採用面接でストレス耐性を見極める際のポイントと注意点

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社員がメンタルヘルスの不調により休職・離職に陥らないようにするため、採用の段階で候補者のストレス耐性を確認するには、どうしたらいいのでしょうか。面接でのストレス耐性チェック時に押さえておきたいポイントと注意点について、株式会社人材研究所の曽和利光さんに伺いました。

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採用市場で「ストレス耐性」がよく謳われる理由

「ストレス耐性」という言葉が見聞きされるようになったのは、この20〜30年のことです。この言葉が採用界隈で使われるようになった背景には、メンタルヘルスの不調による従業員の休職、離職の増加があり、これにより企業側がデメリットを被るようになったという事実が挙げられます。つまり採用市場における「ストレス耐性に強い人」とは、休職、離職を起こさない人=「企業にとってメリットのある人材」を表した言葉だと言えるでしょう。
 
候補者のストレス耐性は必ずしも簡単に判断できる事項ではないと私は考えます。ストレス耐性テストといったものは、あくまで休職、離職を防ぎたいという企業側の一方的なニーズに即して行われるチェックに過ぎません。人間の性格といったものを多角的に捉えれば、「ストレス耐性のまったくない人」などは存在せず、あくまで「企業側にとって」という枕詞がつくことを忘れないようにしましょう。

ストレス耐性にも様々な種類がある

ストレス耐性というものは必ずしも一括りにできるものではなく、以下のように細分化される多義的な言葉だと考えられます。
 

  • 鈍感力:ストレス自体を感じにくい
  • 他責思考:すべての原因を自分に抱え込むことがないために、自責思考の人よりもストレスを感じにくい
  • 曖昧力:はっきりしていないこと、先が見えないことが気にならないために、ストレスを感じにくい
  • 意味付け力:ルーティンワークのような仕事であってもやる意味を見出せるため、ストレスを感じにくい
  • 楽観性:何事も前向きに捉えられるため、ストレスを溜め込みづらい
  • 切り替え力:オンオフの切り替えが上手いため、ストレスを溜め込みづらい

忘れてはいけないのは、仕事の特性により、強みとなるストレス耐性の種類は異なるということです。例えば、気配りや敏感力が求められる仕事において、鈍感力のある人はメンタルヘルスに不調こそきたさないかもしれませんが、適性がある人材だとは言えないのです。

面接でストレス耐性を見極めるためのポイント

上記の傾向を踏まえ、面接で候補者を見極める前には、自社・あるいは募集職種で求められるストレス耐性がどのようなものなのかを明確にし、定義づけておくことが大切です。
 
その上で、面接では候補者が「どのような環境下で」「具体的に何を感じたか・行ったのか」を具体的に掘り下げるよう意識しましょう。例えば「“厳しい”上司がいて大変な思いをしましたが、それを乗り越えてきました」と候補者が答えたとします。この際、面接官はつい自身の想像の範囲内の「厳しい上司」をイメージしがちですが、厳しさにも様々なパターンがあります。
 
物事に非常に細かいタイプなのか、口調が強いタイプなのか。それとも、いい上司ではあるものの、高すぎる期待を寄せるタイプで、そのプレッシャーに打ち勝ってきたことを「乗り越えた」と候補者が捉えているのか。ストレスとは「環境に対する反応」ですから、こうした具体的なシーンまで詳細に聞くことで、候補者が発揮したストレス耐性の種類を理解することができるでしょう。

ストレス耐性チェックにおいて気をつけるべきポイント

一点留意したいのは、いくら自社の理想とする「ストレス耐性が高い人」であっても、同じようなタイプの候補者ばかりを採用するのは必ずしも良いことではない、ということです。同質化が進んだ組織は、ある環境下では強さを発揮しますが、環境に変化が起こると途端に崩壊するおそれがあります。一定の割合で、「ストレス耐性が高くはない」と判断された層も採用しておくことで、組織が変化に対応する能力を持ち続けられるのです。
 
また、そもそも全方向に対してストレス耐性が高い人材は、ニーズが高く希少な存在です。労働人口が減少する昨今、「ストレス耐性が高い人しか活躍できないはずである」と決め込んでしまうと、採用が進まなくなるおそれがあります。
 
今後、目指すべきはストレス耐性が高い人を揃えることではなく、むしろ多少のストレスがあっても働き続けられる仕事環境の整備やアサーション(自分の意見を適切に伝えるための)トレーニングといった工夫を会社側が行うことだといえるでしょう。
 
面接時にストレス耐性チェックをすることばかりに力を注ぐのではなく、ストレス耐性の低い人が活躍できる環境を作ることこそが、これからの企業に求められるものではないでしょうか。

 

<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:卯岡若菜
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト

 
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