一次面接から社長が対応するメリット
選考の初期段階である一次面接から社長が担当するメリットとして、まず会社としての意思決定が迅速に運ぶという点が挙げられます。言い換えれば、トップが下した候補者に対する評価が、その後の面接過程で大きく変わることは少なく、採用がスムーズに進められるのです。
また、社長と候補者が早い段階で直接対話することにより、会社のビジョンや経営方針、事業内容をより正確に伝えられるのもメリットのひとつでしょう。候補者側の会社に対する理解が深まることで、結果的に社風や業務内容に適した人材をスムーズに獲得しやすくなります。
これは候補者にとってもメリットと言えます。面接まで辿り着いた会社が理想の職場なのか、そこに求める仕事があるのか、経営者の方針に共感できるかどうかを早いうちに判断できることは、入社意欲の醸成にもつながるでしょう。逆に、経営者のビジョンにギャップを感じる候補者が早い段階で離脱することは、採用プロセスの効率化に通じるとも言えます。
一次面接から社長が対応するデメリット
それに対し、一次面接から社長が担当することにデメリットがあるとすれば、選考がワンマンに陥りがちなことでしょう。初回の面接で社長が下した評価と反対の評価を主張できる社員がいなければ、選考基準が偏ってしまうリスクがあります。
また一例として、社長自らが未来の従業員候補を前に、延々と自身の考えや経営理念を語るようなことがあると、候補者が興ざめしてしまう可能性もあります。候補者の側にしてみれば、直接選考に関係のない話に長い時間を割かれることは、入社意欲の減退につながりかねません。
一次面接から積極的に関わろうとする経営者は、採用活動に多大な関心を持っているケースが多く、つい演説めいた持論を打ってしまうのは往々にしてありがちなことです。候補者にも、面接の場で会社側に聞きたいこと、確認したいことがあるという前提を心得ておくべきでしょう。
一次から社長面接を行うのに適した企業とは
面接は本来、一次や二次と最終では役割が異なるものです。具体的には、一次面接や二次面接では業務の遂行能力や人柄を確認する意味合いが大きく、そこでふるいにかけられた人材が自社の社風や経営理念に合っているかどうかを、最終面接でトップが判断するのがオーソドックスな流れです。
とはいえ、社長が一次面接から担当するのは、決して悪いことではありません。そもそも採用に人手を割けない零細企業やスタートアップ企業では、社長が自ら面接を行うのは珍しいことではないでしょう。前述のようにメリットも多く、むしろ採用コストの削減という意味では効率的といえます。また、募集しているのが社長秘書を務める人材、あるいは社長直下のプロジェクトに加わる人材である場合などは、早い段階から社長自身が選考に参加したほうが、的確な選考が行えます。
ただし、面接には専門スキルが必要であることを忘れてはいけません。限られた時間、限られた材料をもとに、相対する候補者の能力や人間性を見極めるには、相応のチェック能力が不可欠です。
社長自らが一次面接を担当するのであれば、面接のポイントや採用活動のトレンドをしっかりと押さえておくべきでしょう。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト