人材派遣の仕組みと直接雇用との違い
人材派遣と直接雇用の大きな違いは、雇用主です。直接雇用であれば雇用主は、その従業員が働いている会社となりますが、人材派遣、つまり派遣社員の雇用主は派遣会社となります。正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトであっても自社が雇用していれば、派遣社員ではありません。
派遣社員は派遣会社と雇用契約を結んでおり、給料や勤務時間なども派遣会社との間で決めます。社会保険も派遣会社から支払われ、福利厚生も派遣会社に基づきます。実際に働いている会社側から直接、給料を支払うなど条件を変更したり、契約と違う業務をお願いすることはできません。
また、派遣にも3パターンあります。
◆一般派遣
雇用できる期間は上限3年間まで。同じ契約で同じ職場で働き続けることができる。
◆無期雇用の派遣
雇用期間の上限が決まっていない。業種が限られており、あまり一般的ではない。
◆紹介予定派遣
直接雇用にする前提で、6カ月間派遣として働く。
企業が人材派遣を利用するメリット
1.正社員よりもコストを掛けずに労働力を得ることができる
派遣先となる会社は社会保険を支払う必要がないので、直接雇用の社員に比べると比較的コストを掛けずに労働力を得ることができるというメリットがあります。
2.スピーディーにほしい人材が来てくれる
人材が欲しいとき、直接雇用するとなると求人票を出して、採用活動をして……と、一人採用するのにもそれなりの時間を要します。しかし、派遣会社に連絡すればスピーディーに条件に合う人材を派遣してもらえるため、すぐに人材が欲しいときの対応が早いことがメリットです。また、派遣会社が間に入っているので、こういう技術が欲しい、こういう経歴がある人が欲しいなど、受け入れる企業側が求めるスキルについて、一定の基準を満たしている人材が揃っています。
3.ピンポイントで専門職の人材を派遣してもらえる
エンジニアやデザイナー、イラストレーターといった専門性の高い職種に強い派遣会社もあります。求めるスキルが具体的に決まっている場合は、「こういう能力がある人材がほしい」と派遣会社に伝えることで、適任の人材を紹介してもらえるでしょう。
4.一時的な業務に向いている
派遣社員は長くても3年までしか雇用できないという決まりがあるので、突発的、一時的な業務や将来的に長く続くかわからない業務には派遣を利用するのが効率的と言えます。
企業が人材派遣を利用するデメリット
1.イレギュラーな業務はお願いできない
派遣会社と受け入れ企業は、最初に業務内容や就業時間について契約をしっかりと結びます。契約を越えるような業務については、受け入れ企業から派遣社員へ直接依頼することはできません。そのため、受け入れ側の企業は、最初にきちんと業務を設計した上で依頼する必要があります。
2.コア業務をお願いするとリスクが高い
有期雇用の場合はいつまで契約を更新できるかわからないので、能力が高い人材であってもコア業務を任せすぎると、業務になれてきた頃に去ってしまうリスクがあります。事務作業やアシスタント業務のような決まった仕事を決まった時間内にやりきるのがよしとされるような業務に向いているでしょう。
3.派遣社員の選考はできない
派遣社員は、基本的に選考NGです。派遣先の企業は、条件を伝えて派遣会社から「この人で」と派遣されてきた人材を「ちょっと自社に合わないな」と思ったとしても受け入れなければいけません。派遣会社に依頼する際に自社のカルチャーや「こういう企業で業務経験のある人は合いそうだ」というような細かい希望、条件を伝えておいたほうがいいでしょう。
4.一定の教育コストがかかる
派遣社員は受け入れる企業側が求めるスキルについて、一定の基準を満たしている人材を求めることができます。そのため、即戦力になるとはいっても、自社のルールや仕事のやり方を教える必要があるため一定の教育コストはかかります。また、直接雇用の社員と比べてどうしても帰属意識が低くなることが多いので、モチベーションを管理しないとパフォーマンスがあがらないこともあるでしょう。「一緒に目標を達成しよう」という一体感は生まれにくいかもしれませんが、自社の従業員と同様にリスペクトを持ってマネジメントする姿勢が大切です。
業務によって派遣会社を使い分けるなど効率よく利用を
人材派遣は一時的な仕事に向いています。派遣会社によって、営業や事務に強い、エンジニアに特化しているなど個性も違うので、使い分けるのも有効です。うまくマネジメントすれば期待以上の成果をあげてくれることもあるので、業務によって効率よく人材派遣を利用しましょう。
<取材先>
core words株式会社 佐藤タカトシさん
TEXT:小林麻美
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト