労働基準法における「祝日」の扱い
労働基準法において、「祝日」の取り扱いに関する定めはありません。祝日の扱いは労働契約や就業規則によって異なります。これらに「祝日は休日」もしくは「祝日は労働日」と明記していれば、それに従うことになります。ただし、「休日」については労働基準法が関連しているため、注意が必要です。
◆「休日」の種類
休日には「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」の2種類があります。労働契約や就業規則で休日と定められている祝日は、法定休日か法定外休日のいずれかに該当します。
◆「法定休日」と「法定外休日」の定義
- 法定休日……労働基準法第35条に基づき、企業が労働者に対して最低限与えなければいけない休日。週1日、または4週間に4日
- 法定外休日(所定休日)……労使間で取り決める、法定休日以外の休日
※法定休日が週1日の場合
週休2日という規定であれば、そのうちの1日が法定休日、もう1日が法定外休日になります。振り分け方は以下のとおりです。
◆法定休日と法定外休日の振り分け方
- 労働契約や就業規則に定めがあれば、それに従う
- 定めがなければ、日曜から土曜の1週間のうち、もっとも後ろに位置する休日が法定休日。それ以外は法定外休日
祝日出勤を要請できるケース、できないケース
祝日が労働契約や就業規則に基づく労働日であれば、祝日出勤を命じることになんら問題はありません。一方、祝日を休日としている場合、祝日出勤を命じるためには、労働基準法上の要件を満たす必要があります。
◆要請が可能なケース
「労使協定(36協定)」で合意されている範囲内であれば、祝日出勤の要請は可能です。祝日が法定休日の場合は「休日労働」、法定外休日の場合は「時間外労働」の扱いになり、それぞれ割増賃金を支払わなければなりません。
◆要請が不可能なケース
すでに36協定で定める休日労働・時間外労働の限度時間に達している場合や、36協定を締結していない場合は、祝日出勤を要請することはできません。
人材募集要項と実態が異なる場合における企業のペナルティ
労働者に対して明示した労働条件が実態と相違する場合、企業は労働条件の明示義務違反に問われる可能性があります(労働基準法第15条第1項)。労働基準監督署による行政指導を受けたり、「30万円以下の罰金」(同法第120条第1号)の刑事罰が科されたりするので注意してください。
なお、ここでいう「労働条件」とは、企業が労働者に対して契約締結時に明示したものを指します。契約締結時に明示された労働条件と、人材募集要項記載の労働条件が異なっていたとしても、ただちに労働基準法違反には該当しません。
ただし、後から変更することを前提として、実態とはかけ離れた労働条件を人材募集要項に記載した場合には、職業安定法違反に該当する可能性があるので注意が必要です。
祝日出勤を要請する場合の注意点
祝日出勤を要請する場合、まずは36協定で定める休日労働・時間外労働の限度時間を超過していないことを確認する必要があります。休日労働には通常賃金の135%以上、時間外労働には通常賃金の125%以上の割増賃金を支払う義務がある点にも留意してください。
また、36協定の定めに違反して従業員に休日出勤を命じた場合、「6カ月以上の懲役、または30万円以下の罰金」が科される可能性があります(同法第119条第1号)。特に違法な休日出勤命令が常態化している場合、刑事罰を受ける可能性が高くなると考えられます。
従業員への負担を考慮する
企業は従業員の勤務状況をしっかり確認したうえで、祝日出勤を要請するか否かの判断をしなければなりません。
労働基準法や36協定のルールを遵守するはもちろんですが、たとえ労働時間の範囲内だとしても、従業員に過度な業務負担がかかっていないかどうかのチェックは必要です。
祝日出勤を要請する際だけでなく、上司や人事部などが中心となって、日頃からヒアリングなどを通じて従業員の勤務状況を把握しましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年10月時点のものです。
<取材先>
ゆら総合法律事務所 代表弁護士 阿部由羅さん
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト