警備員はなぜ人手不足? 警備業が抱える課題と警備員に適した人材、需要の変化とは


警備員は、工事現場やオフィスビルなど様々な場所で必要とされる人材です。近年は商業施設や大規模なイベントなどで、警備員の需要が高まりつつあります。しかしその反面、求職者はあまり増えず、警備業界では慢性的な人手不足に陥っているようです。
 
いったいなぜ、人が足りない状況が続いているのでしょうか? 警備業界における人手不足の理由や問題点、今後の展望、警備員に向いている人材について有識者にお聞きしました。解説は、株式会社三菱総合研究所 キャリア・イノベーション本部の宮下友海さんと大橋麻奈さんです。

 
 

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教育に時間がかかる、適正な労務管理の難しさ……警備会社が人を集めづらい理由と課題


――警備業界では人手不足が続いているようです。警備員の有効求人倍率は、どれくらいなのでしょうか?
 
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、「保安の職業」の有効求人倍率は2016年以降、6~8倍くらいで推移しています。
 
警備業法上、警備業は1~4号の区分に分かれています。そのうち施設警備や巡回警備、空港保安警備を行う「1号警備」と、交通誘導やイベントなどで雑踏警備を行う「2号警備」は、事業者数および働いている人数が多く、常に需要がある状態です。それにも関わらず求職者が集まらないため、人手不足に陥りやすい傾向にあります。
 
――1号警備と2号警備が人手不足のメインになっているということですね。では、求職者が集まらない理由とは?
 
やはり労働条件の問題が大きいのではないでしょうか。特に交通誘導や雑踏警備は野外勤務となるため、夏や冬は厳しい労働環境となります。
 
また、夜勤の問題もあるでしょう。24時間警備だと交代制で夜間に勤務しなければならないケースが多々あります。夜勤だと体力が必要ですし、2号警備では悪天候の中で就業しないといけない、しかもトイレや休憩場所がない、といった現場もあります。ビルや建物の中での勤務に比べると体力的な負荷が大きく、労働環境が厳しくなるため、求職者から敬遠されてしまうのです。
 
また、2号警備は短期間で就業場所が変わり、一緒に働くメンバーが異なる特性もあります。「毎回違う人と会い、終わったら解散」といった環境だと、長期的な人間関係を築いていくのが難しいでしょう。仕事や職場環境に慣れるまで時間がかかるため、離職に繋がる可能性が高くなってしまうのです。
 
――1号警備と2号警備は、ニーズに違いがあるのでしょうか?
 
1号と2号では、人員確保の流れが異なります。1号は主に施設警備や保安業務なので、クライアントと契約している期間は、月に何人必要かを数値化できます。必要な人数を正規雇用とし、定常的に回していくことができるでしょう。
 
一方、2号は単発的な受注がメインです。工事現場やイベントでの警備など、「今日注文が入り、数日後から稼働」といった依頼も少なくありません。しかし受注が減ってしまう可能性を考えると、常用雇用でたくさんの警備員を抱えておくのは難しいでしょう。
 
依頼に対して適時・適切に人を充当できないことを「人手不足だ」と捉えているケースもあるのではないでしょうか。
 
――なるほど、定常業務と単発的な業務では、人員確保の手法に差が生じるのですね。ほかに人手不足の理由はありますか?
 
警備業には、教育に時間がかかるという問題があります。警備員は「なります」と言ってすぐなれるものではありません。なぜなら警備業者は、警備業法で定められた法定教育を実施する義務があるからです。具体的には、新任教育に20時間、現任警備員に対する教育は年度ごとに10時間を要します。教育に一定時間がかかるため、急に警備の依頼が来ても、すぐに新たな要員を確保できないのです。
 
しかも、クライアントとの受注契約は基本的に警備時間単位なので、新任教育の時間は先行投資となってしまい、警備会社は対価を得られません。となると、教育期間中の新人に対し給料が払えるのか? という問題も生じます。
 
