
スキルファースト(職歴や学歴よりもスキルや能力を重視する)採用を支持する声が高まっていますが、実際に導入するのは簡単ではありません。どうすれば実践に移せるのか、具体的な方法をご紹介します。
キーポイント
- 企業の多くはスキルファースト採用の価値を認めていますが、実際に採用戦略を調整している企業はごくわずかです。
- まずは、欠員の補充が難しい1つの職種に絞って、小さな取り組みからスキルファーストのアプローチを試してみましょう。
- 求人内容の書き直しを続けましょう。スキルファースト採用が重要である理由について採用担当者に説明し、実現に向けた研修をすることが大切です。
適した人材を見つけることに関して、求職者の学歴や職歴よりも実際のスキルの方が重要だと考える企業が増えています。Indeed の委託により、2024年に米国と5つのグローバル市場でYouGovと協力して実施された調査(英語)では、大部分の企業(51%)が、採用の質の高さを示す主な指標は実務経験だと回答しています。求職者の学歴が指標になると回答したのは、わずか4分の1程度でした。
スキルファースト採用は、学歴や職歴のような職務に関係のない要件ではなく、候補者が仕事に活かせるスキルを重視する手法であり、勢いを増しています。たとえば、Indeed Hiring Labのデータによると、米国には採用企業が4年制大学卒業の要件を廃止する(アメリカ版。日本版はこちら)というトレンドが生まれています。これは前向きな変化ですが、さらなる進展が必要と言えるでしょう。
企業の多くは依然として、トレンドに応じた採用戦略の調整を実施していません。2024年にYouGovが実施した世界規模の調査では、求人内容を編集し、学歴や職歴の要件を取り除いたと回答した企業は13%のみです。同様に、スキルを重視した審査と採用の方法について、従業員に対して研修を実施したと回答した企業はほんの一部(17%)となっています。
スキルファースト採用は、その仕組みに関する知識不足により、実現に向けた行動が遅れている可能性があります。「企業の多くはスキルファースト採用についてよく知りません。したがって企業は、この戦略の内容や、この戦略が求職者だけでなくビジネスにとっても有益である理由を理解する必要があります」と、Indeed でChief People and Sustainability Officerを務めるLaFawn Davisは話します。
企業が指針にできるエビデンスはたくさんあります。ある調査によると、スキルファースト採用(スキルベース採用とも呼ばれる)の戦略を導入した企業は、仕事の条件に合う候補者を2倍見つけやすいことが明らかになっています(英語)。そうした候補者は生産性も意欲も高いことが証明されている、と話すのは、非営利団体のOneTenでCEOを務めるDebbie Dyson氏です。OneTenでは、4年制大学を卒業していない人材に対し、キャリアの機会への道を開くことを目指しています。「学歴がないために求職者が選考からふるい落とされ続けている状況で、最終的にある企業がその求職者を認め、チャンスを提示すれば、その企業に対する求職者の忠誠心は大幅に高まるでしょう」とDyson氏は説明します。
関心を行動に移し、スキルファースト採用を始める実践的な方法を見ていきましょう。
スキル重視の採用は小さな取り組みから始める
スキルファースト採用の最も基本的な部分は、学歴や職歴の要件ではなく、勤務初日に必要とされるスキルを優先することです。ただし、それだけではありません。スキルファースト採用に適した求人情報を作成するには、インクルージョンに配慮した表現を使用し、職種の具体的な責務と必要な能力を明確に理解することが求められます。
たとえば、採用担当者を募集するとします。従来のような求人情報では、4年制大学を卒業した「チームプレーヤー」で、「採用活動を行う環境で働いていた」5年の経験を持っていることが要件になるでしょう。このような曖昧な表現では、応募者が実際に活かせるスキルについてはほとんど説明されていません。
それとは反対に、スキルファーストのアプローチで同じ求人情報を作成するなら、面接を実施したり、採用責任者と協力して新規採用者を決定したりした経験を求職者に求めることになるでしょう。
スキルファースト採用についての最大の誤解は、0か100かの取り組みだと考えることだ、とRework America Allianceでディレクターを務めるJacob Vigil氏は言います。Rework America Allianceは、スキルファースト採用と職業訓練を通して、低賃金の職種から質の高い仕事への転職を支援する、全米規模の取り組みです。(Rework America Allianceは、スキルファースト採用と人材管理業務を推進するリソースとツールを提供する非営利団体、Jobs for the Futureの活動の一部です。)
