定額残業代制のメリットは?導入する際の注意点

残業をしている男性のイメージ

「定額残業代制にすれば残業代の負担を今より減らせるはず」と考える企業は少なくありませんが、本当にそうでしょうか?
 
定額残業代はあらかじめ一定の割増賃金を、毎月定額で固定して支給する制度です。一見するとシンプルな制度に見えますが、実際はどのようなメリットやデメリット、リスクがあるのでしょうか。
 
小林労務 大阪オフィス所長で社会保険労務士の小松容己さんに、定額残業代制について最低限押さえておくべき基礎知識について伺いました。

 

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定額残業代制とは

定額残業代制とは、あらかじめ一定の時間外労働や休日労働、深夜労働を想定し、その一定時間分に対する割増賃金を毎月定額で支給する制度です。
 
定額残業代制は「固定残業代制」とも呼ばれており、実際の時間外労働の有無や時間の長短に関係なく、「月●円分の残業代が毎月支払われる」といった形であらかじめ定められた一定の金額が労働者に支払われる制度です。
 
定額残業代は基本給の中に組み込まれる形と、「定額残業代●万円」のように基本給とは別に手当として支払われる形の2種類があります。

 
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定額残業代制のメリット

定額残業代制が導入され、正しく運用された場合は企業と労働者には次のようなメリットがもたらされます。

  • 残業代が毎月定額で支給されるため、時間外労働の抑制、業務効率向上につながる
  • 労働者の生産性向上につながる
  • 残業代の変動が少なくなるため、企業側は毎月計上される人件費が把握しやすくなる
  • 年間の収支予算が立てやすくなる


残業代が定額で支給されるようになると、労働者側には残業時間をダラダラと伸ばすメリットがなくなります。それによって「一定以上の残業代が出ないのだから効率よく労働しよう」という意識が高まり、時間外労働が抑制され、生産性の向上が見込まれるでしょう。組織としての成長にもつながります。また、残業代の計算が一律になるため、給与計算が簡略化されて管理コストも下がるでしょう。

 

定額残業代制のデメリット

一方で、定額残業代制は不適切に運用されると、次のようなデメリットを招く恐れもあります。 

  • 定額残業分を超えた時間外労働等を行った労働者に企業側が超過分を支給しない
  • 労使トラブルに発展するリスクがある


定額残業代の上限については企業の裁量次第ですが、36協定を締結している場合でも、月の残業時間の上限は45時間とされています。したがって、固定残業代は45時間分と設定するとされています。それを超過した場合は、定額残業代とは別に必ず残業手当を支払うべき義務が企業側にはあることを理解しておきましょう。追加の残業代が支給されない場合は、労働基準法上違反にあたります。
 
また、「残業代は定額で払っているのだからいくらでも社員を残業させていい」「無制限に働かせ放題だ」という誤った認識を持ち、過剰な量の業務を指示したりプレッシャーをかけたりする上司も残念ながら珍しくありません。

 
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定額残業代を導入するときの注意点

定額残業代制を導入する際の最大のポイントは、「残業代がどのような形で支払われるのか」を社員にしっかりと説明して理解を促し、書面で合意を取ることです。
 
具体的に、企業側は就業規則や賃金規程等に「通常支給されるべき賃金額」と、「時間外労働の対価として支給されるべき賃金額」とを明確に分けて明記します。固定残業代が残業何時間分に相当するかなども、企業のルールとして明確に導入前に設定してください。
 
繰り返しますが実際の時間外労働に対する割増賃金よりも、定額残業代のほうが少なくなった場合、企業側はその差額を支払う義務があります。未払いから裁判に発展した場合は、企業側は高額の残業代を請求されるリスクもはらんでいます。残業代の未払いによる裁判が起きれば、企業イメージも損なわれます。
 
固定残業代制の導入を検討している企業は、自社の労働環境や業界の仕組みと相性がいいかを慎重に確かめた上で検討してください。

 

<取材先>
社会保険労務士法人 小林労務 大阪オフィス パートナー社会保険労務士
小松容己さん
 
東京都出身。明治大学経営学部卒業。2016年に株式会社小林労務に入社し、20年に「社会保険労務士」登録。22年3月、大阪オフィスの所長に就任。社会保険や労働保険手続き、給与計算実務、就業規則の作成・精査をはじめ、雇い主と従業員間のトラブル対応やセミナー講師等、多数実績あり。
 
TEXT:阿部花恵
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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