教育の時間に対し給料を払っている会社もあれば、払っていない会社もあります。もし「新任教育の時間は給料を払わない」となると、働き手としては厳しいでしょう。その点も、警備員が敬遠される理由の一つになっているかもしれません。
 
――警備会社が抱える課題や問題点、改善すべき点について教えてください。
 
まず一つは、労務管理の適正化です。警備業は急な要請にも対応しなければならず、休暇を取得しにくい業界だと言われています。労働基準法の改正や働き方改革に伴って、有給休暇を消化し、しっかり従業員に休んでもらうことが課題となっています。
 
給与体系や賃金制度については、適正単価での受注など、ビジネスモデルから考え直さなければなりません。依頼主から適正な対価をもらい、それを警備員に還元していく仕組みを構築する必要があるでしょう。
 
長期的な視点では、キャリアパスの仕組みが単線的であることも課題として挙げられます。警備員を長く続けていくと、隊長やリーダーになる形が一般的です。ただ、それだけでは不十分でしょう。警備業界で長く活動していく中でのキャリアパスや処遇をどう組み立てていくのか、高い意識を持って改革していかなければなりません。

 
 

中高年層も活躍できる場所がある? 警備業に向いている人材


――警備会社は、警備員に適した人材を集めなければなりません。どういった人が警備員に向いているのでしょうか?
 
それは警備対象によって変わるでしょう。競艇や競輪など公営競技場の警備を例に挙げると、お客さんの中には気分が高まり、エキサイトする人も出てきます。そういう場では、少し年齢が高めの、どっしりした雰囲気を持つ男性が適しています。
 
別の業界でキャリアを積んだ後に警備員へ転職した中高年なら、堂々とした佇まいで場を抑えることができるかもしれません。施設内であれば就業しやすいため、うまく採用している事例はあります。
 
――必ずしも「若い人のほうがいい」というわけではない、と。
 
そうですね。ただ4号警備(身辺警護)の場合は、元警官や元自衛官など、一定の経歴やスキルを求められる可能性があります。また、警護対象が女性の場合は、性別が条件に入るかもしれません。結局のところ適材適所であり、向いている人材は現場によって変わってくるでしょう。
 
一般的には、警備員に対して「比較的簡単になれる」「それほど高いスキルがなくても就ける」といったイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし実際には、新任教育で20時間の研修・トレーニングを受ける義務があるなど、相応のハードルがあります。
 
採用する側は、研修や実務内容を含めきちんと情報発信を行い、それを認識した上でも意欲がある人を選んでいく必要があるでしょう。

 
 

付加価値の高い仕事へシフトする? 警備業の需要予測


――今後も警備員の需要は増えていくのでしょうか?
 
人から機械への代替が徐々に進んでいくと考えています。1号警備では、すでにロボットなど「機械による警備」へ置き換わっているところもあります。一方で、交通誘導や雑踏警備などの2号警備に関しては、1号警備に比べて機械化が難しいため、一定の需要が残るでしょう。
 
また、同じ警備業の中でも、 IT機器を使いながら実務を遂行する形式へシフトしていく可能性はあります。単に警備をするだけではなく、機械の操作など付加価値の高い業務も織り交ぜる形に変わっていくのではないでしょうか。
 
――もし「ロボット警備」に切り替わったとしても、今度はロボットを操作・管理する人員が必要になってくる、ということですね。
 
おっしゃる通りです。あくまで当社のシミュレーションですが、機械への代替や需要の減少により、2027年ごろからは徐々に人手不足が解消されるのではないか、と予測しています。

 
 
 
※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
 
参考:
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450222&tstat=000001020327&cycle=1&tclass1=000001156186&tclass2val=0
 
<取材先>
株式会社三菱総合研究所 キャリア・イノベーション本部
主任研究員 宮下友海さん
研究員 大橋麻奈さん
 
TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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