プロジェクト終了後に無期転換申込みがあった場合はどうする?

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「有期労働契約」が同一の会社で通算5年を超える場合、労働者が申し込めば期間の定めのない労働契約である「無期労働契約」に転換できるルールがあります。もし労働者本人が関わっていたプロジェクトの終了後に申し込みがあった場合、企業はそれを断ることはできるのでしょうか? ベーカー&マッケンジー法律事務所の雇用・労働分野を専門とする弁護士、村主知久さんと桐山大地さんに伺いました。

 
 

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無期転換ルールについて


雇用期間が決まっている契約社員やパート、アルバイトなどの有期雇用契約の従業員でも、通算5年を超えて同じ会社で勤務すれば有期契約社員から無期契約社員に転換できる「無期転換ルール」があります。

 
 

無期転換ルールの法的留意点

 
 

◆プロジェクト終了後に無期転換申込みがあった場合


たとえば、5年以下で終了する予定だったプロジェクトのために有期雇用契約を結び、何らかの理由でプロジェクト終了までに5年を超えてしまったとします。この場合、同一の会社で通算雇用期間が5年を超えたため、有期雇用契約者は無期転換申込み権を行使でき、会社は無期転換の申し込みを受け入れる必要があります。無期転換ルールは客観的に「5年」という通算年数が判断基準になるので、業務の内容は関係ありません。
 
プロジェクトごとに有期雇用契約を結びたい場合は、そのプロジェクトが5年を超えないと保証する場合に限り、採用の段階で契約年数を5年以下と提示して有期雇用契約を締結するのが手法の一つとして挙げられます。

 
 

◆契約終了直前に雇い止めをしてもよいのか


労働契約法は第19条において、一定の状況下においては「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇い止めを認めないとして「雇止め(やといどめ)の法理」を定めています。この法理に基づき、これまで反復して有期雇用契約を更新するなどして無期雇用契約と何ら変わらないような状況だった場合や、有期雇用社員が次回の更新を期待してもやむを得ない状況だった場合などは、雇い止めが不当であると判断されることがあります。

 
 

◆契約終了直前に次回の更新年数や更新回数の上限を設けることは問題ないのか


契約期間満了前に企業が更新年限や更新回数の上限などを設け、合意のもと更新を行ったとしても、従業員本人が「合意しないと今回で雇用が終わってしまう」という心理から受け入れざるを得ないケースもあります。この場合は、本人の真意に反する合意であるとして、更新を制限する合意の効力が争われる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

 
 

有期労働契約者が無期転換にならなかったことに納得がいかなかった場合はどうなるのか


先述したように、有期雇用労働者が無期転換申し込み権を得るための条件は通算雇用期間が5年を超えることです。そのため、無期転換申し込み権が発生するか否かの判断は難しくありません。
 
問題となりやすいのは、通算雇用期間が5年を経過する前に急に雇い止めとなったケースです。従業員が不当な雇い止めだとして拒否した場合は、雇い止めの不当性を争うための法的な手続である地位確認請求や、損害賠償請求の対象になる可能性もあります。
 
トラブルを避けるためには、有期雇用契約や無期転換ルールについて理解を深め、会社側が労働者にきちんと説明し、互いに理解を得た上で契約を締結するようにしましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年6月時点のものです。
 
<取材先>
ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士 パートナー 村主知久さん
コーポレート/M&Aグループに所属。18年間の実務経験を有し、国内外の依頼者の労働問題全般(労働条件整備、人員削減、労働紛争処理等)の対応に加え、多数のM&A案件(クロスボーダーを含む)を主として労働法の観点から関与。また、その他企業内不正調査、訴訟紛争に加え、労務以外の一般企業法務等にも携わる。
 
ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士 シニア・アソシエイト 桐山大地さん
コーポレート/M&Aグループ及び労働グループに所属。国内外の人事労務案件に精通し、主に多国籍企業の日本での事業運営及び日本企業の海外での事業運営に関する人事労務上の問題について、幅広く戦略的なリーガルアドバイスを提供。近時はプラットフォームビジネスに代表される新しい働き方に伴う問題にも積極的に携わる。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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