入社誓約書とは
入社誓約書とは、従業員を採用する際、企業の方針や就業規則の内容など、働くにあたって守らなければならないことを理解し、遵守するよう約束してもらうための書類です。入社時に取り交わします。
入社誓約書がないとどうなる?
入社誓約書は法律で定められている文書ではないため、全ての企業が入社誓約書を作成しているわけではありません。この書類がなくても法律的に問題はありません。入社誓約書を取り交わすことで、従業員が働くにあたっての義務を再確認し「企業の決まりをきちんと守ろう」という、ルール違反への心理的抑止効果が期待できます。また、入社誓約書を取り交わすことで、しっかりとした企業であるということを印象づけられます。
入社誓約書に盛り込むべき内容
入社誓約書の書式に決まりはなく、企業にとって従業員により守ってほしい内容を盛り込んでいきます。一般的には下記のような内容が記載されます。
- 服務に関する事項
- 社内規定の順守
- 業務命令・配転命令・昇降格などの命令を守ること
- 秘密保持義務
- 個人情報の取り扱いについての取り決め
- 故意過失による損害賠償についての内容
- 経歴に偽りがないかの確認
入社誓約書作成のポイント
◆自社の業務の特性に合った項目を記載する
インターネット上には入社誓約書のテンプレートが多くみられますが、それらをそのまま使うのではなく、自社の業種や職種、業務の特性などに沿った項目をピックアップして記載することが重要です。たとえば、ホテルや病院であれば「著名人が訪れたときにSNSなどで口外しないこと」など具体的な項目を記載すると、より伝わりやすくなります。
◆特に守ってもらいたい項目に絞る
従業員に企業の決まりを理解してもらうことは重要ですが、項目がずらりと羅列された入社誓約書は、入社する従業員に威圧感を与え、萎縮させてしまう可能性があります。記載はあくまで重要な項目に絞るほうが企業の意図が伝わりやすく、かえって理解してもらいやすくなります。
◆外国人従業員への配慮
外国人を採用する際、従業員の語学力によっては入社誓約書の内容が理解しづらいケースがあります。平易な日本語を用いたものや、場合によっては従業員の母国語で記載されたものを用意するといいでしょう。
◆従業員に誓約書の本人控えを渡す
入社誓約書の内容を本人が忘れてしまうこともあるため、従業員に本人控えを渡し、本人が見返すようにできることが望ましいでしょう。書類をオンラインでやり取りする場合は、本人用の控えを発行して送付しましょう。
◆退職時にも誓約書を取り交わす
入社誓約書だけではなく、退職時にも、在籍時に知り得た機密事項などを外部に漏らさない旨を記載した誓約書を取り交わしておきましょう。退職後にも情報漏洩に対する心理的抑止効果が期待できます。
入社誓約書は、法的な決まりはないものの、従業員のモチベーションに関わってくる書類といえます。これから一緒に働く仲間として、自社のルールを理解してもらうための一助となるよう、きちんと作成しましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年9月時点のものです。
<取材先>
社会保険労務士法人名南経営 社会保険労務士 三好奈緒
大学卒業後、大手自動車関連会社の総務人事部在職中に社労士資格を取得し、社会保険労務士法人名南経営に入社。日常的業務は主に中小企業を中心とした顧客の各種人事労務相談に対応している。新卒から現在に至るまで一貫して給与・社会保険に携わっていることが強み。
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト