採用選考時のオンライン社員面談 応募者とのコミュニケーション術を解説

オンライン社員面談のイメージ


採用選考時に応募者と自社の社員が話す「社員面談」は、応募者の人柄や社員の雰囲気をお互いに確認する場です。コロナ禍でオンライン化が進み、対面よりも応募者との心理的距離を縮めにくいという課題があります。オンライン環境でも応募者に心を開いてもらうにはどうすればよいか、「オンラインコミュニケーション35の魔法」著者で企業の人材育成に携わる片桐あいさんに伺いました。

 
 

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オンライン環境で心理的距離を縮めにくい理由


――オンライン面談が、対面よりも心理的距離を縮めにくいのはなぜですか。
 
得られる非言語情報が、対面と比較して限定的だからです。私たちはコミュニケーションを取るときに、言葉だけでなく非言語情報も含めてキャッチすることで、気持ちや意図を共有しています。

 

コミュニケーションにおける氷山モデルの図コミュニケーションにおける氷山モデルの図(画像提供:片桐あいさん)


この「氷山モデル」が示すように、水面上に見えている「言葉」や「非言語情報(表情や身振り手振り、声のトーン、服装など)」は、コミュニケーションの初期段階で相手と共有することができます。しかし、心理的距離を縮めるために必要な、「気持ち」や「意図」は水面下に隠れているのです。
 
通常、コミュニケーションが進み「言葉」や「非言語情報」の共有が深まることで、この水面が段々と下がり、水面下に隠れていた「気持ち」や「意図」も共有できるようになります。
 
しかしオンライン面談では、画面に映るのは胸から上のみで、得られる「非言語情報」がとても少ない。その分水面の高さが対面よりもグッと上がり、「気持ち」や「意図」を知ることがますます難しくなるので、「オンラインでは心理的距離を縮めにくい」という課題が生まれるのです。
 
また、対面の選考では、応募者が来社してから退社するまでに雑談のタイミングがあります。しかし、オンライン面談では単刀直入に質問をしてしまうことも多いようです。応募者が心を開く準備ができていないうちに質問をすると、威圧的な態度だと受け取られてしまうこともあります。
 
オンライン面談では「得られる情報が対面と比較して限定的である」という前提にたって、応募者と心理的距離を縮めるために、コミュニケーションのやり方を工夫することが必要です。

 
 

緊張を解きほぐすために有効な、アイスブレイクのノウハウ


――「得られる情報が限定的である」というオンライン面談の特徴があるなか、応募者の緊張をほぐす方法はありますか。
 
オンライン面談でも、緊張をほぐすためのアイスブレイクはお互いの心理的距離を縮めるために有効な手段になります。
 
おすすめの話題は、お互いの共通点です。対面であれば、身につけているものや持ち物などの共通点を話題に出すことで、「私はあなたに興味を持っています」と意思表示ができます。オンライン面談ではお互いに顔しか見えないため、履歴書など事前に応募者から提供されている情報をもとに、共通点を探し、準備をしておくと当日慌てないでしょう。
 
また、相手からの発言のなかで出てきた話題を取り上げ、「私もこんなことがありましたよ」など、相手の話題に関連するような事例や経験を話すことでも、自然な言葉のキャッチボールが生まれ、会話の促進につながります。
 
――逆に、「なかなか会話が弾まないな」と感じるときは、どうしたらいいですか。
 
面談に参加している社員側が自己開示できていないのかもしれません。自ら進んで自己開示をすることで、応募者が「相手が心を開いてくれた」と感じ、話しやすくなります。応募者から「私もです!」と共感してもらえるコメントが発せられたら、お互いの心理的距離が縮んでいるとみなしてよいでしょう。

 
 

心を開いてもらうために企業側が気をつけること


――アイスブレイクで距離が縮まった後、面談に移ることになりますが、ここでより応募者との心の距離を縮めるために、企業の担当者が気をつけることはありますか。
 
最初に、社員面談の目的を応募者に話し、お互いに共通の認識を持って対話を始めましょう。採用面接と異なり、社員との面談は今後一緒に働くかもしれない人同士が相互理解を深めるための時間であることを冒頭に伝えれば、双方にとって有意義な時間になるはずです。
 
また、応募者の緊張をほぐすにはカメラの視線に気をつけましょう。企業の担当者がカメラをじっと見つめたままだと、応募者側の画面では目線で圧力をかけているように映ってしまいます。
 
できればカメラから目線を外し、画面に写っている応募者の顔を見ましょう。これにより、応募者が「見つめられている」と緊張するリスクを下げることができます。応募者のちょっとした表情の変化もチェックすることができるので、ぜひ実践していただきたいですね。
 
