内定承諾書に関する基礎知識
そもそも内定承諾書は何を伝えるものなのでしょうか。まずは、内定承諾書に関する基礎知識について説明します。
◆内定承諾書とは
内定承諾書とは、採用試験に合格した人(内定者)に対し企業が送付し、返送してもらう書類です。
内定者が内定承諾書にサインをすると、応募先の企業への入社を誓約したことに
なります。
似たような文書に「内定通知書」があります。内定者に送付する点は同じですが、内定通知書はその名の通り「内定したことを通知」する書類のため、返送してもらう必要はありません。
また、内定通知書は新卒採用試験の場合に使用されるケースが多いのも特徴です。採用試験から入社まで数カ月程度の長い期間がある場合に使用されるため、入社までの期間が短い中途採用では使用しない場合が多く見受けられます。
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◆内定承諾書に必要な項目
企業によって内定承諾書の様式は異なりますが、記載されている内容はほぼ同じです。
具体的な記載事項として、以下の10項目が挙げられます。
- 作成年月日
- 企業名や代表者名
- 題名
- 内定通知受領した旨とその日付
- 内定承諾の旨
- 内定承諾書提出後は無断で入社を拒否しない旨
- 指示された書類は遅滞なく返送する旨
- 住居変更等があった場合は連絡する旨
- 本人氏名と捺印欄
- 保証人氏名と捺印欄
上記の項目を漏れなく記載しておくと、内定者に必要事項が正しく伝わる内容に仕上げられます。
◆承諾書の法的拘束力について
内定承諾書には法的拘束力がありません。内容に「所定の時期の入社を誓約する」といった文言が記載されているため、内定者の同意によって入社を確約したことになりますが、内定者が希望すれば、内定や入社を辞退または取り消しが可能とされています。そのため、「内定承諾書にサインしたら必ず入社しなければならない」ということにはならず、内定者から辞退の申し出があれば承諾する必要があります。
採用担当者は内定辞退も念頭に置いて採用活動を進める必要があります。急な辞退によって採用活動のやり直しやそれに伴うコストも発生する可能性があります。
内定承諾書が必要な理由
法的拘束力がないとされていますが、それでも企業が内定承諾書を作成することには理由があります。企業にとって内定承諾書が必要な理由として、以下の3つが挙げられます。
◆内定者が入社する可能性を高めるため
1つ目の理由は、求職者が入社する可能性を高めるためです。電話やメールよりもフォーマルな内定承諾書を利用することによって、内定辞退や入社辞退を防ぎやすくなります。
内定承諾書は、求職者が「企業の内定を承諾して入社する意思を示す」書類です。署名が必要な書類を用いることで、求職者に入社について、よりしっかり確認してもらえます。
入社の意思を固めてから提出するという流れを促せるため、内定辞退を予防することにつながります。
◆内定者との認識の齟齬をなくすため
2つ目の理由は、内定者との認識の相違をなくすためです。お互いの認識が噛み合わず、スムーズに入社手続きが進められなければ、双方に大きな負担となります。内定承諾にかかる重要な情報を書面に残しておけば、未然にトラブルを防ぐことができます。
入社準備や企業の受け入れ態勢の調整などは、採用担当者以外にも関わる事項のため、書面を取り交わしてお互いが入社の意向を固めていくことが重要です。
◆内定の事実を明確にするため
3つ目の理由は、承諾内容を書類として残すことで、求職者に心理的な安心感を持ってもらうためです。
電話など口頭で内定を告げただけでは、求職者は「本当に内定したのか」不安に思うかもしれません。一方、書面で残せば内定の事実を明確にできるため、求職者に安心してもらえることにつながります。
内定承諾書の作成と送付に関するポイント
適切な内定承諾書を作成し内定者に送付するためには、以下の4つのポイントを押さえておくことが大切です。
◆事前に内定の旨を連絡するとともに、内定承諾書を送付する
内定者に対して事前の連絡もなしに内定承諾書だけを突然送付すると、「雑に取り扱われているのではないか」と思われる可能性があるので注意が必要です。特に採用に至るまでの期間が短い場合は、自分の取り扱いに対して懸念を抱く可能性が考えられます。
そのため、電話かメールなどで内定の旨を連絡し、後日改めて書類を郵送するパターンが一般的です。
◆ひな形は事前に作成
スムーズに内定承諾書を発送するため、雛形を事前に作成しておくとよいでしょう。急な採用が発生した場合や記載内容の変更が生じたとしても、速やかに修正が行えます。
内定承諾書の記載内容に法的な決まりはないので、本稿を参考に余裕をもって準備しておきましょう。
◆提出期限の目安は1週間から1カ月程度
内定承諾書の提出に期限を設けましょう。提出期限の目安を1週間から1カ月程度の期間設定をしておけば、締め切りまでの提出を促すことに繋がります。あまりにも提出期限が短いと、焦っているイメージを持たれてしまいかねません。また、提出期限までが長すぎると内定者の気持ちが緩んでしまう可能性があるため、提出期限は慎重に設定するべきです。
内定承諾書を作成するときの注意点
トラブルを避けて入社手続きを進められる内定承諾書の作成方法についても知っておきましょう。
◆内定後早めに提示する
1つ目は、内定が決まったら早めに提示するのがポイントです。内定者が他社の採用試験も受けていた場合、先に内定通知が来たところに入社を決められる可能性が高いからです。
必要な人材をしっかり確保するためにも、内定通知書や内定承諾書を送付することは優先順位が高いので、早く作成するように心がけましょう。
◆内定取り消し事由を忘れずに記載する
2つ目は、内定取り消し事由の記載が必要です。内定取り消し事由が記載されていなければ、企業側から内定を取り消すことができなくなるからです。
基本的に企業が一方的な理由で内定を取り消すことはできません。しかし、「大学を卒業できなかった場合」や「採用試験で提出した書類に虚偽が判明したとき」など、内定取り消しに該当する具体的な事由を記載したうえで内定者と合意していれば、万が一のときもトラブルを防ぎながら内定を取り消しやすくなります。
内定取り消しに該当する事由は企業によって異なりますが、前もって考えておくと、スムーズに手続きを進められるようになります。
◆承諾条件は明確に記載する
3つ目は、承諾条件はできるだけ明確に記載します。条件を具体的に定めておくと、内定者とのトラブルを防ぎやすくなります。
たとえば、「内定承諾書の提出後は、無断もしくは正当な理由なく入社を拒否しません」や「健康上の理由により勤務に耐えないと判断した際は、ただちに連絡致します」などが文例です。
◆内容によっては印紙税がかかることがある
4つ目は、内容によっては印紙税がかかる可能性があるという点です。たとえ内定承諾書であっても、書類が注文や請負といった契約を締結するものであると判断されると、課税文書に該当してしまうからです。
課税文書に該当すると判断された場合、記載されている金額によっては印紙税を支払わなければなりません。もし課税文書に該当するか判断できない場合は、弁護士や法務担当者に確認しておくと安心です。
内定承諾書のテンプレート
内定承諾書を作成する際は、次のテンプレートを参考にしてみてください。
まとめ
内定承諾書の概要や、適切な内定承諾書を作成するためのコツや注意点などについて説明しました。この記事内で説明を参考にして、入社手続きがスムーズに進むような内定承諾書を作成できるようにしておきましょう。