令和4年(2022年)4月から雇用保険料率が引き上げ
雇用保険とは、失業した人や教育訓練を受ける人などに対して、失業等給付を支給するための保険制度です。また、失業の予防、雇用状態の是正や雇用機会の増大、労働者の能力の開発や向上、労働者の福祉の増進などをはかるための「雇用保険二事業」も行っています。
雇用保険料は、事業主(企業)と労働者(社員)がそれぞれ負担しています。負担する保険料を算出するために用いる割合が保険料率です。賃金にこの保険料率を掛けることで、保険料が決まります。
令和4年度(2022年度)には、雇用保険料率が段階的に引き上げられることが決定しました。すでに令和4年4月1日から、第一段階の引き上げがスタートしています。
雇用保険料率、引き上げの背景・理由
そもそも雇用保険の保険料は、失業者へ給付する手当などに充てられるため、失業者が増えれば保険料率は上がり、失業者が減れば保険料率が下がるという仕組みになっています。そのため、これまでも保険料率は上下に変動してきましたが、ここ数年は低い水準が続いていました。
今回の引き上げの背景には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、一時的に失業率が上がったということもありますが、一番の理由は「雇用調整助成金」の支払い増加により雇用保険財政がひっ迫していることです。
雇用調整助成金は、コロナ禍前からありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、令和4年6月30日までの特例措置として、企業にとって申請しやすい仕組みになっていて増額もされています。コロナ禍で事業活動の縮小を余儀なくされた多くの企業が利用したため、それまで貯まっていた雇用保険積立金が激減しているというのが今の状況です。
雇用保険料率、引き上げ時期と保険料率
労働者(社員)が負担する保険料は、失業した人や育児休業中の人に給付するために使われる、失業等給付・ 育児休業給付の保険料のみです。基本的には、事業主(会社)と折半して支払われます。
一方、事業主は、失業等給付・ 育児休業給付の保険料に加え、雇用保険二事業の保険料も負担しています。令和4年4月1日に引き上げになるのは、この事業主の負担する「雇用保険二事業」の保険料率のみです。以下の表の赤字部分が変更になります。
令和4年4月1日から9月30日までの保険料率
<赤字が変更部分:令和3年度→令和4年4月1日から>
出典:厚生労働省「令和4年度雇用保険料率のご案内」をもとに編集部が作成
さらに、令和4年10月1日から、労働者負担分、事業主負担分ともに保険料率が引き上げられます。失業等給付・育児休業給付の保険料が引き上げになり、労働者、事業主ともに負担増になります。
令和4年10月1日から令和5年3月31日までの保険料率
<赤字が変更部分:令和4年9月30日まで→令和4年10月1日から>
出典:厚生労働省「令和4年度雇用保険料率のご案内」をもとに編集部が作成
この2段階の引き上げで、一般の事業の場合、労働者の保険料率は0.3%から0.5%に、事業主の保険料率は0.6%から0.85%に、トータルでは0.9%から1.35%まで引き上げられます。
雇用保険料率の変更で、事業主(企業)側が気をつけるべきこと
今回の雇用保険料率の引き上げは、令和4年4月から、さらに令和4年10月からの2段階で引き上げになる点に特に注意しておくとよいでしょう。
◆労働者の負担分について
従業員の給与計算をする際に、間違えずに雇用保険料を計算するように気をつけておきたいところです。また、雇用保険料が変更になるタイミングで、従業員にも給与明細などを通して、変更になっている旨を伝えておくと安心です。
◆事業主の負担分について
事業主として負担する保険料については、毎年6〜7月に行う労働保険料の申告・納付の際に計算する概算保険料についても、2段階で引き上げになる保険料率を反映する必要が出てきます。
数年ぶりの、雇用保険料率変更です。正しく対応できるよう、厚生労働省などから届く情報も参考にしながら進めていきましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年4月時点のものです。
<取材先>
うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也さん
TEXT:武田明子
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト




