「てんかん」とは 職場に求められる知識と理解

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「てんかん」という病名は聞いたことがあっても、身近な病気だと感じている人は少ないのではないでしょうか。実はてんかんのある人は日本には約100人に1人の割合でいると言われており、誰もがかかる可能性のある病気でもあります。てんかんとはどんな病気なのか、てんかんのある従業員とともに働く上で企業が配慮するべき点などを公益社団法人日本てんかん協会の田所裕二さんに聞きました。

 
 

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「てんかん」の症状は人によって様々


――てんかんとは、どんな病気なのでしょうか。
 
私たちの脳内では、たえずニューロン(神経細胞)の間に電気信号が流れています。この電気信号の流れのリズムが突然激しく乱れると、「てんかん発作」が起こります。てんかん発作は、脳のどの部位でこうした異常な電気信号の乱れが起こるかによって現われる症状が異なります。
 
たとえば、脳の一部で起こった場合(部分発作・焦点発作)では、チカチカとした光が見えたり、手やまぶたなどがピクピク動いたりするといった症状を示すことがあります。
脳の全体で電気的な乱れが起こる「全般発作」の場合には、「ミオクロニー」と呼ばれる、身体の一部の筋肉が大きくビクっと動く発作が起こることもあります。他にも、意識がなくなりぼんやりしてしまう発作、強いけいれんを起こしその場で倒れてしまう発作などもあります。こうした発作を繰り返し起こす病気がてんかんと呼ばれています。
 
――てんかんと言っても、その症状には様々なものがあるのですね。
 
多くの人がイメージするてんかん発作は「突然意識を失い、口から泡を吹いて倒れてしまう」という症状だと思います。実際には「部分発作」のように体の一部分だけに発作が現われることもあれば、急に意識がなくなって突然話が途切れたり、動作が止まったりする発作もあります。人によって症状は千差万別で「てんかんとは、こういうもの」と一般化がしづらい病気です。そのために理解されにくい病気でもあるのです。

 
 
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適切な治療により発作は抑えられる


――てんかんの原因は何でしょうか?
 
実はてんかんを発症する原因はまだよく分かっていません。事故で脳に損傷を負った人、あるいは脳梗塞や脳血管障害をわずらったことがある人、あるいは出産時に何らかの理由で脳に酸素が行き渡らずに障害が残った人などにてんかんが多いとは言われています。しかしながら、そうでない人にもてんかんは発症します。脳の電気信号の乱れの原因は現在のところはっきりとは解明されておらず、「脳を持つ者ならば、誰でもてんかん発作を起こす可能性がある」と言えるでしょう。
 
てんかんは8割程度が18歳以前に発病すると言われていますが、乳幼児期から高齢期まで全ての年代で発病する可能性のある病気です。会社勤めを始めてから発作を起こすようになり、医療機関で検査をしてみたところ、てんかんが分かった、という人もいます。
 
てんかんのある人は、100人に1人の割合と言われており、日本全国にはおおよそ100万人のてんかん患者がいると推定されています。決して珍しい病気ではありません。
 
――てんかんの治療法はありますか。
 
抗てんかん薬などを用いた治療により、てんかんのある人のうち7割程度の人が発作を抑えられています。てんかんを正しく診断できる医師にかかり、決められた通りにきちんと服薬を続けていれば、2カ月に1回程度の通院でも発作を抑制できていることが少なくありません。てんかんがあっても問題なく日常生活を送り、仕事をしている人はたくさんいらっしゃいます。

 
 
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本人と主治医と相談し、その人に合った環境を整える


――てんかんのある人は自動車の運転が制限されていると聞いたことがあります。てんかんのある人は、通勤や業務で車を使用する仕事には就けないのでしょうか。
 
てんかんのある人の運転免許取得には、一定の条件が定められています。ですが、「てんかんだから」という理由で全員が一律に車の運転を禁じられているというわけではありません。
道路交通法では、急に意識を失う、身体が動かなくなるといった安全な運転に障害となる症状が2年以上無い場合には、運転免許の取得や更新が可能となっています。
ただし、大型免許と第2種免許については「5年以上、服薬しなくても発作が抑制されている状況」が無く、主治医の合意が得られるような状況にならない限りはおすすめしていません。
 
しかし先にお伝えしたとおり、てんかんの症状は人によって様々です。「てんかんだからできないだろう」と決めつけてしまうのも、法律で決められているならOKだろうと判断されることも、どちらもおすすめしません。必ず主治医と本人と話し合ったのちに、どんな業務を任せ、どんな働き方をしていくかを決めることをおすすめします。
 
私たち日本てんかん協会としては、てんかんに対する誤解から不当に希望する職業に就けないことはあってはならないと考えています。同時に、バスやタクシー、トラックの運転手など、運転が主な業務となる仕事については、てんかんがある人は非常に慎重になったほうが良いのではないかとも考えています。また、発作時の危険が大きい高所作業や、極端に暑かったり湿度が高かったりする場所での作業のある仕事なども発作が起こりやすくなると言われているため、避けた方が望ましいと考えています。
 
――他にも、てんかんのある人と一緒に働く上で、職場が配慮すべきことはありますか?
 
本人に、下記を聞いておくことをおすすめします。

 

  • てんかん発作の症状の特徴(何分間くらい、どんな症状が出るのか)
  • てんかん発作が起こりやすい状況(どんな状況の時に発作が出やすいか)
  • てんかんの発作が出たとき、周りにどう対応してほしいか
  • いつ、どんな薬を飲んでいるか
  • 主治医など、発作や体調に関する相談をしたいときの連絡先


てんかんの発作は突然起こりますが、実は1分以内に回復してその後は通常通りに過ごせることも多いのです。あらかじめ、どんな発作が何分間くらい起こりがちであるかを聞いておきましょう。聞いていた通りの発作や時間内であれば、周りはほとんど何もする必要はありません。倒れてしまう発作であれば、ぶつからないよう周辺の家具などを遠ざけておく程度で大丈夫なことが多いのです。逆に、聞いていた発作の様子と違う、発作の時間が長いとなれば救急車を呼ぶ必要があります。
 
普段から本人や主治医と体調について確認し、発作が起こりやすい状況を避け、いざ発作を起こした時の対応方法について話し合っておくことが大切です。

 
 
 

<取材先>
田所裕二さん
公益社団法人 日本てんかん協会(波の会)理事・事務局長
てんかんに関する調査研究、正しい知識の普及啓発、てんかんのある人々の療育指導等に取り組む、てんかんのある人や家族、医療関係者などによる全国組織。ソーシャルワーカーとして、およそ40年間てんかんや精神疾患のある人とその家族の社会援護・相談支援活動を全国で行っている。
 
TEXT:石黒好美
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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