メンタル疾患に関する質問は基本的にNG
結論から言うと、面接時に候補者へ既往歴や現在の疾患について質問をすることは「基本的にNG」です。企業の採用選考は、厚生労働省のガイドライン「公正な採用選考の基本」に則って行われるべきであり、それを遵守している限りは疾患に関わる質問をすることはないでしょう。
ただし、例外もあります。「候補者に疾患がある場合、業務に甚大な影響を及ぼす恐れがある」と考えられる業種のみ、質問することが許されるのです。ここでいう「甚大な影響」とは、その仕事に就く人間の疾患が人命に関わったり、社会全体を脅かしたりするレベルを指します。例えば、パイロットがうつ病を患っている場合、業務中に希死念慮にとらわれ事故を引き起こすといったリスクが高くなるといったことです。
こうした特殊なケースは、厚生労働省のガイドラインとは別に職種に応じた法令(例:パイロットであれば航空法)で、採用面接で候補者へ疾患に関する質問をしても良い旨が取り決められています。そのような例外は除いた一般的な業種・職種については「質問してはいけない」のが大原則と考えておきましょう。
してもよい質問・してはいけない質問の見分け方
では、面接時に「してもよい質問」と「してはいけない質問」はどのように区別したらよいのでしょうか。ポイントはあくまでもキャリアや転職など、「仕事に関する質問」から離れないことです。例えば候補者の履歴書を見た時に、半年間のブランクがあることが気になったとします。その際「この期間、体調を崩されていたのですか?」と尋ねるのはもちろんNGです。また「この期間中は何をしていたのですか?」「なぜ休んでいたのですか?」という質問も、仕事に“直結”しているとは言えないためグレーゾーンとなります。
ただし、「ブランクの間、お仕事はどういったことをされていたのですか?」であれば、仕事に関する質問の範疇なのでOKと言えます。このように尋ねることで、「アルバイトをしていました」「ボランティア活動をしていました」といった具体的な答えを引き出すことが可能となります。
もしくは率直に「体調を崩していました」と回答されることも考えられます。これはあくまでも候補者本人が“自発的に”言ったことなので、問題はありません。ただ「どのような体調不良なのですか?」「もう治ったのですか?」といった具合にさらに掘り下げるのはNGです。この場合は「半年後に再就職されていますが、就職先はどのように探されたのですか?」といったように転職活動に関する質問に置き換え、あくまでも仕事という軸から離れないようにするのが、法令に抵触するリスクを避けるコツです。
もう一つ、OKとなる質問例を挙げてみましょう。採用面接で候補者から「私は通院をしているので、定期的に休みがほしいです」という希望が出ることがあります。このケースでももちろん、病気に関する質問は避けるべきです。しかし「月何回の休みが必要ですか?」「何曜日に休みたいのですか?」といった質問は、就業上の配慮をするために必要であるためOKです。
メンタル疾患に関する情報取り扱いの注意点
前述した通り、候補者が自らメンタル疾患などの健康状態について言及した場合、それ自体に何ら問題はありません。ただし、情報の取り扱い方には注意が必要です。
まず、万が一その採用に関して後からトラブルになった場合に備えて、面接時の記録を取っておくことが重要です。記録を取る際のポイントは2点。1つ目は、主観を交えずあくまでも事実に基づいて情報を記録すること。できれば「候補者が言った通りの」文言で記載しておくのがベストです。2つ目は、候補者本人が「自発的に言った」という旨も記録しておくことです。
メンタル疾患に限らず採用面接で知り得た候補者の個人情報については、社内であってもむやみに開示すべきではありません。あくまでも必要最低限のメンバーで共有することが重要であることを心得ておきましょう。
参照:
厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
<取材先>
株式会社iCARE代表取締役 山田洋太さん
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト