ICTツールとは何か
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、情報のコミュニケーションの技術を指します。仕事中に限らず、日頃からプライベートでも多くの方々が利用するYouTubeなどの動画共有サイト、メールツール、さらにはGoogleカレンダーなどのスケジュール管理ツールも、すべてについてICTツールと言えます。
数あるツールの中でも、下記のようなものが人事に関連します。
◆人事に関する主なICTツール
- 採用を管理するシステム(スケジュール、応募など採用管理全般)
- Zoomなどのオンライン会議システム
- 人事評価・人員配置に関するタレントマネジメントシステム
- 勤怠管理システム
- 経理・給与計算システム
- 従業員のモチベーションを管理するシステム(パルスサーベイ)
- SlackやChatworkなどのテキストチャットシステム
ICTツールの利用で人事業務も効率化
人事がICTツールを使うことで、これまで、どのようなメリットが生まれてきたのでしょうか。私が人事支援を行う中で、ICTツールの登場によって、次のような効果がありました。
◆ICTツールが人事にもたらした改革
・人材採用の場合
ICTツールを有効に使うことで、求人サイトから応募があったものをワンストップで管理することができるようになりました。面接官がツールから評価を打ち込んだり、次回の面接日程なども一括で管理したりできます。その結果、情報の分散やタイムラグによるミスが起こりづらくなり、業務効率は劇的にアップしました。スピーディーかつ正確で、さらに割くべき人員も抑えることができるので、採用にかかる人員の予算も縮小させることができました。
・人事評価・管理の場合
ICTツール導入前の人事評価・管理は、負担の大きい業務でした。何千人もいる企業で、そのひとりひとりの評価情報を集計し、バランスを考えて配置先を決定するなどの業務を手作業で行うとなれば大変なことだったのです。しかし、ICTツールで評価システムが導入されたことで、これまで負担となっていた作業の多くが自動化され、手を動かす必要がなくなりました。
◆余った時間とパワーで早期の課題克服へ
このようにICTツールを利用して業務を効率化することで、人事部署のパワーや工数に余裕が生まれ、他の作業やこれまで手が回らなかった分野にも着手することができるようになりました。たとえば、ICTツールを使い、労働時間が過多になっていないかリアルタイムでチェックすることも可能です。問題を早く見つけることが出来るため、早期の課題克服にもつながります。
ICTツールを導入する際の注意点
便利なICTツールですが、導入する際に注意すべきポイントがあります。それは、業務プロセスとICTツールがマッチしているかどうか、です。
会社にはそれぞれ独自の方法や文化があります。ICTツールではカバーできないような業務を進める方法が確立されているケースをのぞき、会社独自のシステムを変更したくないからといって、ICTツールを強引にカスタマイズして、無理にこれまでの業務プロセスに合わせてしまうと、せっかくの業務改善の機会を失うことになります。
ICTツールは、多くの事例から導き出した最善策となっているサービスも多いので、ツールを使った作業工程を導入することでより効率化が図れないか、導入前に検討した方が良いでしょう。
ICTツール導入を、業務見直しのきっかけに
効率を目指したのに、ICTツール導入で、プロセスが複雑になってしまっては、本末転倒です。そういった事態を回避するためには、導入する際にもう一度、これまでの作業工程に問題がないのかを検討する必要があります。ICTツール導入はあらためて会社の問題点を点検するきっかけになるでしょう。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:大久保太郎
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト
