2025年2月26日、品川ザ・グランドホールとオンラインにて同時開催された「Indeed PLUS Tech Summit」。Indeed PLUS連携ATS(採用管理システム)・連携求人サイトを担当する技術者を中心に、Indeed PLUSのビジョンや今後の開発方針を共有するイベントが執り行われた。
キーノートセッションに続き行われたパネルディスカッションには、第一線で活躍するIndeed PLUS連携ATSより、株式会社クイックの松沼英郎氏、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の陳シェン氏、株式会社リクルートの藤原武彦氏が登壇。IndeedからはProduct Directorのサトウエリック、モデレーターとして樫尾和明が参加。開発現場での苦労や要望、そして成果に至るまでのストーリーが隠さず語られ、フランクな対話の中にも本質を突く提言が飛び交うセッションとなった。
パネリストプロフィール
- 株式会社クイック 事業推進部 エグゼクティブプランナー Q-mate 松沼英郎氏
- パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 SEEDS COMPANY カンパニー長 HITO-Manager 陳シェン氏
- 株式会社リクルート Jobboardクライアントソリューション1グループ グループマネジャー Airワーク 採用管理 藤原武彦氏
- Indeed, Inc. Product Director サトウエリック
- Indeed Technologies Japan 株式会社 Manager, Platform Partnerships 樫尾和明
各社の危機感と期待から生まれた協業への決断
パネルディスカッションは、Indeed PLUSのローンチを各社がどのように受け止めたかという振り返りからスタート。各社の率直な反応から、変革への期待と挑戦の両面が浮き彫りになった。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の陳氏は一定の危機感と共に、「テクノロジーの進化という面では、世の中のために必要なサービスだ」という認識があったと語る。
「戦うか手を取り協力するか迷ったが、パーソルの実現したい未来と、Indeedが描く世界観は、最終的には同じなのではないかと。特に採用のバリューチェーンの入口フェーズ(母集団形成)において、Indeedのプラットフォームは圧倒的な強みを持っている。我々がそれ以外の後工程における価値提供に注力すれば、よりスピード感をもって採用改革を進めることができると考え、協業に踏み切った」(陳氏)
一方、株式会社クイックの松沼氏は「顧客に成果を出しやすくなるのではないか」とポジティブに捉えたと話す。
「ATS運営以外にも販売代理店もしているクイックはリクルートの代理店としてタウンワークやリクナビNEXTを主に販売してきた経緯があり、Indeedの扱いは限定的だった。しかしIndeed PLUSにより(※1)、一度の求人投稿で複数の連携求人サイトに配信される仕組み(※2)が実現すると知り、顧客提案の幅が広がることに大きな可能性を感じた」(松沼氏)
株式会社リクルートの藤原氏は、クイックと同様にATS運営以外に求人サイトも運営する立場から見て、大きく2つの可能性を感じたと振り返る。
「1つはより求職者に寄り添った求人掲載方法になる点。掲載課金型ではお金を払うことで検索結果の目立つ位置に求人情報が表示されていたが、Indeed PLUSの仕組みでは求職者のニーズにより合致した求人情報が表示されやすくなる。もう1つは求人フォーマットの統一。これにより、松沼さんが言及されたように、Indeed PLUS連携ATSから一度投稿すれば、複数の連携求人サイトに求人を配信できるようになる(※2)。その結果リーチを広げられるというのは大きな進化だと考えた」(藤原氏)
(※1)Indeed PLUS利用の際には、Indeedの利用規約、掲載基準、使用制限が適用されます。
(※2)Indeed PLUSは配信最適化の結果、複数ではなく単一の連携求人サイトにのみ掲載される場合があります。
APIの仕様変更から審査基準まで、現場で直面した課題と解決策
各社がIndeed PLUSに期待を寄せる反面、実際の連携に向けた開発現場では様々な苦労があった。技術的な課題から運用面での問題まで、各社はそれぞれの方法で困難を乗り越えてきた。
藤原氏は連携求人サイト・連携ATSの開発両面を担っているリクルートでの取り組みについて、「すべての求人サイトを作り変える必要があった。数多くのATSと求人サイトを持つ環境下で一箇所を変更すると別の箇所に波及するケースが多く、毎週新たな課題が発生していた」と振り返る。
「その困難を乗り越えられたのは、リクルートの組織文化の強み。トップマネジメントは毎週定例会を設け、各課題にスピーディーに判断を下していった。また、現場では目標に向けて全員が一致団結して取り組んだ。例えば法務担当者がプロダクトのことを考慮して法務観点での提案をするなど、全部署を巻き込んだ協力体制ができていた」(藤原氏)
