバイトから選任することも可能です。しかし、職務を全うするだけの権限が必要なため、正社員が望ましいといえるでしょう。
適任者がいない場合は「派遣先責任者講習」を利用するのも1つの方法です。派遣先責任者講習とは、厚生労働省が指定する機関において開催している講習です。派遣先責任者としての能力向上を目的に、業務遂行に必要な知識を付与しています。
今後、派遣労働者の受け入れを考えている企業は、自社の正社員に「派遣先責任者講習」を受講させ派遣先責任者を育成することをおすすめします。
※記事内で取り上げた法令は2023年1月時点のものです。
<取材先>
社会保険労務士法人堀下&パートナーズ 代表 堀下和紀さん
慶應義塾大学商学部卒業。大手企業を経て、社会保険労務士法人堀下&パートナーズを設立。訴訟、労働組合案件等トラブル解決を含め、労働法務に関する指導数は100社を超える。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト