従業員同士が職場結婚したら? 適切な人事部の対応とは

職場で仲良く話す男女のイメージ

従業員同士が結婚した場合、人事・労務担当者にはどのような対応が求められるでしょうか。氏名や住所変更などの基本的な手続き、従業員同士の結婚だからこそ配慮が必要な注意点について社会保険労務士法人出口事務所代表の出口裕美さんにお話を聞きました。

 
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結婚に伴う確認項目をまとめておこう

――従業員同士が職場結婚をした場合に、必要な手続きを教えてください。
 
これは従業員の結婚相手が社外の場合も同様ですが、まず確認しなければならないのは以下の5項目になります。

 

  1. 入籍日
  2. 姓が変わるのかどうか
  3. 配偶者が被扶養者になるかどうか
  4. 住所変更の有無
  5. 働き方の変更の有無

これらを確認した上で、上記3については配偶者が被扶養者になるのか、または扶養に入る子どもや親がいるのかを確認する必要があります。上記4については住所変更に伴って通勤経路が変わる場合、通勤手当を変更する必要があります。上記の5項目に加え、変更点に紐付いて変わる事柄も確認しましょう。
これらを確認する際に注意が必要なのは、昔の常識とは違っているという点です。昔であれば女性従業員の姓が変わるのが一般的でしたが、今はそうとは限らないので男女どちらの姓が変わるのかを確かめなければなりません。また、男性、女性のどちらが扶養に入るかはケースバイケースです。固定観念にとらわれず一つ一つ確認することが大切です。
 
こうした確認事項について、当社ではワークフローシステムで、結婚した場合に必要な氏名変更届、扶養変更届、住所変更届などの項目を入れたひな形を作り、それぞれに「有」または「無」に印を付けるようにしています。このように必要な項目をまとめておくと確認・変更漏れがなくなります。
 
――社会保険や雇用保険などの各種届け出についてはいかがですか?
 
社会保険(健康保険、厚生年金保険)については、氏名や住所の変更がある場合に届出が必要でしたが、マイナンバーと基礎年金番号が紐付いていれば自動的に変更されるので届出は必要ありません。もし、まだマイナンバーと基礎年金番号が紐付いていない人がいる場合は氏名や住所変更の手続きが必要です。雇用保険についても、氏名変更がある場合に「雇用保険被保険者氏名変更届」を所管のハローワークに届け出る必要がありましたが、2020年からは資格喪失届や転勤届などの申請手続きのときに提出すればよいことになっています。
 
――その他、必要な変更手続きはありますか?
 
従業員の氏名や住所に変更があった場合は、労働基準法で保管が義務付けられている労働者名簿の変更や賃金台帳、出勤簿の法定三帳簿をはじめ、緊急連絡先など様々な名簿類についても内容を確認の上、変更しておきましょう。
 
また、姓が変わる場合でも、職場では旧姓を利用するケースもあるので一緒に確認しておくことも大切です。合わせて、結婚を社内に通知してよいかどうかも確認しておきましょう。
 
結婚する従業員が独身寮に入っている場合には、寮の規定に従って退居の手続きを進めます。家族向けの社宅などがある場合は、そちらに入居するのかも確認しましょう。
 
手続きのなかで、注意が必要なのは家族手当です。家族手当は企業が独自に定めるものですので、手当の有無や内容等は企業によって異なるものです。所得税の扶養にリンクして家族手当を支払うというルールになっている企業の場合は、同じ会社の社員同士が結婚して被扶養者の手当が出る場合、世帯主または収入が多い従業員1人に支払われますが、扶養の定義が曖昧だと従業員2人ともに家族手当が付いてしまうケースもあるので注意が必要です。

 
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結婚した2人が同じ部署でも異動が必要とは限らない

――従業員同士の結婚だからこそ、特に注意や配慮が必要なことはありますか?
 
昔は「寿退社」という言葉があったくらいで、結婚を理由に退職する女性も多かったのですが、今はそういう時代ではなくなり2人とも仕事を続けるケースが増えました。職場結婚となると、夫婦で同じ部署だったときはどちらかが異動しなければならないと考える企業もあるかもしれませんが、必ずしも異動が必要なわけではありません。昔は、結婚したら女性側が退職したり、異動したりすることが多かったようですが、今は男女雇用機会均等法、さらにそれを進めるための女性活躍推進法が制定されるなど男女格差の是正が進んでいます。こうした観点からも理由なく一方を異動させるべきではありません。
 
――逆に言えば、業務に支障が出てしまうなどきちんとした理由がある場合は、夫婦のどちらかが異動することもあるということですね?
 
そうですね。結婚に至る前の交際が始まった場合でも、周囲の従業員が仕事をしにくいなど何らかの支障が生じている場合は、どちらかが異動するケースもないわけではありません。人事権は会社側にあるため、従業員は基本的に異動命令には従わなければなりませんが、トラブルの原因になり得るので、その場合は明確な理由を説明しましょう。さらに、今は仕事内容を限定した上で採用するジョブ型雇用のスタイルが広がりつつあります。その場合は、部署や職務内容と雇用の規定が結び付いていることから、従業員同士で結婚したからといって異動させるべきではないでしょう。
 
――結婚の報告やお祝い金についてはいかがですか?
 
結婚はプライバシーに関わることなので公にしたくない従業員もいて、会社側から「AさんとBさんが結婚しました」と披露するのが当たり前ではなくなってきています。もし発表する場合は、従業員本人から話してもらって、みんなで祝福できたらそれが一番良いのではないかと考えます。
 
また、企業からお祝い金が出る場合も多いと思いますが、金額など細かなルールを規定していない企業もあります。金額をどうするのか、従業員同士の場合は2人それぞれに出すのか、または一括して贈るのかなどルールを明記しておけるとよりよいでしょう。お祝い金については、同一労働同一賃金の考え方が浸透するなか、対象者が正社員の場合、非正規社員の場合、それぞれにどういった金額で対応するかということも問題になりがちなので細かなルールですが定めておくとよいでしょう。

 

※記事内で取り上げた法令は2022年10月時点のものです。
 
<取材先>
社会保険労務事務所 代表 出口裕美さん
企業のパートナーとして、人事労務のあらゆる業務をサポートしている。全国社会保険労務士会連合会の代議員や東京都社会保険労務士会の常任理事も務める。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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