サクセッションプランとは? 中小企業の後継者問題を解決する

By Indeed

近年、注目を集めているサクセッションプランは、組織上重要なポジションの後継者を早い段階から育成する計画のことです。サクセッションプランはどんな企業に必要なのでしょうか。また、導入の際の手順や注意点などについて、Fフロンティア株式会社・代表取締役の深瀬勝範さんに伺いました。

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サクセッションプラン(後継者管理)とは

「サクセッションプラン」とは、企業が組織上重要なポジションの後継者候補をあらかじめ選定し、育成していくことです。日本語では「後継者育成計画」といいます。

基本的に、後継者選びが必要とされるのは「経営トップ(社長)」です。これまでは次期社長の候補対象となるのは「役員クラス(取締役以上)」が中心でしたが、最近では役員よりも前のポストである部長クラスをサクセッションプランの対象者とする企業も出てきています。経営に必要な知識・能力を習得するためには、できるだけ早い段階から特別な研修を行い、経験を積ませることが望ましいという考えからです。

サクセッションプランが必要な理由

サクセッションプランの目的は、主に次の3点です。

◆1.計画的なトップの育成

後継者候補に対して経営に必要な研修を実施したり、様々な経験を積ませたりして、経営トップを計画的に育成する。

◆2.円滑な経営トップの交代

後継者候補をあらかじめ決めておくことにより、経営トップの交代を円滑に行い、経営が混乱することを防ぐ。

◆3.関係者との信頼構築

経営トップの選出を公正かつ透明性をもって行うことにより、投資家をはじめ社内外関係者の信頼を得ることができる。

つまり、サクセッションプランを実施することで、安定した企業経営が可能になります。

上場企業のサクセッションプラン導入は必須

上場企業の企業統治の原則を示す基準に、「コーポレートガバナンス・コード」(2021年4月改訂)があります。金融庁と東京証券取引所が共同策定したものですが、この中にサクセッションプランについて次のように定めています。

「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである」(原則4-1③.取締役会の役割・責務(1))

開示するか否かは企業の任意ですが、企業価値や投資の呼び込みなどの向上を図るためにも、また最近話題になっている「人的資本の情報開示」の観点からも、上場企業はサクセッションプランに関する情報を積極的に開示するべきと考えられています。

中小企業の永続的な経営の安定にも貢献

株式を上場していない中小企業においても、次の理由からサクセッションプランは必要といえるでしょう。

◆1.従業員や取引先の不安を払拭できる

事業を円滑に進めるためには、企業で働く従業員や取引先に不安を与えないことが何よりも重要です。サクセッションプランを示すことで、「社長に万が一のことがあったとしてもこの会社は大丈夫」と安心感を与える材料になります。

◆2.後継者問題を解決し安定した企業継続が図れる

中小企業の多くは人材不足に陥りがちです。かつ役員を含め従業員全員が目の前の仕事に集中せざるを得ない状況にあります。社長交代が現実味を帯びてきてはじめて、後継者問題に直面する中小企業も少なくありません。その結果、候補者がおらず廃業に追い込まれることもあります。サクセションプランを実施し、次代を担う経営者を計画的に育成することで、安定した企業経営の継続が可能になります。

サクセッションプランを導入する際の手順

サクセッションプランは、以下の手順で進めます。

◆1.後継者を必要とするポストを定める

経営戦略やビジョンを明確にし、それを実現するためにはどのポストの後継者を育成する必要があるのか決定する。一般的には、経営トップ、およびそれに近い役職。

◆2.必要な人材の資質、知識、能力の洗い出しと教育プログラムの作成

「次代を担う経営者の在り方・望ましい人物像」を明確に定める。必要な資質、知識、能力を洗い出すと同時に、その知識・能力を習得する上で必要な教育プログラムおよび経験するべき職務を検討する。

◆3.対象者を選定する

従業員の中から2にのっとった対象者の選定を行う。2を明確にしていないと、適切な選定ができないので注意する。

◆4.サクセションプランの実施および内外に公表

サクセッションプランに沿って、後継者の育成を進める。必要に応じて、進捗状況を社内外に公表する。

サクセッションプランを実施する際の注意

サクセッションプランを実施する上で、特に気をつけるべきことが2つあります。これらをしっかりと考慮しないと経営に大きなダメージをもたらすことになるので注意しましょう。

◆1. 複数の対象者を選定する

候補者は複数人選定しておきましょう。1つのポストにつき常時、2~3名の候補者がいるのが理想です。複数いることで競争心理が働き経営者教育を効果的に進めることができます。また、「人選が適切ではなかった」「候補者が退職した」という場合でもすぐに対処できます。

◆2. サクセッションプランから外れた従業員のフォロー

サクセッションプランによって、次代を担う経営トップの候補者を社内外に示すことになります。対象から外れた従業員は、その時点で「経営トップにはなれない」と企業から通告されたような印象を受けてしまうかもしれません。結果、モチベーションを低下させたり、退職したりすることも考えられます。これらの従業員のモチベーションを維持する工夫が大切です。以下の点に留意しましょう。

1)人事担当役員が定期的に従業員と面談し、今後のキャリアについて話し合う。
2)本人が退職を望む場合は、無理に引き止めずに早期退職の優遇措置などを講じて円満退社になるようにする。
3)候補者だった従業員を途中で適性外と判断するケースもある。そういった際の受け皿として関係会社の役員など別のポストを用意しておく。

◆3. サクセッションプランに沿って実施

サクセッションプランを策定した以上は、それに基づいて公正かつ的確に経営トップの選定、育成を行っていかなければなりません。サクセッションプランを策定したにもかかわらず、それとはまったく異なる基準で候補者選びが行われたり、教育が的確に実施されていなかったりすると、投資家や従業員の不信感につながってしまいます。

早い段階からの育成が重要

経営トップを担うために必要な知識・技術の習得および職務経験の蓄積は、一定の年月がかかります。サクセッションプランは、長期的な計画(最短で5年、一般的には10年程度の実施事項を整理したもの)として策定される必要があります。

経営に必要な知識・能力を習得するためにも、できるだけ早い段階から特別な研修を行い、経験を積ませることが、より安定した経営基盤につながるといえるでしょう。




※記事内で取り上げた法令は2022年11月時点のものです。

<取材先>
Fフロンティア株式会社 代表取締役 深瀬勝範さん

一橋大学社会学部卒業。大手電機メーカーの人事部員、金融関係シンクタンクの研究員、上場企業の人事部長などを経て、2013年にFフロンティア株式会社を設立。人事制度の設計、事業計画策定などのコンサルティング業と並行して、執筆・公演活動も積極的に行なっている。

TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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