派遣社員とは
「派遣社員」とは、派遣元企業(人材派遣会社)に雇用され、派遣先企業の命令下で労働する社員のことです。
派遣元企業が派遣先企業に社員を派遣することを「労働者派遣」といいます、法律上、以下の通り定義されています。
「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」(労働者派遣法第2条第1項)
派遣社員の業務内容と範囲
派遣社員の業務内容や範囲について、特に法的な定めはありません。派遣元企業と派遣先企業の合意のもと、個別の派遣契約によってその都度業務内容や範囲を決定することができます。ただし、派遣契約で定めた業務以外の仕事を命じることはできません。
例外として、次の6つは労働者派遣を行ってはならない「適用除外業務」とされているので注意しましょう。
◆適用除外業務
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院などにおける医療関連業務(紹介予定派遣や産前産後休業の場合などは可能)
- 士業業務(弁護士、司法書士、公認会計士等)
- 団体交渉等の労使協議の際に使用者側の当事者として行う業務
派遣社員に管理業務を任せることの是非
人手不足や能力に見合う人材の不足から、派遣社員に管理業務を依頼したいと考える企業もあるかもしれません。
派遣先企業が管理業務に求める具体的な指揮命令を派遣契約に落とし込み、派遣社員に指示できるのであれば、期間限定のプロジェクトや一時的に人材が足りない場面などで、派遣社員を活用するメリットはあると考えられます。
ただし、以下の観点から派遣社員に管理者としての業務を任せるのはリスクのほうが大きいといえるでしょう。
1.業務は派遣契約に記載している内容に限定される
一般的に企業が管理職に望む役割は、労働基準法で定義されている「管理監督者」です。つまり、「経営者と一体的な立場で仕事をする」「一定の権限を委ねられ、裁量をもって仕事をする」といった役割です。しかし、派遣社員は派遣元企業と雇用関係がありつつ、派遣先企業で指揮命令を受ける立場となっており、派遣先企業で裁量を持って自ら権限を持ち働く、ということがしにくい傾向にあります。
2.雇用者は派遣元企業なので責任範囲が限定される
管理職には通常、業務遂行上一定の責任が生じます。派遣社員が派遣先企業とは別の企業に在籍している関係上、有事の際に責任ある立場として立ち回ることは難しく、役割や責任範囲も限定的なものとならざるを得ません。
管理者には自社社員を起用するのがベター
繰り返すように、派遣社員に管理業務を行わせることは、法的に不可能ではありません。しかし、一般的な社会通念に照らし合わせると、あまり馴染まないと考えられます。
あくまで派遣社員の業務範囲は、派遣契約に明記された範囲内になります。管理業務は多岐に及ぶ上に能動的な行動が求められます。しかし、契約書に明記するとなると限定的な内容にならざるを得ません。そういったことを踏まえると、管理業務は自社の社員に任せるのがベターといえるでしょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年12月時点のものです。
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所 社会保険労務士 大川麻美さん
慶應義塾大学文学部卒業後、情報系事業会社に入社。人事部にて約10年間勤務する。労務領域では社内規程策定および決裁業務、EAPシステム運営など、企画領域では法改正事項や経営戦略を踏まえた諸制度改定などを経験。在職中に社会保険労務士国家試験に合格。寺島戦略社会保険労務士事務所に入所後、人事課題解決のサポートを行っている。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト