「顔採用」を行うリスクと企業が心がけるべきこととは

リモートで面接をしているイメージ


採否決定において容姿に重点を置く「顔採用」は、違法にはならないのでしょうか。顔採用を行うことによるリスク、顔採用をしていると疑われないようにするための方法について、寺島戦略社会保険労務士事務所の社会保険労務士・大川麻美さんに伺いました。

 
 

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顔採用とは


顔採用という言葉に法的な定義はありませんが、一般的には「容姿・外見を主要な判断基準として採用を行うこと」を指すと考えます。候補者本人の責任によらない要素で採否が判断される事象として、ネガティブな意味合いで使われることが多くあります。

 
 

顔採用は法律違反なのか

 
 

◆採用にまつわる法律


顔採用について考える前に、採用にまつわる法律をおさえておきましょう。採用とは、労働者と企業が雇用契約で結ばれるきっかけとなるものです。労働者と企業は対等な関係であり、労働者には入社するかどうかを決める自由があるのと同様に、企業には採否を決める自由があります。
 
しかし、採用の自由があるからといって何をしても許されるわけではありません。採用や雇用に関する法律に基づき、大別して4つの規制があります。
 
1.性別で差別してはならない
(事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない‐男女雇用機会均等法 第五条より)
 
2.障害の有無で差別してはならない
(事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない‐障害者雇用促進法 第三十四条より)
 
3.年齢で差別してはならない
(事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない‐労働政策総合推進法 第九条より)
 
4.労働組合に加入しないことを条件として採用してはならない
(使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること‐労働組合法 第七条より)
 
また、厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)が提示する「公正な採用選考を目指して」の中には、採用選考の基本的な考え方として「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」の2点が重要であると述べられています。

 
 

◆顔採用が法に触れるケース、そのリスクとは


万が一企業が顔採用を行い、それが何らかのきっかけで明るみに出た場合は、平成11年労働省告示第141号の第2(人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、差別的な取り扱いをしてはならない)に反するとして注意指導や改善の対象になることが考えられます。
 
また、問題がこじれた場合に候補者との争いに発展する可能性もあります。社名を公表される、裁判を起こされるといったことがあると、社会的信頼の失墜、候補者からの多額な賠償金の請求などのリスクが考えられます。

 
 

顔採用にならないためには


自分でも気付かないうちに顔採用を行ってしまうことがないようにする、または相手に顔採用を行っていると捉えられないようにするためには、あくまでも候補者が持って生まれた容姿ではなく、業務の適性や能力といったものや、本人の努力により培ったものを採否の判断材料にするのがポイントです。
 
例えば「顔立ちが良い」は生まれながらの容姿の評価になってしまいますが、「笑顔が良い」ということであれば、コミュニケーション能力のひとつに対する見極めと捉えられ、顔採用と判断されるリスクは低いです。
 
顔採用を行っていないにも関わらず誤解されるリスクを避けるためにも、美人、イケメン、スタイル、スリーサイズのような言葉を用いることなく、清潔感、コミュニケーション、立ち居振る舞いといった言葉に置き換え、候補者を評価していくとよいでしょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年11月時点のものです。
 
参考:
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年七月一日 法律第百十三号)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000141983.pdf
障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年七月二十五日 法律第百二十三号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75059000
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年七月二十一日 法律第百三十二号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75008000
労働組合法(昭和二十四年六月一日 法律第百七十四号)
https://www.mhlw.go.jp/churoi/hourei/kumiaihou.html
厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)「公正な採用選考を目指して」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html
 
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所 社会保険労務士 大川麻美さん
 
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan +ミノシマタカコ + ノオト

 
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