有効求人倍率とは
就職や転職サイトなどでよく目にする「有効求人倍率」とは、全国の公共職業安定所(ハローワーク)の求職・就職の状況をまとめ、厚生労働省が毎月公表している求人数の倍率です。企業は採用活動における人材の状況、求職者は就職の難易度を判断する目的で、1952年から統計調査が始まりました。
有効求人倍率の「有効」とは、ハローワークが求人・求職に定める有効期間です。求人・求職ともに2カ月間(申込み月の翌々月末日まで)とされています。
◆有効求人倍率の求め方
有効求人倍率は、企業がハローワークにエントリーする仕事の数(有効求人数)÷働きたい人の数(有効求職者数)で算出します。たとえば、有効求人数が50、有効求人者数が100の場合は、有効求人倍率は0.5倍。有効求人数が100、有効求人者数が80の場合は、有効求人倍率は1.25倍と表示されます。
有効求人倍率が1の場合は、企業が募集する仕事の数(有効求人数)と仕事を探している人の数(有効求人者数)が同じなので、均衡が取れた状態となります。つまり、有効求人倍率が1よりも大きくなればなるほど求人に対して応募が不足した状態で、人材の確保が難しくなります。逆に1より小さい場合は、企業の求人に対して仕事をしたい人の数が多い状況なので、就職希望者はなかなか定職につくことが難しい状況といえます。
また、都道府県別の有効求人倍率としては、求人票を受理したハローワークの所在地で集計する「受理地別」と、求人票に実際に記入された就業地で集計する「就業地別」のデータがあります。これは、本社が集まる都市部の求人倍率と地方の求人倍率が正確に反映されるよう考慮されたものです。
ただし、有効求人倍率は、ハローワーク以外の求人媒体や転職サービスを利用する求人数、求職者数、そして新卒の就職活動者数は含まれません。データを読む場合には注意が必要です。
有効求人倍率の求め方
前述の有効求人倍率の求め方をもとに、有効求人倍率の見方を深めてみましょう。
◆雇用動向の指標にする
有効求人倍率は毎月発表されるため、その推移から雇用の動向をうかがい知れます。たとえば、前月や前年の同じ時期に比べて数値が下降している場合は、採用活動がしやすくなったことを示します。もちろん、採用状況を一概に判断できるものではありませんが、世の中の景況感とともにひとつの指標として参考にできるしょう。
採用活動を展開するエリアの有効求人倍率の差にも注目します。2019年11月の受理地別の有効求人倍率をみると、最高は東京の2.06倍、最低は長崎の1.16倍です。また、就業地別での最高は富山県の2.08倍、最低は高知県の1.26倍でした。こうしたデータは地域の労働力を把握する指標となり、採用活動の参考になるでしょう。
◆景気動向の指標にする
企業が人材をどれほど雇い入れることができるかは業績に左右されるため、有効求人倍率は景気動向を示す指標のひとつになります。
たとえば、2008年8月の有効求人倍数は0.86倍でしたが、翌月にアメリカで起こったリーマンショックの影響として、約1年後の2009年8月の有効求人倍率は0.42倍と非常に落ち込んだのです。社会的にも不景気になり、求職者は厳しい就職難に見舞われました。このように、有効求人倍率は労働市場の好不景気を反映しています。
昨今の有効求人倍率の状況は
有効求人倍率を読み解くと、どのような情報が得られるのでしょうか。厚生労働省が発表した最新の有効求人倍率の推移を見てみましょう。
ここ数年の労働市場は、慢性的な人材不足が続いています。2017年10月には、有効求人倍率のピークだったバブル期の倍率1.55倍を43年9カ月ぶりに更新しました。
2019年12月に発表された一般職業紹介状況において、有効求人倍率は1.57倍と、現在もバブル期並みの超高水準を継続中です。倍率が1を大きく上回っているため、求職者にとって就職がしやすく、企業にとっては引き続き人材の確保が難しい状況と言えます。
とはいえ、現在の人材不足は労働人口の減少など、バブル期の人材不足とは社会的な背景が異なります。そのため、これからの時代に即した新たな採用活動を想定することが重要です。
有効求人倍率を理解して、採用活動に活用しよう
有効求人倍率はその時代を表す指標です。近年の高倍率が示すように、企業にとってここ数年の人材確保は深刻な問題となっています。
そんな状況でも、有効求人倍率の推移をきちんと読み解き、現在の状況を理解することは、新たな採用方針を考えるヒントになるはずです。有効求人倍率は職種別の数値も公表されているので、エリア別のデータと合わせてチェックしてみましょう。
出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html