ソーシャルリクルーティングとは?
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを使った採用活動のことを指します。ビジネス特化型のSNS「LinkedIn」を使った採用が海外で行われ始めたのをきっかけに、日本でも2009年ごろからSNSを通じた採用手法が登場しています。「LinkedIn」の利用者が少ない日本では、「Facebook」「Twitter」「Instagram」「LINE」などが活用されており、IT企業をはじめ、大手メーカーやベンチャー企業が続々と取り入れています。
具体的には、企業アカウントを作り、採用にまつわる情報発信をしたり、仕事風景や社員の声の動画をアップしたり、自社の魅力を伝える手段として活用するケースが多いようです。また、SNSで交流することによって、本来であればある程度選考が進まないと見えてこない求職者の個性を早い段階から見極められる点も企業側にとっては有利です。双方のミスマッチが少なく、ソーシャルリクルーティングで入社した場合の離職率は全体的に下がる傾向にあります。
ソーシャルリクルーティングのメリット・デメリット
企業がソーシャルリクルーティングを行うメリットはいくつかありますが、まずは採用コストが少ない点が挙げられます。多くのSNSは無料で利用できるため、アカウントを作って運用する分には社内の運用コスト以外の費用はかかりません。
また、優秀な人材であれば直接コンタクトをとって採用につなげる、いわゆる“一本釣り”のようなこともできるため、採用にかける時間も少なくて済みます。
地方や海外在住者の求職者にとってもメリットは大きく、従来のように居住地にとらわれず就職活動ができるようになったという声も聞かれます。特に移動の制限があるコロナ禍の現代では、接触機会の少ないソーシャルリクルーティングは今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。
一方、しばしばニュースにもなるように、SNSを使うことで炎上するリスクは避けられません。SNSの気軽さから軽率な発言をしてしまうと求職者の熱意を下げてしまうばかりか、企業のイメージダウンにもつながります。
一般の人が企業アカウントに求めるのは、「公平性」「誠実さ」「信頼性」です。常に厳しい目線にさらされていることを自覚し、発言や表現には十分配慮しましょう。
ソーシャルリクルーティングはどんな企業に有効?
ソーシャルリクルーティングは、今ひとつ知名度がない企業やこれから認知度を上げたいと考えている企業にとって、とても有効です。
主に学生の求職者は、仕事内容よりも知名度で企業を選ぶケースも少なくありません。“知っている”ことが志望の動機になるのです。ただし、業務内容に興味がある会社に応募したいと思う学生もいます。
ソーシャルリクルーティングを活用すれば、求職者に自社の名前を知ってもらう機会となります。これまで出会いのなかった、潜在的な求職者にも広くアピールできるのです。実際に、ソーシャルリクルーティング経由で知った企業に心が動いて就職を決めたという学生も見られます。
まずは自社を認識してもらうという選考の一番手前の段階で、企業と求職者との出会いの場になることがソーシャルリクルーティングの強みでもあります。採用市場で埋もれがちな企業や応募者とのミスマッチに悩む企業こそ、積極的な活用をおすすめします。
<取材先>
ITジャーナリスト 高橋 暁子さん
東京学芸大学卒業後、東京都で小学校教諭、Webの編集者などを経て独立。SNS利用、情報リテラシー教育が専門で、スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『できるゼロからはじめるLINE超入門 iPhone&Android対応』(インプレス)など。令和3年度教育出版中学国語の教科書にコラム掲載予定。
TEXT:渡部あきこ
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト