「二重派遣」はなぜ問題なのか? その罰則とは

手を突き出す男性のイメージ

労働者派遣における「二重派遣」をご存知でしょうか。知識不足によるものであっても立派な違法行為にあたるものです。
 
おまけに「職業安定法、そして労働基準法の2つの法に抵触する可能性がある」と指摘する寺島戦略社会保険労務士事務所の社会保険労務士、寺島有紀さんに二重派遣の違法性と注意点をレクチャーしていただきました。

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二重派遣とはどのような状態を指すのか

労働者派遣とはそもそも、派遣会社(派遣元)が自社の登録スタッフを契約先に派遣する構図を指しています。この場合、派遣会社と派遣労働者が雇用契約を結び、労働者はその上で派遣先の企業で業務に就くことになります。
 
これに対して二重派遣とは、派遣労働者を受け入れた企業が、その人材を労働力として別の企業に派遣する行為を意味します。つまり、派遣会社にとっては派遣先であるはずの企業が、また新たに派遣元になっている状態で、賃貸不動産でいえば又貸しに等しい行為と言えるでしょう。
 
法律ではこうした二重派遣を明確に禁じていますが、時に確信犯で、そして時に悪気なくこの状態になっているケースがあるので注意が必要です。

なぜ二重派遣が問題なのか

なぜこうした二重派遣が起こるのかといえば、労働力不足に付け込んで中間搾取を狙う確信犯的なケースもあれば、懇意の間柄にある企業間で、派遣されたスタッフを悪気なく取引先に出向させてしまうケースもあるでしょう。しかし、たとえ違法行為であると自覚していなかったとしても罰則の対象になるので注意が必要です。
 
二重派遣が問題視される最大の理由は、通常なら派遣会社と派遣スタッフの間で保たれていた責任関係が、曖昧になってしまう点にあります。たとえば派遣スタッフが業務中に何らかの理由で怪我をした場合、本来であれば派遣元が労災の申請を行うことになります。しかし、もし二重派遣先でスタッフが怪我をした場合、その責任の所在が不明瞭になり、適切な対応が受けられなくなることが懸念されます。
 
あるいは、正規の派遣元と結んでいた本来の労働契約が守られず、勤務時間や契約期間、残業の有無や休日など、人材が望んでいない条件で働かされることも起こり得るでしょう。
 
その意味で、二重派遣において最も損害を被るのは派遣労働者であると言えます。二重派遣が禁止されているのは、労働者の権利と待遇を守るためでもあるのです。

二重派遣を行うとどのような罰則が科せられるのか?

二重派遣が発覚した場合、企業にはどのような罰則が科せられるのでしょうか。この場合、職業安定法と労働基準法、2つの法律に抵触する可能性があります。
 
まず職業安定法では、第四十四条において「労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と規定されています。これに反した際の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められ、正規の派遣先と、二重派遣先の両社が処罰の対象となります。
 
一方、労働基準法の第六条では、「他人の就業に介入して利益を得る」行為を禁じています。こちらは二重派遣を受け入れた先の企業が、本来の派遣先企業に対価を支払っていた場合に当てはまるものです。1年以下の懲役または50万円以下の罰金が罰則として定められています。
 
派遣労働者を受け入れる側については、それが二重派遣に相当する事実を認識していなかった場合、罰則が適用されることはありません。ただし、発覚後も二重派遣を受け入れ続けた場合は、即座に違法行為として罰則の対象になります。
 
派遣会社を活用する際には、契約形態をあらかじめ十分に確認しておく必要があるのです。

 

<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
一橋大学商学部卒業。新卒で大手IT企業に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。現在は、社会保険労務士として中小・ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
 
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト


 
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