Vigil氏は、企業に向けた第一のアドバイスとして、採用が難しい1つか2つの求人から始めてみることを勧めます。たとえば、募集中なのに応募が集まらない職種や、大量の応募があるのに適切な候補者がいない職種が候補になります。「すぐに結果が得られるところから始めましょう」とVigil氏は言います。
スキルファースト採用についてサポートを受ける
すべての求人がスキルファーストのアプローチに向いているわけではありません。「手術を受ける場合には、外科医が学位を持っていることを期待するでしょう」と、Grads of LifeのManaging Partnerを務めるEbony D. Thomas氏は話します。「しかし、すべてのソフトウェアエンジニアに同じレベルの資格が必要でしょうか?たぶん必要ないでしょう」Grads of LifeやRework America Alliance、OneTenといった団体は企業と協力して、4年制大学卒業の要件を取り除くのに適した求人を精査し、その仕事で求められる基本的なスキルの判断と、それに従った求人内容の書き直しをサポートします。
Indeed は昨年、Grads of Lifeとのパートナーシップを開始し、求人内容の資格要件を見直す方法やスキルファーストの面接を実施する方法など、スキルファースト戦略について10社の研修を実施しました。「企業間での対等な会話を促すことで、各社のスキルファーストの取り組みから互いに学び、ベストプラクティスを参考にし合うことを目指しています」とThomas氏は言います。
採用チーム全体に参加を促す
さまざまな面で、求人内容の書き直しは簡単に取り組める部分だと言えます。実際にスキルファーストの手法を使用して採用を達成することの方が難しいでしょう。
Indeed の米国データによると、業界経験のない求職者からの応募は、たとえ関連性の高いスキルを持っている場合でも、採用企業が選考を進める可能性が25%低いことが分かっています。関連性の高いスキルはあるものの、業界での経験がない求職者の応募の方が2.6倍多いにもかかわらず、このような結果になっています。
ハーバードビジネススクールと、非営利の研究機関であるBurning Glass Instituteが実施した調査によると、2014年から2023年までで学歴要件のない求人の数が4倍に増えた一方で、実際にそうした仕事に採用された、学位を持たない求職者の平均数はわずか3.5%の伸びとなっています。
「何十年もの間、大学に行くのは当然のことであると信じられてきました」とThomas氏は説明します。「そうした思い込みが長年にわたり、学位を持たない人材は能力に欠けるという不正確なスティグマ(特定の属性や経歴を持つ人へのネガティブなレッテル)を形成してきたのです」たとえば、採用責任者を対象とするOneTenの調査では、学位を持たない求職者について、一部の企業が対人スキルやコミュニケーション能力の不足を心配していることが分かりました。こうしたスキルや能力は、面接で評価するのが難しいものです。
自社の採用チームを納得させるには、スキルファースト採用の成功に向けて準備を整えられるよう支援する必要があります。そのためには、採用チームのスキルアップを図るほか、各応募者に同じ質問を提示し、経歴ではなく実際に何ができるかで評価するための面接規則など、適切なツールを提供することが求められます。また、採用責任者が大学を通じた通常の採用チャネル以外でも候補者を探せるよう、支援する必要があるかもしれません。特に採用で重視する能力を開発している、地域の労働者向け施設やスキルベースの研修プログラムなどを検討してみるとよいでしょう。
ただし、こうした戦術的な方策が大切である一方で、採用責任者がそれらの導入を決める唯一の道筋は、採用責任者にスキルファースト採用が重要である理由を理解してもらうことです。「企業は、スキルファースト採用のメリットを強調する必要があります」とVigil氏は言います。たとえば、条件に合わない採用の削減、定着率や費用対効果の向上に役立つ可能性があります。
採用責任者を納得させる方法の1つに、長期間にわたってスキルファースト採用の影響を追跡することがあります。たとえば、Grads of Lifeは影響を測定するフレームワークを開発しました。これは、企業がスキルファースト採用の実践による成長と成果を監視し、追跡するための一連の指標をまとめたものです。
例を挙げると、4年制大学を卒業していない人材は何人採用されたか、そうした人材のパフォーマンス評価は、大学を卒業した人材と比較してどうか、などがあります。自社の採用責任者がスキルファースト採用を受け入れた場合には、その成果を認めましょう。「功績を認めることは非常に大きな効果がありますし、費用もかかりません」とThomas氏は説明します。
最後に、スキルファースト採用は利他主義の取り組みだとみなすべきではありません。労働市場が厳しいときには、ビジネスの必須条件だとDyson氏は言います。「今日使用されている採用基準に基づくと、人材が足りません。企業が求人内容を書き直すことで、人材プールが広がるのです」
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