現役採用人事の本棚 私の3冊(第8回:オトバンク)


現役の採用人事担当者が業務のスキルや心構えを培うおすすめ本3冊を紹介する、連載「現役採用人事の本棚 私の3冊」。今回登場するのは、株式会社オトバンクの採用人事担当である齊藤さんです。日本語オーディオブックのリーディングカンパニーである同社の齊藤さんは、どんな本を紹介してくれるでしょうか。

 
 

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第8回 株式会社オトバンク 齊藤さん

 

【プロフィール】
採用人事の業務歴:2年目
担当業務:中途採用全般、新卒採用・カジュアル面談の一部
 
2020年6月に入社。日本語オーディオブックのリーディングカンパニーであるオトバンクで、中途採用担当者として、採用プロセスの設計フォロー、候補者へのアプローチ、面接アテンド、オファーの一連の流れを受け持っています。最近は新卒採用やカジュアル面談も担当。そのほか、採用業務に並行して人事・労務・総務分野の業務も行っています。

 
 

採用人事の担当者におすすめしたい3冊は?

 
 

◆『図解 人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ』

(坪谷邦生著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 
採用に関する知識レベルを、一気に引き上げてくれる一冊です。
 
私はもともと人事畑を歩んできたわけではなく、カウンター販売職、店舗の副店長、営業所の1人事務をトータルで約8年間経験し、現職に至りました。採用業務を始めたばかりの頃、知識の無さやマインドセットが出来ていないことを痛感し、SNSでおすすめされていたのをきっかけに読み始めたのがこの本です。
 
物事を学ぶとき、まずは全体像を知らなければ捗らないことが多いと思います。本書は人材マネジメントについての入門書として、人事の基礎をゼロから体系的に知ることができ、視野を広げてくれます。
 
「人事評価」「採用」「人材育成」などの章ごとに特徴的な企業がそれぞれ4社ずつピックアップされ、2軸・4象限のマトリクスで図解されています。わかりやすい解説が添えられており、採用初心者にとって非常に理解しやすいのが特徴です。
 
マトリクスは、横軸が「ベンチャー・中小企業/グローバル・大手企業」、縦軸が「長期・育成/流動・排出」になっています。特に縦軸の捉え方は特に参考になりました。自社がマトリクス上のどのあたりに位置しているかを近しい企業に照らしながら考えることで、短期的・長期的な目線を意識できます。
 
また、人事というポジションで社員とどう向き合うべきかという基本的なマインドセットも学べます。これから人事をスタートされる方や始めたばかりの方にぜひおすすめしたいです。

 
 

◆『ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える』

(ラズロ・ボック著/鬼澤忍、矢羽野薫訳/東洋経済新報社)
 
「Googleの人事トップが、採用、育成、評価のすべてを初めて語った」と言われている本です。人事に関する本の筆頭として、これまでも様々な媒体で何度も紹介されていますが、私が手にしたきっかけは当時の上司がタイトルを口にしたことでした。弊社のオーディオブックでも聞いています。
 
Googleの採用の骨組みや、一見すると非常に良さそうに思うアワードが失敗に終わった実例、評価制度の試行錯誤、福利厚生プログラム、ナレッジに至るまで、施策と決断のプロセスが具体的に書かれています。
 
実は、最初に読んだときは何が書かれているかほとんど理解できませんでした。というのも、本書は非常に有益な内容なのですが、当時の私は、その思考の入口にすら到達していなかったのです。まずは「思ったより長い」という怒られそうな感想しか出てきませんでした。実際に560ページもあると知ったのも後日の話です。
 
しかし、わからずとも一度ざっくりと読んでおいたことで、業務で壁にあたったときに「この本にヒントが載っていた」と思い返しては読み直すようになりました。特に、成功体験のみならず、失敗やその原因についてしっかり書かれているのが良い点です。私の人事としての教科書の一つとなっています。

 
 

◆『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』

(安宅和人著/英治出版 )
 
採用業務のほか、人事・労務・総務など幅広い分野を担当している私のポジションでは、与えられるままに業務をこなすだけでは無限に時間を要します。業務効率化にあたり、この本を読んでいるかどうかで結果に雲泥の差があるように思います。
 
特に印象的な言葉は「犬の道」です。「犬の道」とは、課題の質や重要度を考慮せずに、大きな労働量を投じてしまうことです。本書では、「一心不乱に大量の仕事をすることで、バリューを上げようとしてもムダ」と明確に書かれています。
 
「イシュー度(課題の質)」が低ければ、どれだけ「解の質」を高めても意味がないということです。「犬の道」を避けるには、経験が必要であることや、上司や有識者に聞くことの大切さが説かれています。仕事に対する“丁寧さ”とは、あくまでも”補完する要素に過ぎない”と著者は述べます。
 
以前、従事していた販売職では、“丁寧さ”は、業務の正確さと横並びで当然に求められるものと捉えていた私にとって、これは非常に新鮮に感じたフレーズです。本書のおかげで、採用をはじめとするさまざまな仕事に対し、イシュー度を意識するようになりました。オーディオブックで聞き返すこともあります。
 
もしかしたら諸先輩方にとっては、私はまだまだ「犬の道」の真っ只中かもしれません。だからこそ、手元の作業をスタートする前には、必ず本書を意識するようにしています。

 
 

オンラインで新たな取り組みにチャレンジしたい人事担当者にアドバイス


当社ではコロナ禍以前より、「満員電車禁止令」や「全社員リモートワーク」といったユニークな制度を取り入れ、運用してきました。
 
さらに2021年度は、新卒社員と人事が中心となり、リモート環境下で入社したメンバーを主役に、オンライン上で交流するイベント企画・実行を行っています。既存メンバーとのつながりを作ることを目的に、業務の円滑化、互いの状況を把握しやすい環境づくりを目指しています。社内では好評で、現在は定期的に開催するようになりました。
 
弊社では、面接から入社までの選考過程が完全にオンラインで進む場合もあります。私は入社アテンド担当として、社内の中でも入社前の方とやり取りが多いポジションです。そのため、オンライン環境であっても業務開始までの期間に内定者が不安にならないよう、スムーズなフォローを心がけ、一人ひとりに責任感と親しみをもって接しています。
 
新入社員とは、入社後も人事担当者として関わりが続きます。イベントや日常の場面で気軽な雑談の機会があると、オンライン環境でも距離の近さを感じられ、嬉しくなりますね。
 
近年では代表自らがポッドキャストや社内向けライブ配信などを行い、視聴メンバー同士での交流が生まれています。
 
新入社員から代表までさまざまなメンバーと共に力を合わせ、周囲を巻き込みながら、オンライン環境下でも社内にポジティブな交流のきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。

 
 
 

<取材先>
株式会社オトバンク 齊藤さん
 
TEXT:遠藤光太
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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