欠勤控除の正しい計算方法は? 基礎知識を解説

時計とタイムカードのイメージ

欠勤した分を賃金から控除する欠勤控除の計算方法や注意点など、その基礎知識を弁護士法人浅野法律事務所の鯵坂和浩さんにお聞きしました。

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欠勤控除とは?

欠勤控除とは、支払う予定だった給与から、従業員が労働しなかった賃金を差し引いて給与を支払うことです。終日休んだ場合や、遅刻や早退などで予定していた時間分を働けなかった場合も欠勤控除の対象になります。

 
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欠勤控除の考え方の背景

労働基準法では「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(第24条)と定められています。企業は労働の対価として労働者に賃金を支払います。
 
一方で、民法624条では「労働者は、その約した労務の提供が終わった後でなければ、 報酬を請求することができない」という定めがあります。欠勤控除の考え方の背景には、この民法624条を根拠とした「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。これは「労務者が働いていない場合、使用者はその部分についての賃金を支払う義務はない」という概念です。
 
この原則に基づき、労働者側の要因で遅刻や早退、欠勤をした場合は、事業主は労働しなかった分の賃金を支払う必要はありません。

 

欠勤控除を適用しないケース

 

◆有給休暇を取得した場合

有給休暇を使って、通常の出勤日に休みを取った場合は欠勤控除の対象になりません。企業は就業規則などに基づき、所定の金額を賃金として支払います。

 

◆会社都合により休業した場合

会社都合で出勤日だった日を休業とした場合は、欠勤控除の対象になりません。会社側は平均賃金の60%以上の金額を「休業手当」として支払う必要があります。ただし、自然災害など企業にとって不可抗力による休業の場合は、賃金を支払う必要はありません。

 
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欠勤控除の計算方法

欠勤方法の計算方法は法律では定められていませんが、一般的に企業で用いられている計算方法を紹介します。

 

◆欠勤時の計算方法

下記は月給制の例です。フレックス制などの勤務形態や、時間給など給与形態によって欠勤控除の処理方法は異なります。
 
【計算方法】
欠勤控除の対象とする月の給与額÷月の所定労働日数×欠勤した日数=欠勤控除額
 
月の所定労働時間については、月ごとの変動をなくすため、1年間の総労働日数を12カ月で割った「1カ月平均労働日数」を月の所定労働時間にしている企業が多いようです。1年間の月平均所定労働時間数は、以下の方法で算出します。
 
【1年間の月平均所定労働時間数の計算方法】
(365-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12=月の所定労働日数

 

◆遅刻や早退時の計算方法

欠勤していない時間分までも控除してしまうと、労働基準法に違反する恐れがあります。遅刻や早退時間の賃金控除は、1分単位で控除する必要があります。また、同じ理由から小数点以下の端数は切り捨てます。
 
【計算方法】
遅刻・早退控除の対象とする月の給与額÷1年間の月の所定労働時間数×遅刻や早退の時間(欠勤時間数)

 

欠勤控除の注意点

 

◆計算方法

欠勤控除の計算方法は就業規則に記載し、計算に間違いや不正がないか従業員が確認できるようにしておきましょう。

 

◆諸手当の取り扱い方

多くの企業では、月給に「通勤手当」「家族手当」「住宅手当」などの諸手当が上乗せされて支給されています。どの手当を欠勤控除の対象とするのか事前に決めておき、就業規則に明記する必要があります。次の考えを採用している企業が一般的です。
 
【欠勤控除の対象になる手当の一例】
実際に出勤し、業務を行う前提として支給するもの

  • 役職手当
  • 営業手当


【欠勤控除の対象外となる手当の一例】
直接労働に関わりのないもの

 

◆休暇制度

法定休暇以外の特別休暇については法律の定めがなく、各企業で休暇制度を定めています。企業は有給とするのか無給とするのか、事前申請の有無など、諸条件を明確に就業規則に定める必要があります。
 
特別休暇を無給とする場合は、休んだ日数が欠勤控除の対象となります。

 

◆減給

欠勤したことに対してのペナルティとして減給を課す場合は、就業規則に懲戒処分として定め、かつ減給総額を月給の10%以下とする必要があります。就業規則に定めがないのに減給を行ったり、定めていても月給の10%以上を減給したりした場合は、働かなかった時間分以上を控除することになるため、法違反となります。
 
欠勤控除は法律上の規定がないため、就業規則への規定がなかったり、運用があいまいだったりするとトラブルに発展しやすくなります。各企業で就業規則に明記しておくことが必要です。
 
また、就業規則は従業員が理解できるよう周知し、事前にトラブルを回避することも重要です。計算間違いなどにも注意しましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年2月時点のものです。
 
<取材先>
弁護士法人浅野法律事務所 弁護士 鯵坂和浩さん
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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