ただ、「この思いはしっかり伝えたい」という重要な発言をするときには、カメラをまっすぐ見ることで、本気度が伝わりやすくなります。このように、カメラへの目線は場面によって使い分けるとよいでしょう。もちろん、口角を上げることも忘れないでください。
 
――オンラインコミュニケーションでは顔しか映りませんが、表情のほかに相手に「共感をしている」気持ちを示す方法はありますか。
 
表情のほか、うなずきや相槌、拍手といったボディランゲージにも気をつけたいですね。対面での面談よりも大きなボディランゲージを意識すると、共感をしていることが相手にしっかり伝わります。自分が思っているよりも1.5倍のリアクションを取るとちょうどよいです。特に、マスクで表情が隠れてしまう場合は、より大きなボディランゲージを意識しましょう。
 
ここで注意すべき点は、相手の会話に「うん、うん」と相槌を打つことは必要ですが、声を頻繁に出していると相手の発言と重なり、会話を遮ってしまいます。応募者が話している間は声を出さず、頭を動かすだけにとどめたほうが、オンラインコミュニケーションは円滑に進みます。
 
カメラとの距離も意識してみましょう。相手が楽しそうに話しているときはカメラに少し顔を近づけると、前のめりになっている印象を与えることができ、「興味を持っていますよ」と意思表示をすることができます。
 
逆に、カメラから顔が遠すぎると「話に興味がない」と応募者に捉えられて、心理的距離が離れてしまう可能性があります。カメラとの距離がどのような印象を相手に与えるか、企業の担当者の皆さんで練習しあってみてはいかがでしょうか。

 
 

会社の存在意義や価値観に共感してもらうことで、会社の魅力を伝える


――社員面談の場で、会社の魅力を伝えるにはどうすればよいでしょうか。
 
自社の理念やミッション、行動指針といった、会社の存在意義や価値観につながる話題を話すとよいでしょう。たとえば、経営理念や行動指針に基づいた仕事の進め方、社員の行動の特徴といった話題です。
 
経営理念や行動指針を明文化していない企業の場合は、社名の由来や、普段経営者が発している言葉、行動などを話題に出すとよいですね。
 
――共感してもらえれば、入社意向の向上にもつながりそうですね。応募者に入社後のイメージを具体的に持ってもらうには、どのような話題が有効でしょうか。
 
実際の仕事で得られた経験やエピソードを話すと効果的です。このエピソードは、応募者のキャリアによって変化させるとよいでしょう。たとえば第2新卒の方の面談であれば、自分がその頃に任されたプロジェクトの話題ですね。キャリア採用枠の応募者なら、マネジメント面など、入社後求める役割に応じたエピソードを話すといいでしょう。
 
また、面談の中で「こういった困った事例があったのですが、あなたならどのように乗り越えますか?」と聞いてみることで、課題への対応力やストレス耐性を見ることができます。
 
人事担当者や面談に参加する社員同士で、この会社ならではの経験となるエピソードがないか、互いに棚卸しをしておくとスムーズです。開示してはいけない情報をうっかり開示してしまうリスクを事前に防ぐことにもつながります。
 
――オンラインコミュニケーションでは、対面と異なる点も多くありますが、話す内容は対面と大きく変わらないですね。
 
そのとおりです。対面とオンラインコミュニケーションでは「画面上から得られる非言語情報が限定的である」という違いがありますが、アイスブレイクをうまく使うことや、カメラに映る表情を工夫することで、心理的距離を縮めることができます。
 
これらを活用しスムーズなコミュニケーションがオンライン上でも取れるようになれば、会話の内容そのものは対面と大きく変わりません。
 
オンライン面談は遠方の応募者とも対話ができるという、オンラインだからこそのメリットもありますので、有効に活用していただきたいですね。

 
 
 

<取材先>
カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役・代表講師、産業カウンセラー 片桐あいさん
1992年大手システム会社に入社。コール・センター業務・リーダー職を経て、業務改善プロジェクト・マネージャとして、日本のみならず海外のメンバーとも連携し、様々な企業の課題を解決。その際、手法として「シックス・シグマ」を取り入れる。2002年以降は、社内の人材育成部署を立ち上げ、エンジニアの成長に貢献し延べ1000人の人材育成に関わる。2014年独立後は、様々な外資系IT企業を中心に独自のプログラムを提供し、現場で成果を上げる人財の育成に尽力している。
 
TEXT:米澤智子
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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