現代の中間管理職に求められる役割と能力

目頭をおさえる男性のイメージ


中間管理職は上司と部下の板挟みになり、対応に苦労することが少なくありません。今の時代、中間管理職に求められる役割や能力とは何なのでしょうか。また、中間管理職のストレスケアのポイントなどについて、株式会社人材ルネッサンス代表取締役の吉原俊一さんに伺いました。

 
 

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中間管理職とは


「中間管理職」とは、一般的に課長クラスの従業員を指します。中間という名称の通り、下には係長クラス以下の部下が、上に部長クラス以上の上司がおり、成果を求められると同時に、その実現のためのマネジメント能力が求められる立場です。
 
つまり、中間管理職はベテランのプレイヤーであり、かつチームとしての成果を促すマネジャーでもあります。

 
 

中間管理職の役割


中間管理職が担うべき仕事には、さまざまなものがあります。

 
 

◆中間管理職が担う主な仕事

 

  • トップ方針・上司方針を実践する
  • 設定された目標に従い実行計画を立て、その目標の完全達成をはかる
  • 戦略的な意思決定に参画する
  • 問題を探求し、創造し、その解決をはかる
  • よいコミュニケーションを作る
  • 協力的な職場を形成し、機能させる
  • 部下全員のやる気を高め、育成する


これらの仕事内容を見てもわかるように、中間管理職の役割には「マネジャーの仕事」と「プレイヤーの仕事」の両方が含まれます。さらに、「仕事」と「人間」の2つの側面から、以下の4つの役割に分けて捉えることができます。

 
「仕事の側面」には、「仕事の維持管理」と「仕事の改善改革」がある。「人間の側面」には、「信頼関係の醸成」と「部下・後輩の指導育成」がある。

 
 

中間管理職に求められる能力


中間管理職に求められる能力は次の3つです。これらの能力をバランスよく持つことが大切です。

 
 

◆中間管理職に必要な3つの能力

 

  1. 業務遂行能力(テクニカル・スキル)……自分の仕事に必要な専門的な知識・スキル
  2. 対人関係能力(ヒューマン・スキル)……信頼関係を築く技能・スキル
  3. 総合判断能力(コンセプチュアル・スキル)……複雑な問題を合理的に整理・判断できる技能・知識・スキル。問題解決能力と言い換えることもできる


これらの能力は、実践の中でこそ培うことができます。研修を受けることですぐに磨きがかかるものではありません。コツコツと地道に積み上げていく必要があるでしょう。

 
 

中間管理職がストレスフルになりやすい理由


中間管理職は上司と部下の板挟みになるため、ストレスを抱えやすい立場といえます。成果を出すために上下左右への働きかけや配慮が求められると同時に、自らの知識と技能を磨くことも求められます。
 
このように行うべきことが多いだけでなく、そもそもどう働きかければいいのか、どう部下を育成したらいいのかわからないという状況に遭遇することも多々あります。相談する支援者もおらず孤立してしまう環境に陥りやすく、より大きなストレスにつながることも考えられます。

 
 

中間管理職のストレスケアの方法


中間管理職のストレスを軽減するために企業のできる方策として、以下が考えられます。

 
 

◆ストレスケアの方法


1.トップが中間管理職の育成に関心を持つ
経営者など、決定権を持つ人物が中間管理職の育成に関心を持ち、管理職研修などに出席して交流をはかりましょう。大変さに理解を示すことで、中間管理職のストレスケアにつながります。
 
2.人を育てる経営のしくみを作る
「方針目標の展開のしくみ」や「人を育てる人事評価制度のしくみ」、「人を育てる計画的なジョブローテーションのしくみ」などを作ることで、中間管理職は部下を管理しやすくなりストレス軽減につながると考えられます。
 
3.定期的にメンタルヘルス研修を実施する
ストレスを抱えやすい中間管理職はもちろん、全従業員に対して定期的にメンタルヘルス(心の健康管理)に関する研修を実施することをおすすめします。研修では、セルフケアとして早い段階でストレスに気づくための方法や、自分なりにいくつかのストレス対処法を持つこと、周囲に支援的な人間関係を築く方法なども解説しましょう。

 
 

中間管理職が成長するために大切な「基軸作り」


中間管理職が役割をまっとうし、自らの成長を促すためには、次の5つを意識するといいでしょう。
 
1.「基軸作り」をする
現代の中間管理職には特に重要なことといえます。中間管理職は常に当事者意識を持ち、自分なりの「基軸」をしっかりと持つ必要があります。変化に翻弄されていては、管理職は務まらないからです。そして基軸作りには「自分らしい生き方・働き方を考える」ことも欠かせません。
 
2.社内外の人的なネットワークを増やし大切にする
中間管理職には、成果を出すために上下左右への働きかけや配慮が求められます。それをスムーズに実現するためには人脈も欠かせません。一人で問題を抱え込み、結果ストレスを増大させないためにも重要な要素です。
 
3.目先の仕事ばかりにとらわれない
先々のことに思考を巡らす際には、次の原則・法則を念頭に置くことが役立ちます。

  • 思考の3原則:安岡正篤氏が説いた物事を考える際の3原則(長期的に考える・全体的に考える・根本的に考える)
  • グレシャムの法則:金本位制の経済学の法則の一つで、悪貨は良貨を駆逐すること。転じて、日常業務に追われていると戦略的に考える姿勢が失われ、戦略的発想を駆逐するとした意味にも使われる


4.「維持管理→改善管理→変革」へと軸足を移動する
企業は「環境適応業」であり、環境に適応できない企業は存続できません。それは管理職も同様。今の時代、経営者が管理職に求める一番大きな課題は「変革」といえます。ただし、現状の仕事レベルを維持することも、現状の仕事のレベルを改善して引き上げることも重要で大変なことです。一つずつクリアし、「変革」へとつなげていきましょう。
 
5.PDCAサイクルを徹底する
PDCAサイクルとは管理業務の効率化を図るための手法です。「計画を立てて(Plan)、それを実行し(Do)、できていることを確認したら(Check)、うまくいったことは標準化し、うまくいかなかったことをは改善する(Action)」、これを繰り返し行うことで、成果につながりやすくなります。
 
中間管理職に自分の役割と課題を明確にしてもらうためには、上記を含め仕事・マネジメントの基本を学び続ける姿勢が重要であることを説くことが必要といえます。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年4月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社人材ルネッサンス 代表取締役 吉原俊一さん
早稲田大学卒業後、トステム株式会社に入社。物流センター所長や本社企画部門での改善活動など、23年にわたりリーダーシップ・マネジメント経験を積む。「人を育てる仕事」に興味を持ち、人事会社である株式会社メック・ヒューマンリソースを経て、2013年に株式会社人材ルネッサンスを設立。人材育成の支援を行っている。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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