新人育成計画の期間とゴール
新人育成を行うための期間は、その目的によっても異なりますが、半年から1年程度が一般的です。そして、2年目以降は、担当する業務や個人の成長スピードなどを見ながら、個別に随時設定をしていきます。
入社後、半年から1年程度の育成計画で目指すべきゴール(育成後の「あるべき姿」)としては、大きく以下の3つが挙げられます。
◆会社に馴染んでいる状態(オンボーディング)
オンボーディングとは、乗り物に乗り込んでいる状態という意味です。新入社員が会社という乗り物に入り、その組織に合流し、馴染んでいる状態になってもらうことです。
◆自社の事業やルール、価値観を理解して実践できる状態(マインドセット)
自社の事業内容や仕事内容、また掃除や施錠などの細かなルール、さらには風土や社員ひとり一人が大切にしている価値観などをしっかりと理解し、実践できるマインドが身についている状態になってもらうことです。
◆仕事の基礎・基本を習得・実践できる状態(スキルの教育)
ビジネスパーソンとしての仕事の基礎・基本をしっかりと習得し、実践できている状態になってもらうことです。
新人育成計画を立てるときのテンプレート例
新人育成を行う際には、評価基準や等級基準、ゴールなどを言語化して整理した「新人育成計画書」を活用することで、戦略的な育成がしやすくなります。
新人に求める社内での等級基準を身につけてもらうにはどのようなスキルやマインドが必要か、半年から1年後にはどのような状態になっているべきか、そのためにはどのようなOJT(On-the-Job Training)が必要なのかを設定していきます。
また、事業内容や新人育成の目的によって、項目の内容や設定の細かさは異なります。
ここでは、OJTに特化した計画書のサンプルを紹介します。部門や仕事内容に関わらず、全社共通で身につけてほしい項目と、部門別に身につけてほしい項目に分け、6カ月後のゴールイメージ、それを達成するために何を学んでもらうかを箇条書きで記載します。
OJT計画書(株式会社新経営サービス 大園羅文さん作成)
このテンプレートのポイントは、新人本人と上司それぞれが、到達レベルを評価する点です。5段階の評価で上司と本人のどこに差があるかを1カ月後、3カ月後、6カ月後の面談で確認し、評価の差や課題を埋めるために必要なことをすり合わせ、一緒に成長していけるようなシートになっています。
これはあくまでテンプレートの一例です。自社の新人育成計画に合わせて、整理がしやすいフォーマットで作成し、活用しながらブラッシュアップすることで、自社が運用しやすいものに仕上げていくことが大切です。
新人育成・教育におけるポイント
新人育成・教育を進めていくうえで、押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
◆本人に対して目標・ゴールを明確にする
本人に対して目標・ゴールを明確に提示することが非常に重要です。目標・ゴールが明確になっていないと、教える側は「6カ月経てば、これくらいできてしかるべき」と考えていたとしても、教えられる側は「自分はきちんと求められている内容を実施できている」と思いがちです。その乖離があると「何度言ってもできない新人だ」「なんでこんなに厳しく指導されるのか」と関係性が悪化してしまう場合があるので注意しておきましょう。
◆現場で一緒に働く社員に目標・ゴールを共有する
目標・ゴールを本人はもちろん、現場で一緒に働く社員にも共有し、社員の協力も仰ぎながら、全員で育成をしていくようなイメージで進められると良いでしょう。そうすることで、「上司と別の先輩から言われることが全然違う」といったことを回避できます。
◆育成計画を「見える化」する
教える側の上司も、教えられる側の新人も、新人育成計画書などを印刷して見やすいところに置いておくなど常に忘れないようにすることも、計画を“絵に描いた餅”にしないために大切です。
◆評価をフィードバックする
教える側の上司は、評価をすることで現状の課題を伝え、改善策を定期的な面談を通して部下と話し合っていくことが、運用面において重要です。
前項で紹介したテンプレートのような、新人育成計画書を活用することで、こういったポイントを押さえた新人育成を行いやすくなります。自社に合ったフォーマットを設定して、新人育成を戦略的に進めていきましょう。
<取材先>
株式会社新経営サービス 経営支援部 コンサルタント大園羅文さん
中小企業を対象とした人材採用支援、若手人材の定着・即戦力化支援、人事制度の構築・運用支援に従事。「人材採用力の強化」を得意テーマとし、『採用活動に時間やコスト・労力を割けない』等の中小企業独自の課題に寄り添った支援を通じて、顧客とともに“勝つべくして勝つ”採用活動を展開。採用情報サイト『ヒトノトリカタ』を運営。
TEXT:武田明子
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト




