派遣労働者を活用できない「派遣禁止業務」とは?

レッドカードを出すスーツ姿の男性のイメージ

労働者派遣は企業にとって、必要なタイミングで必要なだけ労働力を確保する、最適な手段のひとつです。しかし、あらゆる業務で派遣社員を活用できるわけではありません。
 
寺島戦略社会保険労務士事務所の社会保険労務士・寺島有紀さんに、労働者派遣が禁止されている業務とその理由について解説していただきました。

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「派遣禁止業務」とはどのようなものか

労働者派遣法では、派遣労働者に任せてはいけない5つの業務を定めています。いずれも専門性の高い業務や、危険を伴う業務が中心です。
 
もともと労働者派遣法が施行された1986年の時点では終身雇用中心の時代であり、こうした派遣禁止業務が設定されたのは、比較的最近のことです。
 
法改正を重ねて少しずつ派遣対象業務数が増え、1999年には現在のように派遣が原則自由化されたのと同時に、派遣禁止業務が設定されたのです。

労働者派遣法が禁ずる派遣禁止業務の内容は?

派遣禁止業務の対象となっているのは、下記の5つの業務です。
 

  • 建設業務
  • 警備業務
  • 港湾運送業務
  • 病院・診療所などにおける医療関連業務
  • 弁護士・社会保険労務士などの士業

これらの業務がなぜ派遣禁止とされているのか、その理由を順に見ていきましょう。
 

◆建設業務と警備業務

「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」において、労働者の雇用主と業務の指揮命令を行う者が同一でなければならないと規定されています。これは、建設業務が他の業務と比べて事故などのリスクが高く、労働者に対する責任者を常に明確にしておく必要があるためです。同じく警備業務も、警備業法によって同様のルールが定められています。
 

◆港湾運送業務

時期や状況、世界情勢などにより需給が大きく変動する分野であるため、労働者の雇用が不安定になりやすい傾向があります。そのため労働者の立場を守るために、通常の労働派遣を使うことを禁じているのです(港湾労働法に基づいて別途、港湾労働者派遣制度が適用されています)。
 

◆医療業務と士業

専門性と重要性の高さが理由であることは言わずもがなでしょう。医療関連業務は時に人命にかかわるものであり、派遣スタッフの介在は不適当と考えられています。具体的には、次のような業務がそれに相当しています。
 
医師、看護師、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、栄養士、救急救命士、助産師……ほか。
 
また、労働者派遣法では派遣労働者を基本的に、派遣先の担当者から指揮命令を受けることを前提としているのに対し、士業については指揮命令系統に入る立場ではないことから、労働者派遣に該当しないという理由があります。具体的には次の通り。
 
弁護士、社会保険労務士、公認会計士、税理士、行政書士、司法書士、外国法事務弁護士、土地家屋調査士。
 
ただし、医療業務では産休・育休中の人材の代わりに派遣されることが認められているなど、例外もあります。

派遣禁止業務に違反した際の罰則

労働者派遣は本来、できるだけ自由に働きたい労働者と、自社の事情に合わせて労働力を調整したい企業の双方にとって、メリットのある手法です。業績や生産性に直結するものだからこそ、ルールを正しく知っておくことが、活用の最低条件と言えるでしょう。
 
なお、派遣禁止業務に該当する業務に対して労働者を派遣した企業には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられることが労働者派遣法で定められています。他方、派遣禁止業務を受け入れた派遣先企業においても是正勧告がされ、それに従わなければ企業名などが公表されることもあるので十分に注意すべきでしょう。

 

<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
一橋大学商学部卒業。新卒で大手IT企業に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。現在は、社会保険労務士として中小・ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
 
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト


 
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