システム統合の過程について、ユーモアを交えて「すべてがエキサイティングだった」と表現するのはパーソルの陳氏だ。
「仕様書支給後も仕様書の内容変更が複数回あり、エンジニア陣のプレッシャーは大きかった。状況の打開に効いたのは、小さなPDCAを常に回していくアプローチ。通常のアジャイル開発よりもさらに範囲を小さくし、より柔軟に対応していった」(陳氏)
クイックの松沼氏が語ったのは、求人審査の難しさだ。クイックではIndeed PLUSの利用開始当初、投稿した求人が連携求人サイトに表示されるか日々チェックしていたと言う。そして、「実際に審査を通過し配信されている割合が想定よりも大幅に低かったと知った時は衝撃を受けた」と当時を振り返る。
「そこで求人情報の入力フォーマットを徹底的に遵守する取り組みを開始。入力漏れを防ぐために、フォーマットに従わないと保存できない仕様にするなどの改善策を講じた。また、顧客情報を早期に収集して新機能のリリース前に準備できるように、営業部門のマネジメントも徹底した。」(松沼氏)
3社の振り返りを終えたところで、モデレーターの樫尾が「Indeed PLUSに改善点として期待することは?」と質問を投げかけた。松沼氏はIndeed PLUSの審査を通過するために必要な情報入力方法が提示されるなど、基盤となる部分から改善を進めてほしいと要望した。
リクルートの藤原氏は、「審査条件を明確にし、バグが起こった際にはリカバリーやコミュニケーションにスピード感をもって対応いただけるよう期待している。日本企業はSLA(サービスレベルアグリーメント)が高いので、ここを改善することで顧客満足度も向上する」と指摘。
パーソルの陳氏は、「現状では使用するATSによって求職者に提供できる価値に差があるが、どのATSを使っても同等の価値を提供できるようにしていただきたい」と述べた。
Indeed PLUS連携により感じた効果と今後の展望
開発現場での苦労や要望を語ったパネリストたちの議論は、徐々にIndeed PLUSの活用状況へと話題がシフト。フィールドで見え始めた具体的な成果や今後の展望について意見が交わされた。
藤原氏は「特にリテールのお客様を中心に成果が出るようになったという声を多く聞く」とコメント。今後はマッチング精度の向上に期待したいと述べた。
「現在は正社員採用だと一人採用するのに20応募、アルバイト採用だと一人採用するのに10応募が必要、というケースもあり、応募数に対して採用決定率が低い。理想は1応募1面接1採用。ATSで管理している応募者のステータス情報や、求人に必要な追加情報など、マッチングの質を高めるデータをATS入稿基盤とプラットフォーム間でやり取りできるようになれば、その実現に近づくのではないか。さらに、企業の社風と応募者の適性、求めるスキルの深度などをマッチングの初期段階で確認できれば、採用業界の長年の課題をブレイクスルーできるかもしれない」(藤原氏)
松沼氏は「効果は体感するレベルで出ている。タウンワークやリクナビNEXTに掲載され(※3)、そこから採用が生まれるケースも増えており、採用企業からも喜びの声が聞かれる」と高く評価。自社でもIndeed PLUSを使った採用に成功していると言う。
「今後は正社員や専門スキルを持つ人材向けの求人サイトとの連携もぜひ強化してほしい。求人サイトにとっても新たな顧客獲得の機会になるのでは」(松沼氏)
陳氏は「母集団形成という課題の多い領域に対して、これまでATSとしては施策を打ちづらかった」と振り返る。
「Indeed PLUSという新たな武器ができたことで、コンサルティングできる範囲が広がり、お客様(採用企業)への価値提供の幅が大きく拡がった。ATSのサポートや営業担当も顧客に対して提案の幅が広がり、エンゲージメントが向上した。究極的にはアメリカなど他国におけるIndeedの成功例のように、母集団形成がIndeed PLUSに集約される世界が来ることを期待したい。求職者が仕事を見つけられ、企業も満足する、最も効率的で美しい形になるはずだ」(陳氏)
(※3)Indeed PLUS 連携求人サイトは随時追加予定です。掲載対象となる連携求人サイトの種類や掲載可能時期は変更の可能性があります。主なIndeed PLUS連携求人サイト一覧はこちらをご参照ください。
Indeed PLUS連携パートナー各社からの提言を受けたIndeedのサトウは、今後の取り組みについてこう語った。
「本日はたくさんの気づきがあった。企業規模や雇用形態は異なれど、共通する基盤が必ず存在する。まずはその基盤を完璧に整えていくことに注力する。その実現後には、マッチング精度向上のために進化を続け、日本の採用市場の変革に向け尽力する所存である。引き続きお力添えをお願いしたい」(サトウ)
この一年の成果と課題を振り返ったパネルディスカッションは、Indeed PLUSの可能性を再確認するとともに、IndeedとIndeed PLUS連携ATS・連携求人サイトの協業が求職者にとってより多くの選択肢と機会を提供し、採用企業にとってもより効率的な採用活動を可能にする、双方にとってより良い未来の採用市場を切り拓いていくことを予感させる場となった。