社員の「適応障害」を防ぐには 早期発見と職場環境の改善方法


体調を崩した社員が持参した診断書に「適応障害」と書かれていたことはありませんか。適応障害は、決して珍しい病気ではないにも関わらず「本人の気の持ちよう」「うつ病と同じ」「しばらく休めば治る」と勘違いされていることが多い病気です。
 
適応障害に関する著書もある心療内科医の森下克也さんは「診断書に適応障害と書かれていれば、職場を含めた外部環境に病因があるということ。企業には職場環境の改善が求められます」と話します。社員が適応障害になってしまった場合の対処法と、適応障害を予防する職場づくりの方法についてお聞きしました。

 
 

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積極的なコミュニケーションでメンタル不調の早期発見を


――社員が適応障害と診断された時に、職場環境の見直しが必要なのはなぜでしょうか。
 
適応障害とは、外部環境にストレスとなる原因があり、それに長期間さらされることで起こる病気です。ごく普通に働いていた人が何らかのストレスにさらされ、最初はうまく対処できていてもやがて体調を崩してしまう、そんな誰にでも起こりうる心身の変化です。
 
適応障害にかかると意欲や気力の減退、不安や抑うつ状態といった心理症状に加え、頭痛や不眠、めまいや食欲不振といった身体症状も現れます。「うつ病」と似ていますが、うつ病など他の精神疾患は複数の原因(脳内の機能異常、人格障害など)が考えられるのに対し、適応障害は外部の環境が不調の原因であることが明らかなものです。
 
適応障害の治療では薬物療法やカウンセリングなどの心理療法を行いますが、原因が職場にある以上、業務の内容や残業時間、人間関係といった環境も見直さなければ根本的な解決とはなりません。
 
――適応障害の原因となっている環境を変えなければならないのですね。
 
もちろん、長時間労働を見直す、ハラスメントを無くすなどといった対策は必要です。しかし「職場のストレスを“ゼロ”にする」ということは現実的ではありませんよね。働いている以上、誰しも何らかのストレスは感じるものです。
 
大切なのは、社員が感じているストレスが過度にかかっていないか、心身の不調をきたしていないかを早期に発見することです。社員の一番近くにいる直属の上司や、部署のリーダーが適応障害についての正確な知識を持ち、症状が悪化する前にストレスが過多になっていることに気づけるようにしましょう。
 
――社員の変化を早期に発見するために、普段から気を付けるべき点はありますか。
 
適応障害では、先述した頭痛や不眠、そして腰痛や肩こり、腹痛や吐き気といった身体症状の方が心理症状よりも先に現われやすいという特徴があります。こうした症状は疲れている時や風邪気味の時などにもよく見られるため、適応障害の初期症状であるとか、職場のストレスが原因であるとは気づきにくいものです。しかし「よくあることだから」と見過ごさず、最近の残業時間が増えていないか、同僚や取引先との間でトラブルを抱えていないかなど、業務内容や職場環境に問題がないかと考えるようにしましょう。
 
また、社員からの自己申告を待つだけではなく、上司の方から「顔色がすぐれないように見えるけど、疲れていない?」「無理していない?」と声かけをすることが重要です。積極的にコミュニケーションを取って、社員の感じているストレスやSOSのサインを見逃さないようにしてください。

 
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職場全体でメンタルヘルス対策を


――適応障害を防ぐために、気に掛けておきたい社員の言動・行動はありますか。
 
社員自身が「疲れている」「つらい」と弱音を口にする時には、すでに心身の不調がかなり進行していると言えます。遅刻や欠勤などの勤怠の問題や業務中にミスを連発してしまう事態も同様です。
 
むしろ社員がストレス過多になり始めるのは、端からはとても頑張っていてタフに見える時です。心配して声をかけても「大丈夫です!」と元気に答えてしまうこともあるでしょう。ですが、テンションを高く保ったままの状態を続けるには限界があります。本人は無理を重ねているのに、気力にあふれ、まじめに頑張っていると思われて、ますます仕事を抱え込んでしまうケースにも注意が必要です。
 
――社員の心身の状態を客観的に判断するのは意外と難しいものですね。
 
企業の管理職や、マネジメント層の方はご自身が厳しい環境を耐えてきた方が多いと思います。その頑張りは素晴らしいことですが、「自分が乗り越えられたことを部下はなぜできないのだ」と、心身を病むことを悪いことのように見てしまいがちな面もあります。
 
管理職の中には、職場で「チームの生産性を上げること」「指揮命令がしっかりできること」が、よいリーダーである条件と思っている人が少なくありません。しかし、部下から見たよい上司は「自分を気にかけてくれる」「質問に丁寧に答えてくれる」ということが多いものです。このギャップが、多くの社員にとってストレスの原因になります。
 
「生産性を上げる」という目標を捨てる必要はありませんが、部下の視点に立って考えることも大切です。企業は管理職に対して、部下の個別性・人間性を尊重した対応ができるようになるための指導や研修を取り入れましょう。
 
――上司や管理職だけでなく、会社全体で職場環境を見直す必要がありそうです。
 
人は誰しも、自身の経験から物事を判断しがちです。職場の上司一人に判断を任せず、人事担当や産業医など、職場の複数の人と社員の状態を共有し、客観的な視点で職場環境に問題がないかを考える体制づくりも大切です。
 
明らかに調子を崩していなくても、少し様子が違うかもしれないと感じた時点で、産業医やメンタルヘルス担当の職員との面談や、ストレスチェックを行うことで適応障害の早期発見ができ、重症化する前に対処することが可能になります。
 
また、企業によっては、「社員がメンタルヘルスの問題で仕事を休むと、本人やその上司の査定に影響する」という慣習が残っていることがあります。そんな状況では本人も上司も問題を抱えていることを表明しづらいですし、改善すべき職場の環境がそのまま放置されてしまいます。適応障害は職場の問題です。発症した本人を責めることなく、企業が組織的に問題を解決していくことが大切です。

 
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<取材先>
もりしたクリニック院長
森下克也さん
久留米大学医学部卒業後、浜松医科大学心療内科、浜松赤十字病院、法務省矯正局、豊橋光生会病院心療内科部長を経て現職。『もしかして、適応障害? 会社で“壊れそう”と思ったら』『もし、部下が適応障害になったら 部下と会社を守る方法』(CCCメディアハウス)など著書多数。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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